檻とアリバイ
ガシガシと硬いものを蹴る音で目を覚ました気分は最悪だった
俺は硬い床の痛さを、身をもって思い知る
少し遅れてここが家ではない事に気づく
ここはどこだ?
不思議に思い、見知らぬ光景に困惑しながら、辺りを見渡す
廃墟のような打ちっぱなしのコンクリートのような内装、ただ一つ違和感があるとしたら─いや、違和感どころではない、異常さを際立たせているのは、部屋を横断する鉄格子だった
手前の鉄格子の奥には、出口だろうかドアがあった、しかし俺の方には何も無い
そして『茜を殺した者はすぐに贖罪しろ』との文字が壁に描かれていた
鉄格子にはドアが取り付けられていたが、分厚い南京錠がそれを閉ざしていた
どうやら俺は檻の中に閉じ込められているようだ
そして男がいた、パイプ椅子に座り、俺の鉄格子を蹴飛ばしていた
「やっと起きたか」
この男の事を知っている、大森だった
「おい、ここはどこだ?」
「黙れ」
怒気のこもった声だった、鉄格子越しにでも圧迫感が伝わる
足を組んで座り、両手を前で組んでいた
「なあ俺、茜のお母さんと話をしてたんだ」
大森は押し殺すような声でそう言う
「どうだった」
「お前の事を殺したいってよ」
俺は鉄格子越しに大森に近づく、大森の荒い鼻息が顔にかかった
「その気持ちは俺も同じだ、殺してやるからな」
大森はそう言うと、ゆっくりと椅子に体を預けた、そして監視するように俺を睨みつけていた
何も聞き出せそうにない
おそらく大森は俺を殺したいのだろう、その筋肉質な両手で俺の首を絞めて殺しても、足りないくらい恨んでいるだろう
しかし彼は手を出さない、やろうと思えばやれるだろうに
一旦大森は無視しよう、何も聞き出せそうにない
自らが閉じ込められている檻を見渡した、パイプ椅子にお気持ち程度の布団、あとは何もない、コンクリートが無機質に敷かれているだけだ
鉄格子の奥の方を見る、ドアがあった、しかし檻に阻まれてそこにはいけない
『茜を殺した者はすぐに贖罪しろ』の文字
当然その事に心当たりはあった
よく見ると部屋の隅にペットカメラのようなものがある、どうやら監視されているようだ、茜のお母さんが見ているのか?
とにかく、昨日の事を思い出そう
俺は記憶の糸を手繰り寄せる
昨日、確かタバコを吸って、そしたら─
思い出せない
後頭部が少し痛んで、触る、たんこぶができていた
殴られたのだろう、そしてここに運ばれた
茜の復讐するために
─だとしたらおかしい
誰も俺が犯人だと思うはずがない、アリバイがあるのだから




