7.なずな
浜松に着いた。
「あぁーっ……」
俺は体を伸ばす。
体がバキバキだ。
さて……。
浜松と言えば……。
「ちょっと待った」
なずなが、俺の肩をつかむ。
「この旅で分かったけど、芹って食べる事好きだよね」
「うん、好き。その土地のね」
「そして今、何を食べようか考えてたでしょ」
「……はい」
なずなは、何かを考えていた。
「……よし! 食べよう!」
「ぉ……おおぅ?」
「最初はさ、遊びに来てんじゃねぇって思ってたんだけど」
「あ、ごめんなさい」
「毎回、戦闘モードでピリピリしてるのも疲れるのよね。でも、それが当たり前だと思ってたから、芹と一緒にいて、少し楽になってる」
「なずな、真面目だからね」
「さぁ、何食べるの!?」
「浜松と言えば、うなぎ、餃子、おでん、ハンバーグ……」
「餃子?」
「そう。野菜たっぷりで、もやしがのってる」
「へぇ! 餃子食べたいかも!」
「よし! じゃあ餃子を食べに行こう!」
俺達は、浜松餃子を食べに出発した。
――――
「ごちそうさま!」
「移動に時間がかかっちゃったから、このままホテルか、プレイヤーを探すか……あ!」
なずなが、スマホを見ながら言う。
「いた?」
「いたけど……26位」
「26位か……さっきの考えだと、下位のプレイヤーも危険だよな」
「とりあえず、近くで様子を見ましょうか。気づかれない距離で」
「分かった」
俺達は、百貨店に向かった。
――――
「ここのどこかにいるはずなんだけど、さっき反応が消えたわ」
「消えた? 移動したって事?」
「それもありえるし、何かカードを使ってる可能性もある」
「あまりコソコソしてても、俺達がプレイヤーだってバレるから、普通にしていよう」
「分かった」
俺達は、各階を歩いていた。
「あ、このお財布可愛い」
「お、いいんじゃない?」
そんな会話をしながら歩いていた。
結局、誰にも会わなかった。
「移動しちゃったのかもね。私、トイレ行ってくるわ」
「はいよー」
――――
女子って、なんでトイレから出てくるのが長いんだろう。
うちの母さんも長いんだよな。
なずなの前に並んでいた女の子も、まだ出て来ていない。
――――
長すぎじゃないか?
女の子が出てきた。
て事は、次か?
その時、ピロンとスマホが鳴った。
―なずなのフォローが外れました―
どういう事だ?
俺はスマホを見た。
―よくある質問―
―フォローが外れるときは、相手が外したとき、相手がカード化したとき、相手がゲームクリアしたとき―
相手がカード化したとき……。
なずなの後に、トイレに入った人はいない。
あの女の子!!
俺は、急いで女の子を追った。
――――
いた!
「あの!」
女の子は振り返った。
「何」
「あなたはプレイヤーですか?」
「プレイヤー?」
「いや! 違うなら大丈夫です!」
スマホは鳴っていない。
プレイヤーなら、近づいたら鳴るはずだ。
俺はまたトイレに戻る事にした。
なずなに電話をする。
「おかけになった電話は……」
繋がらない。
何があったんだ。
このゲームは、まだ分からない事がたくさんある。
……もし、スマホを鳴らないようにできるとしたら?
俺は立ち止まり、もう一度女の子の所へ向かおうとした。
!
後ろを振り返ると、さっきの女の子が目の前にいた。
俺は反射的に、後ろへ移動した。
こいつ、俺に何かしようとしていた。
やっぱり、この女の子がプレイヤーに違いない。
「なずなをどこへやったんだ」
「なんのこと?」
「とぼけるな。プレイヤーだろ?」
「……移動しましょうか」
やっぱり!!
――――
人気のない場所に移動した。
「なずなを返せ! カードオープン、ヤクザ!」
「カードオープン、なずな」
なずな!
……やっぱりカード化……。
どうする。
なずなに攻撃したら……。
「何もしないなら、こっちから始めるけど?」
!
「なずな、ヤクザを倒しなさい」
「攻撃はするな! 防御だ!」
なずなに攻撃はできない。
痛みが伝わってしまう。
でも、防御だけでは……。
「へぇ! この女、結構強いんだ!」
なずなは、背負い投げをした。
ヤクザの体も、それなりに強いので耐えられる。
この間に考えないと……。
「お兄さん、スーパーレア持ってるんだ」
「え?」
「隠しても無駄。私には見えてるから」
こいつ、何かカードを使って……!
「戻れヤクザ!」
「戻してどうするの?」
「カードオープン! 盗人!」
盗人は、なずなを紐で巻きつける。
「戻れ! なずな!」
盗人の説明を見る限り、紐を使えば八割は成功する。
なずな、こっちにこい!!
盗人は、なずなを引っ張り上げた。
成功だ!
「これで、なずなは俺のもんだ! リリース!」
なずなが、元に戻っていく。
「芹!」
「なずな! よかった!」
これで、戦える!
「降参」
「へっ?」
「だから降参だってば」
「なんで?」
「このまま戦っても損しそうだから」
「損?」
「私はカードを集めたいの。順位なんてどうでもいいわ。このままだと、無駄にカードを使いそうだし。スーパーレアは、レアが揃ったらにすればいいし」
「プレイヤーをカード化してしまえば、順位は上がらないけど、カードは増えるって事か?」
「そうよ。その女のカードも、私のスマホに……ない!? なんで!?」
「身代わりリングを使ったからよ」
なずなは左手首を見せた。
そこには、ヒビの入ったリングがあった。
使用中は目で見えないが、役目を終え、リングが見えるようになっていた。
「でも、カード化されてたじゃない!」
「私は、スマホに使ったの」
「スマホ!?」
「身代わりリングをつけると、何に使うか選べるのよ」
「それでスマホに……」
「あなたはカードを集める事に執着するあまり、カードを使わなすぎなのよ」
そう、カードは集める事も大事だが、使えないと意味がない。
「それじゃあ、スーパーレアもないし、大損じゃない!」
「まぁ、そうなるわね」
一度、降参したのだから、プレイヤーにカードを渡さなければならない。
「っっ……!!」
女の子は、スマホを地面に叩きつけた。
「あっ、ヒビが……」
俺はスマホを拾おうとした。
ビーッビーッビーッ。
スマホから音が鳴る。
「スマホに対しての、攻撃又はゲーム放棄とみなし、プレイヤーを排除致します」
排除?
「いやっ! 痛い!」
女の子が指輪をさわっている。
「あっ……ぁあ……っ」
「おい、大丈夫か!!」
女の子は、首をおさえ倒れた。
俺は、女の子の安否を確認しに行った。
「だめだ、息してない」
「そんな……」




