表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/34

俺様キャラはタイプじゃないけど……




『全て、上手くいったんですね。よかったです』

「まあ、おかげさまで」



 相葉との一件はどうにかなったと、私は事後報告であったが橘さんに連絡を入れた。電話越しに聞える声はいつも通りで、でも、「当たり前ですよね」とこうなることを予見していたかのような口ぶりだった。彼にはいったい何処まで見えていたのだろうかと。

 それから、少しの間、新作の話をして、またお話できる日を楽しみにしています、と彼は言って電話を切った。今日はあっさりしていて、それがまた怖かったのだが、彼も彼で他の担当のこともあるから忙しいのだと思う。合間合間に今回の件に関してやっていてくれたのだから、少し仕事が詰まっているのかと。まあ、それは私が心配することじゃなくて、橘さんの話だから彼は上手くやるのだと思うけど。

 このことに関しては、春音さんの方にも連絡を入れ、それなりに喜んでは貰えた。ただ「相葉春夏秋冬との関係がなくなっちゃうのは悲しいです」と、懲りていない言葉が返ってきたのは、まあ目を瞑ることにする。


 そして、聞いた話に寄れば、夏目の従兄弟というのは灯華くんの親友のことで、親友が悩んでいることにいち早く気づいて、その原因が兄弟にあるということを知っていたため、夏目に相談していたのだとか。あまり、人を頼らない、人間不信疑惑のある従兄弟だからと夏目は、自分を頼ってきたことに驚いていたそうだが、助言をし、今回の事件解決にも、それなりに協力してくれていたのだと。あと、本当に補足としてその夏目の従兄弟の好きな人が私の小説のファンらしい。乙女ゲームのシナリオの依頼もきているし、もしかしたら、遊んで貰えるかも、何て思いながら、何処で縁という物は繋がるか分からない物だと思った。



「冬華、デートするなら何処に行きたい」

「何よ、唐突に」



 ソファでスマホを構っていた夏目が渡しにそう問いかけた。突然のことで、「デート?」と頭の中で単語を並べつつ、夏目を見れば、彼は真剣な顔でスマホを見ていたのだ。



「いや、俺達はつくづくデート運がないみたいだからな。邪魔ばかりされて、デートをしっかり出来たことが無いと思ったんだ」

「まあ、そうね」



 思い返せば、しっかりデートをしたという気持ちにはならなかった。何かしら邪魔が入って、その旅嫌な思いをしてきた。その事を夏目はいっているのだろう。

 デート運なんて、新しい言葉を作って。言葉はあれだけど、真剣に考えてくれているようだった。そこが、夏目の良いところだ。



「ジュエリーランド、は?」

「遊園地が好きだなあ。冬華。あそこは、本物の宝石が買える唯一のテーマパークだからな。結婚指輪はそこで買おうか」

「……」

「いや、二人で決めよう。俺ばかりになってしまっては、いけないからな」



と、夏目は訂正する。


 嫌とはいっていないけれど、また自分の思いが先走っていることに気づいたのか、夏目はフッと微笑んだ後に訂正した。成長したなあと感じつつも、若干、俺様じゃなくなってきていることに寂しさを覚えた。



(俺様じゃない夏目って、夏目なのかしら)



 まあ、そんな風に酷いことを考えつつも私は、ソファに寝転ぶ夏目の方に歩いて、上から彼を覗き込んだ。



「何か、言いたいことでも?」

「ああ、そうだな。髪を切ったから、新鮮だと思って」

「今更」



 腰ぐらいまであった髪の毛をミディアムにしたので、私も違和感があるが、もう慣れた物だった。けれど、夏目は長かった頃の私を懐かしむように見る。

 髪の毛を切ったのは一種の決別みたいな物だった。

 イヴェールは髪が長かったし、前世を断ち切るという意味で、私は髪の毛を切ったのだけど。夏目が、長い私とイヴェールを重ねるのも嫌だったし。



「何?似合ってないとでも言いたいの?」

「いや?冬華はどんな髪型でも似合うなと思って。凄く綺麗だ」

「バカね」



 照れ隠しのつもりで、私はそう言って、彼の側から離れようとした。けれど、彼は腕をぐいっと引っ張って、私の唇に、自分の唇を押し当てる。少し、かさついていて、それでも熱くて、私は目を閉じる。



「いきなりは、やめて」

「して欲しそうな顔をしていたからな」

「それは、貴方の方でしょ」



 こんなやりとりももう慣れた。けど、いつも夏目にドキドキしている。

恋愛なんてくだらないと思っていたのに、俺様キャラなんてフィクションの世界だけにして欲しかったのに。今では、それが当たり前になっていて、受け入れていて。

私は夏目が大好きなのだと。



「デート、しても良いわよ」

「何だ、お前はツンデレなのか」

「……矢っ張り、やめた。貴方のそういう所は嫌い」



 待て。と、私がリビングをあとにしようとすれば、身体を起こして、私を引き止める夏目。焦ったその顔はそれはもう可愛かった。こんな男に可愛いとか思う私は、もうかなり毒されている。



「す、すまなかった。でも、そういう冬華が好きなんだ」

「ツンデレな私?」

「そ、そうだ……じゃなくて。俺の事からかってくるお前も、いいと思って」

「からかってくるのは、貴方の方でしょ」



 俺が? と言う風に見てきたので、本当に無自覚な俺様なのだと私はため息をつく。その溜息を聞いて、夏目はムッとしていた。本当にころころと表情が変わって面白い。



「まだ、将来とか、貴方が大学院を卒業するまで分からないけれど。新婚旅行は、海外に行ってみたいっていうのはあるわ」

「冬華……」

「結婚式も、貴方だけのお金じゃなくて、半分以上は出したいと思ってるし、結婚式はけちったりしない」

「当たり前だ。最高の物にしたい」

「それから……」



 願望を語り出したら止らなかった。こんなに欲深くなるとは思っていなかったから、自分でも驚いている。欲しいと言えば、何でもくれる男だけど、そこが良いわけじゃなくて、私の為に必死になる夏目が好きなのだ。勿論、未だに金銭感覚は会わないし、価値観だって違うけど。それは、人間誰しもがそうだと思うから。

 私は、小さく息を吸って、夏目にいった。顔が少し赤くなってるかも知れない。



「……夏目との、子供も、欲しい、って思ってる」



 そう、私がいった瞬間、夏目は私に抱き付いてきた。それはもう、もの凄いスピードで。

 そのまま押し倒されるんじゃないかという勢いだった為、少したじろいだが、私は、夏目の背中に腕を回した。



「ああ、俺も、冬華との子供が欲しい」

「そう……」

「大事にする」

「まず、私を大事にして」

「その上でだ」



と、夏目はいった。顔は見え無いけど、真剣なんだなって言うのは伝わったし、夏目も恥ずかしいとか思うんだと改めて思った。


 それから、ようやく落ち着いたのか、夏目は私と顔を合わせた。レッドベリルの瞳は、これでもかというくらい輝いている。本当に宝石みたいだ。柔らかい黄金の髪も、私だけを見ている瞳も。久遠夏目という人間を今私は独占している。そんな優越感に浸りながら、私は夏目に微笑んだ。



「愛してるわ。夏目」

「……ッ、俺も、愛している冬華」



 そう言って、私達は唇を重ねる。

 俺様キャラはタイプじゃないけど、それでも、私は夏目を心から愛してる。


 前世の私、見てる?

 私は今、とても幸せよ。


 私は、そう前世の私にマウントをとりながら、幸せに満ち足りた笑顔を夏目にむけた。





これにて、タイプじゃないシリーズ2は完結となります。


言い訳になりますがストック不足と、リアルで多忙により1年ほど更新が止っていました。待っていて下さった皆様、本当に申し訳ありません。

約1年ほど止っていましたが、こうして完結させることが出来て本当によかったです。いたらない点が多い作品でしたが、作者としては満足できる物でした。


基本的に、私の作品は単発(短編)で無い限り、同じ世界の物語です(※転生前が同じ世界『召喚聖女』が例)。

そういう所まで細かく見て貰えると、ここと、ここが繋がるんだ! など面白かったりもするので是非。


ここまでお付き合いいただき誠にありがとうございました。

冬華と夏目のその後を書いたssなども時間があれば書いていこうかなあと思います。

よければ、今後共々おつきあいいただけると嬉しいです。ブックマークと☆5評価、感想など貰えると嬉しいです。

他にも連載作品や、短編、完結作品があるので良ければそちらの方も読んで頂けると嬉しいです。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ