プロローグ
作者は悪役令嬢モノに登場する悪役令嬢は美少女であることでストーリがいい事になりやすいことを感じ。作者が考えたモブ顔悪役令嬢になったらどうなるのか気になり描いてみることにしました。高評価、ブックマークと感想を待ちして待ちしております。
この物語は破滅フラグを回避すべく奮闘していく物語です
目の前に金髪碧眼のモブ顔がいる。彼女に手を伸ばしてみると彼女も手を伸ばしてきた。けれど、指と指が触れ合う寸前、見えない壁に阻まれた
「……はぁ。」
伸ばした手を見つめる。すると、彼女も自分の手を見つめた。
荒ぶる鶏のポーズをとる。。彼女も荒ぶった。
魔法少女の変身ポーズを決めてみる。彼女も変身した。指の動きまで完璧だ。
「……私なんだよなぁぁぁぁ」
私の頭を抱えると、彼女も頭を抱え出した。当たり前だ。だって、その少女は鏡に映る私自身なのだから。私は転生したらしい。通り魔に刺されて死んだ私は金髪縦ロールのモブ顔の少女に転生してしまった。彼女の名前はアレクシア・フォン・ルクセンブルク。ルクセンブルク公爵家の長女。それが今の私だ。
コンコンと扉の音が鳴る。
「どうぞー」
声を掛けると扉が開いた。入って来たのは惚れ惚れするような筋肉に身を包むメイドさん。
「お嬢様、おはようございます。」
相変わらず、凄い筋肉だ。
彼女の名前はマリー・フォン・ユンゲンス。武闘派で知られるユルゲンス伯爵家の御令嬢であり、私の使用人。
最初はビックリしたものだ。腕周りが昔の私の胴回りよりも太い。身長は二メートルを超えている。そして、彼女はあらゆる武器を自在に操る天才だ。彼女のお陰でアレクシアに憑依してこの方危険な目にあった事が一度もない。
「お嬢様、クルト王子がお見えです。」
「クルト王子が?」
「……えぇ……お嬢様にお話がしたいと申しております。」
「……えぇ……いつものね……すぐにクルト王子を此処に案内しなさい。」
「……畏まりました。」
圧倒的な戦闘力と裏腹にマリーは大人しい子だ。鍛錬は毎日欠かさないし、レンガを握り潰せるけど、お花や本が好きなインドア派でもある。そしてこれが凄く重要な点だけど、彼女はすごく優しい子だ。背中に鬼神が宿っていても、肩ににちっちゃい重機を乗せていても、腹筋六LDKでも彼女は女の子だ。
「……乙女ゲームの世界に転生して十年かぁ……いつ見てもモブ顔ね……悪役令嬢てそれなりにいい容姿よね……私の場合何故か前世から引き継がれたモブ顔だったのだけど……この顔で公爵令嬢とかあんまりよね……どうせならゲーム通り美人の方が良かった……」
アレクシアに転生する前、私には一人の幼馴染がいた。幼馴染の名前は加藤 麻衣。好奇心旺盛な美少女。麻衣は乙女ゲームが大好きで、私の勉強時間をいつも明後日の方向に投げ飛ばす。
この乙女ゲームが面白い! こっちの乙女ゲームが凄い!いつもハイテンションな麻衣のノリに流され私はいつも付き合ってしまう。
それでも中間くらいの成績をキープした努力を誉めてもらいたい。
まあ、それはそれとして、麻衣が持ってくる乙女ゲームのジャンルはいつもバラバラだ。とにかくいろんな乙女ゲームをプレイして、面白かったものを薦めてくる。そんな麻衣が持って来た乙女ゲーム、それが『桜舞う乙女の恋!』……通称『オトコイ』だ。王道的な乙女ゲームでストーリーの賛否両論が激しいにも関わらず攻略対象全員が人気声優でめちゃくちゃ萌えるって大絶賛されてるて麻衣が言っていたっけ。
そして悪役令嬢要素はルイーゼのシナリオ。ルイーゼは男爵家の庶子で母の死と共に男爵家に引き止められ一五歳で王都の学園に入学する。そこに登場する悪役令嬢だ。その名はアレクシア・フォン・ルクセンブルク。つまり、私だ。
要するに私は乙女ゲームの世界に転生してしまったわけだ。
コンコンと扉の音が鳴る。
「どうぞー」
「……失礼します。」
マリーが私の部屋を開け見知った声が私の部屋にこだまする。
「いつ見てもつまらん顔だなアレクシア!」
「……ハァ……王子はとてもお美しいお顔で大陸中、全ての女性の心臓を射抜いて……羨ましい限りですわ。」
「そうだろう?……しかしアレクシアは射抜かれていないようだな。」
「「わたくしはモブですから弁えております。……クルト王子……大丈夫です……一年後に貴方は可憐で可愛いヒロインと出会い恋し……そのヒロインと貴方は結ばれるのです……私のことは『国外追放』でも『処刑エンド』でも『修道院送り』でも好きになさってくださいまし。」
「アレクシアの予言は何なのだ!?……アレクシア……お前……俺のことが嫌いだから婚約破棄させようとそんな戯言を言っているな?」
「……いえ……親友と散々やり込んだので『オトコイ』……これは運命です。」
「何わけのわからない単語ばかり言いおって!……俺にわかるように説明しろ!」
「……クルト王子には関係のないことです。……今の発言は聞かなかった事にしてください。」
「……気になるではないか!……うぐっ……まぁいい……いいか!アレクシア!王家との婚約を簡単に破棄出来ると思うなよ!?……俺から逃げようとしても無駄だからな!……お前のような公爵令嬢の嫁の貰い手は俺くらいしかいないだろうからな……フハハハハッ!」
(一年後はその考えも変わっていますのに……わたくしは悪役令嬢ですのよ。)
「……クルト王子……ついでに言うとわたくしの推しは貴方ではないのです。」
「……推し!?……アレクシアは何を言っているのだ?」
「わたくし、推し以外の攻略対象は割とどうでもいい派なの……ごめんなさいねクルト王子。」
「推しとは何なのだ?シルビオ!?」
「……よくわかりませんが殿下には興味がない、もしくは殿下以外に好きな殿方がいると考えられます。」
「この俺に興味がないだと……アレクシア!誰なんだ俺以外に好意を寄せているのは!」
「……えっと……非常に言いにくいのですけど……シルビオ様が大好きですわ……あぁ言ってしまいましたわ!恥ずかしいですわ!」
「おいアレクシア……何故シルビオの顔を見ながら赤面している!」
「……えっと……アレクシア嬢の好意は嬉しいのですが……アレクシア嬢には殿下が居るではありませんか……それに嫉妬した殿下に私の首が刎ねられてしまいます。」
「大丈夫ですわ……処刑エンドに鳴ったらわたくしも死にますもの!今のうちに推しの声を聴くのは当然の行為でしてよ!」
私推しはシルビオ・フォン・ヴェルマン様だ。シルビオはクルトフォン・アルトマイアーの側近騎士で攻略が難しいキャラである。シルビオの好感度が上がる選択肢は毎回難しく違う選択肢を選んでしまうと攻略できない仕様で私は何回も周回した記憶がある。一応はシルビオ以外の攻略対象を攻略したがやはり推しのシルビオルートが一番好きなルートだった。
「相変わらずアレクシア嬢は楽しい空想でいっぱいですね。」
「きゃぁぁ!……シルビオ様が微笑まれた!スクショしたい!待ち受けにしたい!そして愛でたい!」
「……スクショ?……マチウケ?……田舎の成り上がりクソたらし騎士が!……ゴホン……シルビオ……俺の未来の妃に馴れ馴れしくするな、」
「……申し訳ございません。……アレクシア嬢の話ですと殿下には可憐で可愛いヒロインがいらっしゃるとか?……実に興味深いですね。」
「ヒロインとか謎の単語をお前まで使うんじゃない!」
「……ふふっ。」
「アレクシア何がおかしい!」
「クルト王子のツッコミが面白くて……ふふっ。」
(笑っているアレクシアが可愛すぎるだろ!!……あぁ……この笑顔守りたい!)
「……もうこんな時間ですか……殿下そろそろ王宮へ戻りませんと……。」
「そうだな。……アレクシアまた会いに来る……次は余裕を持ってアレクシアに会いに来るからな!」
「……えぇ……クルト王子、シルビオ様、気をつけてお帰りになって下さいね。」
「……あぁ……行くぞシルビオ。」
「はい。」
私はクルト王子、シルビオ様をエントランスまで見送るのだった。
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