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Part8 リズさんの生活

Part8 「リズさんの生活」


侍従長のセルディックさんとの話し合いはやっと決着しそうだ。


「いや、姫様は今までご自身で着替えすらしたことないのです、それに護衛の者も含めまして50人程が最低限かと。」


「大名行列するつもりですか?王宮の常識を庶民に押し付けないでください。」


「姫様の御付の者は最低限とする事に依存はありませんが。」


「そうですね、2人程が限度でしょうね、それも生活に慣れるまでです。」


「とりあえずですな、身の回りのお世話から、護衛まで一手に引き受ける精鋭を4人ということでは?」


「4人ですよ、慣れるまでですよ!」


「そこはもう重々…」


「護衛の心配なんかするなよ爺さん、俺もシャルもついている。」


「はあ…」


☆☆☆☆☆☆


出発を明後日に控えた日、僕たちはある1室に集められた。


「フールファス殿ご紹介申し上げます、今後暫らく姫様の御付を務めるシスターズです。」

「シスターズこれへ!」


「「「「ハッ!」」」」


いつの間にか部屋に出現した、メイド服も凛々しい、女性4人組が片膝をついている。


「「「「お初に御目文字致します、勇者様、姫様、そしてその他の皆様シスターズがお仕え申し上げます。」」」」


「おい!その他扱いかよ。」


「まあ、まあ、シスターズの皆さんにはリズさん以外は皆その他っすよ。」


「ふむ、あまり過保護にならぬようのう。」


「宜しくお願いします、お名前を教えてください。」


「はっ、心得ました、一で御座います。」


「二で御座います。」


「三で御座います。」


「四で御座います。」


「それが名前なんですか?(*_*)」


「はっ、我ら陰に生き陰に滅ぶ定め、名などとうに捨てて御座います。」


「まあー、バシレウス家に古より仕え伝説とまで言われた、影の者なのですか?」


「「「「御意!」」」」

チャチャラ~


<BGMまでついているし…頭痛がしてきた(-.-)>


☆☆☆☆☆☆


出発当日、嫁入り道具は何とか馬車一台に減らすことに成功したが、交換条件になってしまった、滅茶苦茶豪勢な6頭立ての馬車に乗り込む。

王様とリズさんの別れの愁嘆場は1時間に及び、家臣一同もらい泣きの場面に突入した。


「そろそろ出発できぬかのう?」


「父親ってあーいうものっす。」


「えー、俺の親父は違うぜ。」


「まー、リリッカさんは特別っすよ。」


それやこれやで、漸くタカスカの町に着いた。


☆☆☆☆☆☆


僕達は取り敢えずギルドに顔を出した。


「久しぶりっすナナさん。」


「あら、貴方たち漸く帰って着たのね。」

「で、そちらがお姫様?」


「もう姫とは呼ばないで下さいませ、わたくしも今日からは一介の冒険者ですわ。」


「んー、そんなドレスを着てそう言われてもねえ、まあ良いわ貴方たちのパーティーに登録しておくわね。」


「まあ、わたくし冒険者として認められましたわ。」


「「「「御祝着に存じ上げます!」」」」


「それでね貴方たちの借家だけど、引っ越しておいたからね。」


「引越しって何処へ?」


「何も聞いていないの?」


「はい?」


「姫様の新居だって、豪邸が建っているわよ。」

「それと、貴方達用の馬と馬車がバートさんの所へ届いているから確認しておいてね。」


「してやられたのう、亭主殿、あの御老、セルディックはやりてぢゃのうwwww。」


「とりあえず、行ってみて、まず一休みしましょう。」


「行きますよ、リズさん。」


シスターズが降らす紙ふぶきの中感動したままのリズさんは我に返った。


☆☆☆☆☆☆


「あれがそうか?凄いなおい!」


「無用にでかいのう。」


「まあー、こぢんまりとして素敵な家。」


確かに王宮と比べるとこぢんまりとし簡素であるが、常軌を逸している。

家に入ると広々としたリビングや、広大な寝室、一人一人の個室、厨房、あとなにに使って良いか解らない部屋が並んでいた。


「この寝室、一個小隊が軍事訓練出来そうっすね。」


「フールファス様は、奥方様全員とご同衾されると聞き及びましたので、広めのベッドをご用意させて戴きました。」


「これなら、リリッカがいくら暴れても平気ぢゃの。」


「ガー、それを言うな!」


「取り敢えず、リズさんの服を何とかしましょう。」


「ここに取り揃えております。」


「一さんこれは?」


上下つなぎになっている作業服のような物、ブーツ、帽子、手袋等細々した物まで一式揃っている。


「はっ、“けぶらー”という非常に丈夫な植物の繊維で作られた、冒険者用の御召し物一式を取りそろえましてございます。」


「へー、これが“けぶらー”か?初めて見たぜ。」


「金より高値と聞いておるがのう。」


「御主人様の分は、当然ペアルックよね、キャー」


シスターズはどたばたと取り乱している。


「み、みっ、三日お待ち下さい…」


☆☆☆☆☆☆


怒涛の3日が過ぎた、リズさんと僕たちは何とかお互いの生活様式を理解し、より現実的な物に近づけた。


「やっと、御主人様とペアになりましたわニコニコ。」


「ダンナの防御力の高い服は目標だったからな、やっと叶ったな。」


「こうも高値な物をポンポンと用意するとはな、さすが国家権力ぢゃな。」


「シスターズの皆さんご苦労されたんじゃないですか?」


「滅相もございません、あとセルディック様から、リリッカ様用に“けぶらー”と“せらみっく”の真紅の鎧一式と、シャルロッテ様用にご希望の服を用意すると伺っております。」


「俺の分まで有るのか?」


「妾にとってこの服以上の物は無い、お気遣い無用と御老に伝えてくれ。」


「さあ、ギルドに行くっすよ。」


☆☆☆☆☆☆


「ナナさんおはようございます。」


「あら、貴方達仕事に復帰するの?」


「そうっすよ、冒険者らしくまっとうに稼ぎます。」


「そうなのwwww。あらリズちゃんお似合いね」


「まあー、有難うございます、御主人様とペアなんですよニコニコ」


「ナナさんこのワイルドシープはだれか手を付けているか?」


「その依頼は今朝届いたばかりだから誰も手を付けていないわ。」


「よし俺たちが狩ってやる。」


「あらあら、張り切っているわね、リートさんに声かけておくわね。」


「おう、有難うナナさん。朝飯にしようぜ。」


ギルドの食堂はやじ馬の展覧会と化していて、リズさんの一挙手一投足に歓声が沸く。


<なんて言ってもお姫様だよな…>


「はい、リズさんタカスカギルド名物コーンスープですよ。」


「まあー、有難うございます。」

「なんて、美味しいの♡」


「ほう、タカスカギルドの食堂は、宮廷料理人を超えたかのう。」


周囲でもザワザワしだす。


「やっぱりここのコーンスープは最高っす。」


「姉御、御久し振りでやす!」


元気な声が響く。


「おう、リートまた頼むぜ。」


「リートさんお久しぶりっす。」


「兄ぃ、またまたオメデトウごぜえやす。」


「お初に御目文字致いたします。リズです。」


リートさんはがばっと飛びのき、平伏する。


「お初に目に掛りやす、リートでごぜえやす。」


「まあー、そんなことしないで下さいませ、わたくしは一介の冒険者ですわ、リズと呼んで下さいませ。」


リズさんはリートさんの前に跪き、その肩に手を乗せる。


「リートさんそんなに硬くならないで下さい、リズさんが困ってしまうっす。」


「へえ、へい!」

「兄ぃ、どうしやす?何時ものアッシの馬車でよろしいんで?」


「もちろんっす。」


「へい、分かりやした。」


「じゃ出発しましょう、リズさんの初仕事っす。」

「シスターズの皆さんは留守番っすよ。」


「いやしかし、それでは護衛の任務が…」


「申し訳ないけど、邪魔っす。」


「はい…」


何時ものリートさんの馬車、何時もと違うのは、リートさんの手下達がガチガチに緊張していること。


「リズさん今日は取り敢えず離れた場所で見ていてください。」


「はい、今日のお仕事はなんですの?」


「街道筋にワイルドープが住み着き、人に悪さをするようになったんっす、そのワイルドシープを退治しに行くっすよ。」


「まあー、悪者退治ですのね。」


「うむ、今日は妾の後ろに隠れているようにのう。」


「はい、宜しくお願いします。」


「姉御、あれでやすかね。」


「おー、5頭か?突っ込むのは俺だけで十分だ、ダンナ適当に足止め頼んだぜ。」


「僕も突っ込みます、喧嘩場の呼吸を思い出さないと。」


「へー、じゃしっかりついてきな!」


「群れから離れた分は、妾に任せておけ。」


「おー、行くぜ。」


盛大に火柱が立ち、ワイルドシープ達がパニックを起こす中、紅が閃く、リリッカさんが4頭頸動脈を断ち割り、離れた場所に1頭首から血を噴出させたワイルドシープが横たわっている。


「まあー、大変羊さん達が…」


リズさんは泣きながらおろおろしている。


「リズさん、僕たちがワイルドシープを殺したんっす、彼らは運悪く人とテリトリーを同じくしてしまったっす、彼らは自分達のテリトリーを守るため、人を攻撃してしまい、人は自分たちのテリトリーを守るため、彼らを殺すことに決めたっす。」


「そんな、何も殺さなくても…ヒッ!」


リズさんは、リートさん達の解体の仕事を目の当たりにしてショックを受けたようだ。


「ただ殺すんじゃないっす、ここで解体され今晩タカスカの町の多くの人が彼らの肉を食べ、そして保存食に加工され、皮や毛も防寒用の衣服などになり、骨だって無駄にしないっす、人は何かを殺さないと生きて行けないようになっているっす。」


「姫さんは焼肉が外を歩いていると思っていたんか?」


「そうではないのですけど、始めて見たので…」


「彼らの事を思うのであれば、せめて今晩彼らの命を美味しく食べてあげましょう、そうして彼らの命を無駄にすることなく、僕たちが命をつないであげましょう。」


「亭主殿は宗教でも始める気かのう?」



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