第十一章 4話 シリーズ完結:【起動】―― 邪馬台国OS、千年へのアップデート (プランの完遂。列島の未来の確定)
いつも応援ありがとうございます。他3作品、およびエッセイ・俳句への温かいご声援にも心より感謝いたします。
本作は、3世紀の邪馬台国と大陸をひとつの「巨大な回路図」と捉え、歴史の謎を現代のエンジニアリング視点で論理的に解き明かす、異色の知略サバイバル戦記です。
【本作の基本プロトコル】
亜那 阿知寝:大陸の数理を解析する天才アーキテクト。
与太彦:現場主義を貫く、泥臭くも凄腕のフィールドエンジニア。
卑弥呼:国の未来を演算し続ける「大和OS」の設計者。
神話やロマンの裏に隠された、古代の「技術者たち」の命懸けのデバッグ作業。
後半に向けて物語の演算速度(クロック周波数)はさらに加速します。彼らが辿り着く「究極の暗号」の結末を、どうぞ最後まで見届けてください!
第十一章 第4話 シリーズ完結:永久機関 ── 現代への皮肉と「零」の鼓動
葬儀の夜、日田の嶺に築かれた「見えない墓所」には、松明の火さえも許されなかった。
卑弥呼の亡骸は、阿知寝が西域の果てから持ち帰った「深紅の絹」に包まれ、与太彦が呉の深山で見つけ出した「翡翠の緑」を首飾りに添えて、黄金の棺へと納められた。その四肢は、天竺の聖者が示した「零」の形を描くように丸められ、胎児のような姿で静かに封印された。
石室が閉じられ、与太彦が設計した「砂の栓」が物理的な暗号となって入り口を永遠に抹消する。
「……いいか、阿知寝の旦那。後世の役人や学者が、教科書通りの『前方後円墳』を探しているうちは、ここは絶対に見つからねぇぜ」
与太彦が、夜の風に混じる土の匂いを嗅ぎながら不敵に笑った。その横顔には、巨大なプロジェクトを完遂したエンジニア特有の、空虚さと満足感が混在していた。
「……当然だ。形式に溺れ、縦割りの調査しかできぬ『官』の連中には、我々が残したこの色彩も、地形を利用した座標のズレも、一生解けやしなかろう」
阿知寝は、霧の向こうに消えていく墓所の輪郭を見つめ、静かに吐き捨てた。
彼らが見つけるのは、阿知寝たちが後世へのノイズとして用意した、いくつもの「偽物の歴史」と「空の墳墓」だけだ。真の邪馬台国、その真髄である「自律稼働する数理」は、文字通り地中深く、そして民の無意識のプログラムの中に埋め込まれた。
「奴らには、せいぜい偽物の鏡を磨かせておけばよい。我々は、歴史という名のメインメモリからデリート(削除)される道を選ぶ」
二人は、自らもまたシステムの部品となり、壱与という新しいインターフェースを支える黒衣として、歴史の表舞台から姿を消した。
――それから、千七百余年の時が流れた。
現代。九州の山奥を、最新の地中レーダーを積んだ観測車が通り過ぎる。
学者はディスプレイに映る単調な岩盤の反応を見て、「異常なし」と報告書に記した。彼らの高度な機器は、与太彦が計算した「土石流による自動コーティング」と、阿知寝が設定した「岩盤と同化する空白」を、ただの自然現象としてスルーしていく。
だが、台風が過ぎ去り、気圧が急激に変化する瞬間。
最新のセンサーが捉えきれない超低周波の共鳴が、日田の深層から密かに発せられる。
そこでは、女王が纏う茜色の衣が色褪せることなく、現代の無機質な官僚機構と形式化された学問を見下ろしながら、静かな、しかし力強い「零」の鼓動を刻み続けている。
阿知寝と与太彦が組み上げた永久機関は、今もなお、この国の基底で、完璧な演算を続けているのだ。
(完)
最後までお付き合いいただき、本当に
ありがとうございました。
皆様の温かい応援に支えられ、本作を
無事に完結させることができました。
心より感謝申し上げます。
ここで、皆様に新しい物語の幕開けを
お知らせいたします。
来る七月三十一日より、新シリーズ
『AIバディ・ポチの事件簿 〜エリートを
捨てた男と柴犬ポチ、AIキャロルの
ドブ板正義〜』の連載を開始いたします!
今度の舞台は、人情溢れる下町、
そして遥かなる宇宙が交互に織りなす
「コメディSFファンタジー」です。
エリート一族を飛び出した、
イギリス紳士(だけど靴はドロドロ、
そして超・味音痴)な便利屋の男、
亜那あちね。
そして、彼と十八年連れ添った末、
愛車のシステムに魂を宿らせた
ハッキング犬「ポチC」。
この凸凹コンビが、下町の困り事から
宇宙規模のくだらない大騒動まで、
誰も死なない、誰も傷つかない
「安全な成敗」でスカッと解決いたします。
クスッと笑えて、最後は美味い飯で
敵も味方も丸ごとハッピーになるような、
どこまでも続く終わらないドタバタ活劇。
新たな舞台での挑戦となりますが、
皆様とまた新しい「旅」をご一緒できるのを
楽しみにしております。
七月三十一日の開幕を、
どうぞ楽しみにお待ちください!




