第6節
「自分たちが排除したのは、囮… アルファ。 そこから北西に30㎞先に別動隊がいるようです この別動隊をこれよりベータと呼称する。
ベータはまもなく領海に侵入… タイムリミットは遅く見積もっても25分でしょう…」
原は、淡々と語る。しかし、その声は少しばかり震えていた。
「ベータの針路を見てください」
原が出力した針路予想を、隊員たちは食い入るように凝視した。
「ここです。 この火山。 何の変哲のない火山ですが、防衛省の軍事機密データを見ると、この火山で…」
原の体は、何かに侵されるように震えていく。
「おい 原。 原! しっかりしろ!」
花御は原に水とブドウ糖を与える。 まるで何かに掻き立てられるように…
原は激しくむせる。
「すみません… 花御さん…」
花御は優しい笑顔を見せる。
「…ふぅ、防衛省の極秘データによると、この火山の地下170mに… 核融合実験施設があります… この実験施設は、核兵器や水素爆弾を製造できるクラスの施設のようです。しかも、兵器だけではないようです。経産省が進めるレアアースの発見と採掘。この択捉島にもそのレアアースが大量に埋まっているということです。推定量は、およそ2410万トン。中国に並ぶレアアース大国にもなれる埋蔵量がこの地に眠っています。 そして、それに係る機密データがこの施設に保管されているようです…」
大野原たちは、一気に血の気が引いていくことを体感した。
「核… 兵器…? 希少金属…?」
水野はその事実を受け止めきれなかった。
「核兵器なんて… あるわけないでしょ… だって、日本は被爆国で… 非核三原則だってあるんだよ?」
「いいか水野。 俺だって信じがたい。が、この仕事をしている以上、世の中の常識なんてものは信じるな」
大野原は諭すように語りかける。
原は言葉に詰まりながらも言葉を発す。
「…つまり、ロシアのグラード別動隊・ベータは地下にある日本の核関連施設を攻撃し、希少資源とそのデータを盗む恐れがある… そういうことです
核施設が攻撃されれば… ヒロシマ・ナガサキの再来は避けられません。 最悪、第3次世界大戦だって始まるかもしれない」
その言葉が、車内に鉛のように重く佇む。
隊員たちは、数秒間目をつぶりだした。瞼を開けたものの目には、「本物の覚悟」が宿る。
「おい お前たち 家族を思い出せ… 家族のためならなんだってできるんじゃないか? 絶対に81年前のデジャブにはしない。させない! やるぞ!」
原はその力強い咆哮を聞き、フッ、と笑った。
アバランチは、世界の命運を一身に背負い、白銀の戦場へと進み始めた・・・




