第60話 紅葉狩り
秋晴れの実に良い天気だ。と言いたいところだけど、このボクたちの住む島は春です。
「というわけで、こっそり告知が始まっていた紅葉狩りイベント?を配信するわん」
「かりー!」「かりー!」
今日は双子の子狼であるフェンとヴァンも一緒でテンションマックスだ。
◯[なにが『というわけで』なのかはわからないけど、おはよー]
❤〚フェンちゃん、ヴァンくん、きゃわわわ〛
◆[今回は花見イベントとかのイベントじゃなくて、単なる樹木系モンスターの大量発生っぽい]
「そうなんだよねー、前回の花見イベントみたいに大々的にはやらないみたいわん」
―― 期間限定 樹木系魔物大量発生 紅葉狩り を開催!
とこっそり告知されていただけなのだ。
「期間限定ってなってただけでいつから始まるのかもわからないんだけどね」
▽[運営も正式サービス開始準備で忙しいんだろ]
∈[たぶん始まってるのにゃ。初めて見る樹木系魔物の目撃情報が増えてるみたいにゃ]
◎[そういえばサクラッキーにあったわ。フォーチュンクッキー拾ったけど、大量発生の前兆だったのか]
どうやらすでに大量発生が始まっているみたいだ。前回の花見イベント時は位置の関係上ここでイベントが先に始まったのも影響しているのかもしれない。
「早速、紅葉狩りに出発するわん。今日のパーティメンバーも待ってると思うしね」
「わんた、はやくいこー」「いこーいこー!」
フェンとヴァンを連れて宿屋の二階からおりる。
◯[あれ? もしかしてパウリの街じゃない?]
∪[ダンジョンのあった村だったりする?]
「あ、正解わん。今日はダンジョンの町(仮)の東っ側の森の辺りを探索します」
ちなみに、その肝心のダンジョンはまだ閉鎖されたままだ。もしかしたら運営さんも忘れているのかもしれない。
この村はボクたちが夏イベントに行っている間も着々と開発が進み、すでに町の規模になっている。元々ここらへんを転々としていた猫妖精さんと犬妖精さん達が定住を決めたのも規模が大きくなった理由である。
「わんた、ゔぁん、しゅっぱーつ!」
いつの間にか人化が解けて子狼姿となったヴァンの上に人化したままのフェンが座って号令をかける。
❤〚きゃわわ〛
≒[くうっ、正式サービス開始したらワンチャンわん太の街に移住できたりしないかな]
◆[アンメモってファストトラベル系の機能ないから……]
本当に現実と同じスケール感のオープンワールドで移動もリアルなのは実際にはかなり大変である。
今から向かう予定の森もこの街の外の遥か遠くに微かに見えているぐらいだ。
「あら、お待たせしましたか?」
平原の先の森を見ていると後ろから声がした。
≒[おっと白猫さんキター]
◯[猫妖精のお嬢様と犬妖精の騎士?]
「待ってないわん。今回のパーティメンバーは猫妖精のシルヴィアさんと、お付きの犬妖精のゴルディさんです」
リスナーのみんなに紹介する。
「おぉ! これがハイシンというものなのですね。改めまして猫妖精のシルヴィアです。主に風と癒やしの魔法を使いますわ。そして……爺や」
シルヴィアさんが後ろに控えているゴルディさんを呼ぶ。
「はっ、私は犬妖精のゴルディと申します。お嬢様の護衛でもありまして、今回はこの斧槍を使用します」
ゴルディさんは犬妖精としてはかなり大柄な部類にはいるだろう。ちなみに顔の両側に垂れた耳がプリティである。
「さて、みんなへの紹介も終わったし早速出発しようか」
「しゃっしゃーく!」
気合の入ったナギサくんが飛び出してきて、その身を大きくした。
◎[フライングシャーク! ってこの前より大きくなってる?]
∈[騎獣はずるいのにゃ。しかも浮いてるなんてずるすぎにゃ]
▽[いまだにテイムに関する情報もなし。あ、わん太のは精霊契約か]
「そうそう、この前フカルア山に行ってから調子が良いらしく、ナギサくんが大きくなれるサイズも増えたみたいなんだわん」
みんなが乗っても十分なぐらいに一回り大きくなった。
「わんた、なぎ、しゅっぱーつ!」「しゅぱーっつ!」
「きゅっきゅっー!」
ナギサくんの頭の方にちびっこたちとイナバくんが陣取って号令を掛けている。
号令に合わせて、ゆっくりとナギサくんが動き出した。




