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『卑弥呼プラン:邪馬台国の希望 3人の隠密スペシャリスト〜魏・呉・天竺から世界最強の文明をリバースエンジニアリングせよ〜』  作者: あっちゅ寝太郎


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4話:【同期】―― 卑弥呼帰還、情報のホットリロード (留守を守った弟王との同期。帰還した知識の社会実装)

いつも応援ありがとうございます。他3作品、およびエッセイ・俳句への温かいご声援にも心より感謝いたします。

本作は、3世紀の邪馬台国と大陸をひとつの「巨大な回路図」と捉え、歴史の謎を現代のエンジニアリング視点で論理的に解き明かす、異色の知略サバイバル戦記です。

【本作の基本プロトコル】

亜那 阿知寝あちね:大陸の数理を解析する天才アーキテクト。

与太彦よたひこ:現場主義を貫く、泥臭くも凄腕のフィールドエンジニア。

卑弥呼ひめみこ:国の未来を演算し続ける「大和OS」の設計者。

神話やロマンの裏に隠された、古代の「技術者たち」の命懸けのデバッグ作業。

後半に向けて物語の演算速度(クロック周波数)はさらに加速します。彼らが辿り着く「究極の暗号」の結末を、どうぞ最後まで見届けてください!

第十章 第4話:【ごう】 ── 日田盆地の再会、命のインストール

 日田盆地は、白磁のような深い霧に沈んでいた。

 だが、その霧の下では、数千の鏡と篝火が、休むことなく情報を明滅させている。ここはもはや単なる居住地ではない。列島全域から集まる民の動向、魏・呉の動静、物流の熱量を一手に引き受け、処理し続ける「大和」の心臓部――中央演算装置であった。

 阿知寝あちねと与太彦は、泥にまみれた馬を捨て、女王の居室へと続く石段を駆け上がった。

 守衛たちは、最高位の礼装を纏った阿知寝の威圧感と、その背後に控える与太彦の気迫に押され、道を開ける。

「……ここか」

 重厚な扉を開けた瞬間、阿知寝を襲ったのは、爆熱のような空気の渦だった。

 部屋の四方には、大陸から運ばれた巨大な青銅鏡が整然と配置され、外部の信号を内側へと収束させている。その中心、一段高い座に、卑弥呼がいた。

 数年ぶりに見るその姿に、阿知寝は息を呑んだ。

 かつての凛とした美しさは、極限まで削ぎ落とされた肉体の奥へと隠れ、その代わりに、彼女の瞳からは青白い燐光が溢れ出していた。視力はとうに失われている。彼女は今、目ではなく「情報の奔流」で世界を見ているのだ。

「……そこに、いるのですね。阿知寝」

 卑弥呼の声は、物理的な震えというよりも、直接脳内に響く高周波のようだった。彼女の周囲の空気が、演算の負荷ロードによって歪んで見える。

「遅くなりましてございます、女王ひめみこ様」

 阿知寝は膝をつき、最高位の礼を尽くした。だが、その声には、臣下としての義務を超えた切実な響きがあった。

「お止まりなされ。貴女の回路は、すでに臨界点オーバーヒートを越えております。……与太、鏡を反転させろ! 入力インプットを遮断する!」

「へいっ!」

 与太彦が力任せに、部屋の四方の鏡を外側へと向け直した。情報の流入が止まり、室内がわずかに暗くなる。だが、卑弥呼の脳内で暴走する既存のデータは、止まることを知らない。

「……無駄です、阿知寝。一度始まった演算は、答えが出るまで……私が焼き切れるまで、止まりません。国を繋ぐ『一』の理だけでは、この熱を逃がせない……」

 卑弥呼の指先が、熱で微かに震えている。

 阿知寝は立ち上がり、懐から天竺の石板を取り出した。そして、震える卑弥呼の手に、その冷たい石を重ねる。

「……『一』ではございませぬ。私が持ち帰ったのは、すべてを包摂し、すべてを無に帰す『ぜろ』。……女王様、システムを『一』からではなく、『零』から再定義なされませ。存在するものを数えるのではなく、存在せぬくうを基点にするのです」

 阿知寝は、シュンニャから得た「零」の真理を、卑弥呼の耳元で静かに、しかし強固なコマンドとして唱えた。同時に、医学の知を込めた生薬を、彼女の唇に含ませる。

「……ノイズを捨て、くうを定義せよ。……全ての矛盾を、零に収束させよ」

 その瞬間、室内を支配していた高周波の共鳴音が、ピタリと止まった。

 卑弥呼の瞳の燐光が、青から静謐な銀へと変わる。膨大に膨れ上がっていた情報が、あるべき「場所」へと整理され、彼女の脳内に広大な「空白キャッシュ」が生まれた。

 卑弥呼の荒い呼吸が、次第に穏やかなものへと変わっていく。

 焼き切れる寸前だった国家OSが、天竺のパッチによって、劇的に最適化オプティマイズされたのだ。

「……ああ、涼しい。……見えるわ、阿知寝。お前が歩んできた砂漠の風も、天竺の空も。……そして、この国の、濁りのない未来も」

 卑弥呼の細い手が、阿知寝の手を握り返した。

 与太彦もまた、傍らで膝をつき、流れる涙を拭おうともせず、三人の再会を噛み締めていた。

 日田の深い霧が、少しずつ晴れていく。

 三人のエンジニアが、数年の時を経てついに一つの回路として連結リンクした。

 「大和」が真に起動した、歴史的瞬間であった。


最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。

本作『卑弥呼プラン』は、いよいよ7月10日をもちまして、全57話の幕を閉じることとなりました。天才アーキテクトたちの命懸けのデバッグ作業の結末を、どうぞ最後まで見届けていただけますと幸いです。

さて、本作のような「徹底したロジックと生存戦略」を描いた歴史ドラマがお好きな皆様へ、すでに全八章で完結しているこちらの作品をご案内いたします。

■ 完結済『泥田と田楽 桶狭間』(全八章)

絶望的な兵力差を覆すため、織田信長が放ったのは「音」と「情報の刺客」でした。

諸国を放浪し、京の知恵と堺の富をその脳髄に蓄積(データベース化)した男・秀吉と、「機能美」を追求する魔王・信長。

幼少期に共有した「泥の記憶」を基盤に、二人の天才が交わったとき、桶狭間の豪雨さえも、緻密な観測と情報網センサーによって手繰り寄せた必然の勝機へと変貌します。

過酷な泥土を生き抜くための「野生の合理性」と、土地に根ざした「物流の理」。精神論や根性論を排し、全く新しい視点で信長と秀吉の戦いを再定義した、知略サバイバル戦記です。

合言葉は、「川の深さは?」「赤味噌の濃さよ」。

『卑弥呼プラン』の熱量のままに駆け抜けられる一気読みに最適な一作ですので、ぜひこちらもURLから戦場を覗いてみてください!

https://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/3147505/

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