VI.先生方とのお茶会
キードゥル97年4月
「お疲れ様です、クリスティーネ様」
ため息をついたクリスティーネに、ティルツィアが言葉をかけた。
「いえ、大丈夫です」
「採点が終わりましたら、お帰りくださって結構です。今のところは全て満点ですわ……。本当に、クリスティーネ様には驚かされることばかりです」
あはは、とクリスティーネは苦笑する。
(予習、そう予習なのです……!)
「では、答案用紙をどうぞ。では、また後で」
そうして、全て満点のテストを返されて、クリスティーネは寮に戻った。
この後は先生方とのお茶会だ。
◇◆◇
「来てくださってありがとう存じます、クリスティーネ様」
先生方四人で、クリスティーネは迎えられた。
学院長、ティルツィア・ダウィン。
アウレリア・ヴァルツァー。シュデット・ヴォーラー。
それから、コンラート・ベンラット。
「改めて紹介させていただきますわ。彼はクリスティーネ様が眠っていらっしゃった間、レスツィメーアの研究をしていましたの」
「お初にお目にかかります、クリスティーネ様。コンラート・ベンラットと申します。二年前に教師になり、今は文官特別科を担当させていただいております。どうぞ、お見知りおきを」
コンラートはニコリと柔和な笑みを見せた。無表情なことの多いシュデットとは違って、優男らしい。
「こちらこそ、よろしくお願いします、コンラート先生」
クリスティーネもニコリと微笑み、お茶会は始まった。
「クリスティーネ様、三年前まで開催されていたレスツィメーアの研究はほぼ終わりを迎えているのです」
アウレリアが少し眉を下げて、そう言った。
「……そうなのですか?」
「はい。この三年間、国内の研究者たちはこぞってレスツィメーアの研究をしていたのです。新魔法として、公式に認められることとなりました」
ということは、レスツィメーアは普通の生徒たちにも教えられるほど、かなり浸透したのだろう。三年前の制限はもう撤廃されているらしい。
(それならよかったです。魔法がたくさん浸透するのはいいことですし)
「ですが、開発者であるクリスティーネ様のご意見も是非いただきたく!」
コンラートが目を輝かせる。先程の優男とは思えないほどに興奮しているようだ。
(……研究肌なのですね。そういう方はあまり身なりや礼儀に気を使わない方が多いのですけれど)
どうやら、コンラートは違うらしい。
「レスツィメーアを見てみないことには何とも言えませんね」
ということで、クリスティーネたちは訓練所に移動した。
「……レスツィメーア」
コンラートが、レスツィメーアを放った。
(わたくし以外がレスツィメーアを使っているのは少し違和感がありますね……)
研究のときには、練習で使っている姿は見ていてたものの、こうして普通に使われると少し驚いてしまう。
「どうでしょう? 普通に撃ってみたのですが」
「とても安定していて、素晴らしいと思います」
「ありがたきお言葉です」
コンラートはニコリと微笑む。
「クリスティーネ様は追尾魔法の組み込みも成功しているのですよね?他には何ができますか?」
「そうですね……。数の増量はできます。質量の増量はまだやってみたことがないです」
「なるほど、そうですか。質量の増加はあまり意味がないという研究結果が出ていますから、クリスティーネ様は良き判断をしたでしょう」
(たまたまですけれどね……)
「数の増量は如何ほどできるのか、見せていただいてもよろしいでしょうか?」
「はい」
クリスティーネは頷く。
そして、少し沈黙が訓練所を埋めた。
「……あの、擬似の杖をお借りしても?」
「……あぁ、そうでしたね。クリスティーネ様は杖の取得がまだなんでした」
ティルツィアは杖を取りに行かせて、クリスティーネに手渡す。
「カルス・レスツィメーア」
大きな魔法陣が出てきて、そこから光の矢が生成される。
「……!!」
数えれば、数十本ほどだろうか。百には届かないくらいである。
全てが発射されると、的はズタズタになっていた。
(こうして見ると、容赦ないのがよく分かりますね……)
「……。これはクリスティーネ様の本気、ですよね?」
「いえ、頑張ればもう少しはいけると思います」
クリスティーネがそう言えば、全員に絶句された。
(悲しい)
「……言ったでしょう? クリスティーネ様は規格外だと」
コンラートがコクコクと頷く。
(それも悲しいです)
「……これではレスツィメーアの研究に開発者が使えませんね……。残念です」
コンラートは悲しそうに呟いた。
(わたくしの方が悲しいのですが?)
ということで、一年間しかクリスティーネが参加できなかったレスツィメーアの研究は終了した。
次はファミリアとの再開です。




