閑話 王都
はじまりの街、やっとまともな建物が立ち並び街らしくなってきたその一角に情報クラン『ジャバウォック』のクランホームはあった。
「ねぇ、クラマスー、結局『王都』の場所って判明したのかにゃ?」
木製の椅子の背を抱え込んで配信を見ていた猫獣人は黙々と布を縫っていた男性に問いかけた。
「クラマスじゃなくて店長と呼べ、店長と」
縫いかけの布を机に置いて首を回す。その机にはベレー帽らしき帽子が複数積まれていた。
「私も別に店長でもクラマスでもいいと思うんだけどねぇ」
サブクランマスターでもある兎獣人の三月は薬草ティーの入ったカップを置いてそう言った。
「わかったわかった、もうどっちでも良いよ。で、『王都』だが、この『はじまりの街』の南側でそれほど離れていないと考えられる」
「誰かたどり着いたのかにゃ?」
「いや、現時点で『はじまりの街』と『王都』間での通行は確認できてない」
「それなのに、南でそれほど離れてないって言う根拠は?」
首をかしげる三月に対し、店長は一枚の紙を広げた。びっしりと書き込みのある地図だ。
「第二陣に合わせたアップデートで南の方のマップが一部緩く通行可能になった。また、魔物の分布も少し変化しているらしい。新規プレイヤーも王都側からだと北の方がまだ進めそうって話だ」
「あ、確かに王都から始めた子もみんな北のほうに進んでるって言ってた」
「それに、ここと王都の時差もなさそうだし、植生や魔物の分布も同じみたいだ」
「運営も流石に別な地域は諦めたかにゃ。海外とかだと管理も合流も絶望的だしにゃー」
「この神ゲーは色々とゲームとリアルの匙加減間違ってるからな。王都側は割りと普通のRPGっぽいくせにこっち側はまだまだサバイバル仕様のままだし、早く行き来できないと格差ができかねん」
何もなかった『はじまりの街』と違い『王都』には様々な店が立ち並んでおり、強い武器等も揃えようと思えば揃えることが出来るという。ただし、駆け出しの探索者であるプレイヤーがすぐに買える値段ではないらしい。
「行けるなら王都も行ってみたいわよねー。もう少し火力のある武器ほしいわ」
―― ピコン♪
「お、喜べ、王都へ行けるかもしれないぞ」
フレンドメッセージを開いて一瞥した店長が立ち上がってシルクハットをかぶる。
「三月、チシャ猫、出掛けるから眠茶を起こしてくれ。南の端にエリアボスらしいでかい鹿が現れたらしい」
「え、ほんとに! それは殺りがいがありそうね。チシャちゃんいくわよ」
三月は巨大な大剣を取り出し軽く振り回す。
「うわっ、こんな狭いとこで降りまわすにゃにゃ。てか、店長、ウチって情報クランでしたよね? 何でいっつも攻略組と一緒に最前線にいくことになってるんですかにゃ!」
「はいはーい、竜車に便乗させてもらえるらしいからとっとと行くわよー」
渋るチシャ猫を三月が引きずってクランホームを出ていった。
―― エリアボスが討伐されました。
これにより、街道沿いの魔物出現率が低下します。
そんなワールドアナウンスが流れたのは5時間後のことだった――




