後悔
違いますか?と聞かれると、俺はとうとう立てなくなり、両手で一本の鉄格子を掴んで、両足を床に折った、祈っているようにもみえるかもしれない
「ああそうです、許してください」
俺は張り詰めた糸が千切れたように、全てを吐き出そうとした
原田は冷静に続ける、軽蔑しているような目線が体に突き刺さった
「あなたは大森に殴らせ、手錠を付けさせた、もちろんあらかじめ手錠の鍵は貰っておいてね
今思い返せば、あの時抵抗して大森が鍵を確認したのも、君島さんは鍵を持っていないと思わせるためだったのかな?」
大森は鉄格子を蹴飛ばした
「俺は、大森の部下がやっていた薬物販売を警察に通報したんです、そしたら報復されそうになった、そこで思いついたんです、これをアリバイトリックに使おうと
大森を丸め込んだら自分も助かるし、アリバイを確保できるから一石二鳥だと思って、三百万ほど渡しました」
そこで、大森が焦ったように口を挟んだ
「違う!俺は協力なんてしてない、全部こいつが一人でしたことだ」
「違う、あなたも協力した、だって通帳に大金が振り込まれたじゃないの」
「勝手に見たな!」
「あなただって勝手に私の部屋を物色するでしょ」
喧嘩を始めそうなところを、茜の母がなだめた
大森はきまりの悪そうな顔で
「─そうだよ、君島に買収された、だが手錠の鍵を渡して、連行して半殺しにした後に隙を見て逃した、ただ、それだけだ、俺まで巻き込むことないだろ」
「黙れ、お前は殺人計画に加担したんだ」
大森は項垂れながら
「どうしてわかった、完璧だったはずだろう」
原田は俺を軽蔑したような目で見ながら
「私がハサミで手錠を切ろうとした時、君島さんは痛いと言って、左手で手を払うそぶりを見せましたよね」
未だにさん付けをしているのは、敬称ではなく、距離を感じさせるためにそうしているのだと遅れて気づいた
「でも、これはおかしい、君島さんは左手に手錠を付けられたのに、どうして左手で手を払えるの?そう、あの時は右手に手錠が付いていたんだ」
原田は続ける、怒っているようにも見えた
「だったら、右手に手錠が付いていた理由は何?考えたらすぐに分かった─全てに」
「畜生!」
大森は怒鳴る、そして俺を睨んで
「お前ヘマしやがったな」
俺は茜を殺した後、大森を警察に通報した、囮にするためだった
大森は俺を殺したいほど恨んでいるはずだ、だから『裏切り者』と何度か俺に言ったのだ
母は涙目になっていた、そして口を開く
「どうして茜を殺したの?」
一番知りたかった事なんだろう
娘の命を奪うにいたる理由、もちろん、どんな大層な理由を並べられても、納得などできないはずだが
俺はその疑問に陳腐な回答しかできない
「お金です、茜を殺したら一千万円ほどお金を渡すと手紙が届いてきたんです」
茜の母は呆けたような表情をした
そして隠し持っていたシャベルを俺の前に見せる
俺はなぜだか目の前のシャベルよりも『茜を殺した者はすぐに贖罪しろ』の文字を見ていた
贖罪は殺される事なんだろうか?
ペットカメラは俺を見ていた
ああ、最初からこんな事しなければ良かったんだ、時間が巻き戻せるのなら、一千万円も誰かにくれてやってもいい
何か、命乞いの言葉を言おうと思ったが、それすら無駄だと思った
後悔だけが押し寄せてくる
許してください、と口からこぼれ落ちるが無駄な事だと分かっていた
そして檻のドアが開─
人生で初めて書きました
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