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『卑弥呼プラン:邪馬台国の希望 3人の隠密スペシャリスト〜魏・呉・天竺から世界最強の文明をリバースエンジニアリングせよ〜』  作者: あっちゅ寝太郎


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第八章 1話:【流(りゅう)】―― システム統合と帰還プロトコル (各地の知を統合し、追手を撒きながらの列島帰還)

第八章:【りゅう】 ── 王の帰還と「後詰」の伏線回収

第1話:洛陽出立、静かなる包囲網

 洛陽、平城門へいじょうもん

 魏の皇帝・曹丕から授かった「親魏倭王」の印綬と百枚の銅鏡を積んだ馬車が、軍楽と共に東へと動き出した。沿道を埋める魏の民衆は、極東の島国から来た美しき女王の帰還を、喝采を以て送り出している。

 だが、その華やかな車列の主役であるはずの卑弥呼は、薄暗い輿こしの中で静かに目を閉じていた。

(……司馬懿どの。あんたの視線、そこら中の風に混じってるよ)

 洛陽を出て一昼夜。車列が黄河沿いの宿場町に差し掛かった頃、空気の密度が変わった。

 公式に同行している護衛兵の他に、つかず離れずの距離で並走する一団がいる。司馬懿の子飼い、張徳ちょうとく率いる隠密部隊だ。その部隊の最後尾、深く笠を被り、名もなき老兵に身をやつした男――司馬懿本人が、鋭い眼光を卑弥呼の輿に向けていた。

 司馬懿の狙いは明白だ。卑弥呼が懐に隠し持っている「魏の法典」の真筆。そして、彼女の脳内にのみ存在するシステムの「核」を、魏の公式記録に残らぬ形で回収すること。もし卑弥呼が抵抗すれば、「賊による襲撃」として処理するつもりだろう。

 深夜、宿舎の離れ。

 卑弥呼は一人、庭の泥濘ぬかるみを見つめていた。そこへ、影のように一人の男が歩み寄る。

「……女王様。お迎えに上がりやしたぜ」

 煤で顔を汚したその男は、第五章で与太彦がこの地に潜伏させていた石工の泥太どろただ。彼は土木作業員として宿場の補修に紛れ込み、卑弥呼の脱出路を文字通り「掘って」いた。

 卑弥呼は、身に纏っていた女王の豪華な衣を脱ぎ捨て、泥太が用意した典農部てんのうぶの書記官の古着に着替えた。

「泥太、司馬懿本人が来ている。……面白いじゃないか。あんたが掘ったこの『バグ(地下道)』に、あの冷徹な計算機を引き摺り込んでやろう」

 卑弥呼の口調から、女王としての気品が消え、冷徹なアーキテクトの顔が覗く。

 彼女は懐の法典を確かめると、曹丕から密かに預かっていた「ある物」を指先で弄んだ。それは、司馬懿が最も恐れる「皇帝の直筆」を模した、一種のカウンタープログラム(政治的脅迫)であった。

「さあ、第一夜のデバッグを始めようか」

 卑弥呼は泥太と共に、静かに床下へと身を沈めた。

 翌朝、司馬懿が踏み込むとき、そこに残されているのは「空の繭」と、彼への手痛い返礼品だけである。

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