第98話 碧鳥人族の島
「ところで、ぬいぐるみ系熊獣人のクマゴローさんはどこから来たんだわん? ボクの島には熊獣人さんはいないみたいなんだわん」
「ここは五百年だかもう少し前に大きな島、わん太様の言う南の島で天変地異が起こった際に移り住んだ者達の島なのです。その南の島にも熊獣人はいなかったと思われます」
「ご先祖様がこの島に根付いてかなり経って山の異変が起きた時に現れたのがベアゴロー様ですが、突然現れた、あの召喚陣から出てきたと伝わっております」
「ベアゴロー様がどこから来たかは分かっていません。そして、どこに帰っていったかも。ただ、召喚陣だけはそのまま残されたのですが、知っての通り皆は入ることができず、これまで聖域と呼ばれていました」
結局、何となく親近感のわく、ぬいぐるみ系熊獣人のベアゴローさんはどこからともなく現れてどこへともなく去っていったようだ。
∴[ベアゴローさんの話ってどれくらい前のことなのかな? 数百年前?]
◆[恐らくだけど、最初の南の島で天変地異というのはルーダン魔王国が滅亡したの同じ頃だろう。多分世界的に何らかの異変が起きたってことで……]
▽[ああ、クロセル氏のフカルア山の異変もそれかぁ]
「そういえば、ここと南の島って行き来してるのかわん? ボクは本来は南の島に行くつもりだったんだわん」
「おぉ、そうだったのですか。この島は南の島から逃れてきた者の子孫でして、帰りたい気持ちもなくはないのですが、残念ながら海はモンスターだらけですし、全く交流がないのです」
「じゃあ、どっちにしろ転移ポータルのエネルギー不足を何とかしないと……まあ、これはミッションの始まった勇者の剣と関係ありそうな気がするわん」
◯[そういえば、ミッション始まってたな。温泉イベント]
▽[わん太の温泉イベント配信かぁ……誰得?]
◎[温泉配信、チラリも……今もマッパじゃん!!]
「あ……うん、期待に添えなくてゴメンわん。だけど、ボクも温泉に入る時はちゃんとタオルも使うから隠すよ?!」
◎[草www]
▽[海水浴の時はちゃんと水着だしな……]
◆[それはともかく、やっぱりミッション関連で勇者の祠とか温泉とか、山の異常って龍脈関連?]
「多分そうわん。まあ、転移ポータルのエネルギー問題は最悪魔石を集めれば何とかなるかもしれないけど、温泉がないとペンギンさん達が困りそうだから何とか出来るかやってみるわん」
どうやら、この村の勇者召喚祭りは毎年取れた魔石を奉納する形で行われていたらしい。
そして、積もり積もった魔石のエネルギーにより一時的に転移ポータルが動作するようになったとのことだ。
―― 元々、この転移ポータルは魔素流のエネルギーを接続して動作するようになっています。
現在はその流れが滞っており、施設の維持が精一杯のようです。
勇者の祠と呼ばれている地点が大元と推測されますので、そちらを調査すれば転移ポータルだけでなく、温泉問題も解決するかもしれません。
「そうだね、クマゴローさんも気になるし勇者の祠の調査を頑張るわん」
「おお、流石は勇者様、いや、わん太様です。ありがとうございます」
「ところで、わん太様は北の島の更に北の島から来られたと聞きましたが、やはり、そのポータルが治ったら帰ってしまわれるのですかな?」
少し下がり気味の黄色い眉毛で訊かれた。
「一番の目的は南の島に行くことわん。それに、実はこれでもボクは北の島の『わん太王国』なんだわん。なので、戻らないわけにはいかないけど、こことも交流できれば良いと思ってるわん……って、ところで、ここの村っていうか、この島はどこの国に属してるわん?」
「なんと! わん太様は王様でしたか。そうとは知らずご無礼を……」
「あ、いや、そんなにかしこまらなくて良いわん。普通にしてわん!」
かしこまって頭を下げるペンギンさんたちを慌てて止めることになった。
「……」
「……」
「……それで、この村、いや、この島ですが、どこの国にも属してはいません。今はわかりませんが、こちらに渡って来る前の南の島でも特に国というまとまりはなく、大きくてもせいぜい村単位だったと聞いています」
「……」
「……」
「……それでですね、もしよろしければ我々、この島の碧鳥人族を『わん太王国』の一員に加えては頂けませんでしょうか?」
「おねがいします、わん太様!」
「わんたさま、おねがい!」
―― 建国ミッション:碧鳥人族の島
碧鳥人族の島を『わん太王国』に加えますか?
目の前に半透明のメッセージが浮かぶ。
「ふぁっ?! そんな大事な事を簡単に決めて良いのかわん?」
じっとこちらを見つめるペンギンさんたちに再度確認を取る。
「はい、我々はご先祖様がこの島に来てからこの島だけで生きてきました。このままでは我々の子孫もまたこの島だけで生きていくことになります」
村長である田脇さんの後ろで長老衆もウンウンとばかりに頷いている。
「わん太様がいらしたのも精霊様の思し召し、この機会に島の外と交流ができるのなら我々の子供たちには外の世界へと羽ばたいてほしいのです」
「……それなら分かったわん――」
ボクの手の中に大きな建国旗が現れる。
「――ここも『わん太王国』とするわん!!」
宣言して転移ポータルの横に建国旗を突き刺す。
一瞬、旗が光り、足元から白い光の輪が広がっていった――。




