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『卑弥呼プラン:邪馬台国の希望 3人の隠密スペシャリスト〜魏・呉・天竺から世界最強の文明をリバースエンジニアリングせよ〜』  作者: あっちゅ寝太郎


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第九章 1話:【衝突】―― 外圧という名の負荷テスト (大陸からの追撃と、朝鮮半島勢力との最終決戦)

第九章:【かん】 ── ことわりの追走と対馬の「絶対境界」

第1話:西域の通行証 ── 敦煌、魏の境界にて

 熱気が、視界を歪めていた。

 魏の最西端の拠点、敦煌とんこう。そこは大陸の覇者である魏の「法」と「秩序」が、果てしない砂の海に飲み込まれる直前の最終境界である。

「……倭国の使節よ。本気か」

 敦煌の守備隊長、**馬大士ばだいし**は、目の前の机に置かれた「せつ」――魏の皇帝から授けられた金印紫綬に連なる、正式な通行証を凝視していた。

 阿知寝あちねは、西域の強烈な陽光を真っ向から受けながら、微動だにせず答えた。

「これは倭国の王、卑弥呼が洛陽で得た皇帝の信。我ら『倭国天竺巡礼使節わこくてんじくじゅんれいし』が、その先のクシャーナ朝、そして天竺まで踏み入ることに、魏の法的な障壁はないはずだ」

 阿知寝の後ろには、二章で彼が鍛え上げた精鋭たちが控えていた。潮風に焼かれた肌を持つ「第六隊・水夫隊」の屈強な男たちと、音律の陰に暗号を潜ませる「第五隊・楽人隊」の智者たち。計八十八名の倭国使節団は、かつての張騫ちょうけんが率いた部隊にも勝る、静かなる覇気を纏っている。

「障壁はない。だが、ここから先は魏のことわりは届かぬ。砂嵐、略奪者、そして得体の知れぬ病……。貴殿らがこの地を踏み出すことは、すなわち『未知のエラー』の中に身を投じるということだぞ」

「承知の上だ、馬隊長」

 阿知寝は、懐から一枚の図面を取り出した。それは魏の西域長史府から提供された地図に、彼独自の「演算」を加えた航法図である。

「我らは、単なる巡礼に行くのではない。倭国という新しいシステムを動かすための、未踏の『知』を収集しに行く。そのためには、魏の駅制ポストシステムを西域の果てまで拡張して利用させてもらう必要がある」

 阿知寝の狙いは明確だった。

 彼が旅の途上で得る医学、特産物、そして数理。それらを彼自身の帰還を待たずに、魏の公的な通信網を使って「先行パケット」として日本へ送り出すこと。そのための外交的な確約を、彼はこの敦煌で取り付けねばならなかった。

 馬隊長は、阿知寝の瞳に宿る、異常なまでの論理的意志に圧された。

「よかろう。魏帝の命により、案内人として西域に明るい兵五名を付ける。……だが、阿知寝殿。一つだけ聞きたい。何故そこまで急ぐ?」

 阿知寝は、西に広がるゴビ砂漠の地平線を睨んだ。

「倭国の設計者(卑弥呼)には、時間が残されていない。彼女の寿命が尽きる前に、この国に『世界』をインストールしなければならないのだ」

 阿知寝の号令と共に、倭国の使節団が動き出した。

 ラクダの蹄が砂を噛む音が、規則正しいリズムとなって砂漠に響く。

 

 それは、倭国が島国のOSを脱し、ユーラシア全域の知を統合する「広域OS」へと進化するための、命懸けのアップロードの始まりであった。

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