38.息子、娘がダダをこねて仕事に行けない【後編】
冒険者としての仕事をしにいこうとしたリュージ。
だが娘が行くなと引き留めてきた。
玄関先にて。
しばらくドッタンバッタン大騒ぎ(簡易表現)したのち。
ルコがつかれたのか……ぜえはあ……と息を切らして、おとなしくなった。
「ふう……ようやく静まりかえりましたね。さ、りゅー君。今のうちに。ルコの面倒はお母さんにお任せあれ」
どんっ、とカルマが自分の胸を手で叩く。
その顔は恍惚の表情だ。「今の最高に娘を持つ息子の母っぽいのぉおおお…………」
母の言葉を聞いて、ルコがピクンッ、と体を大きく振るわせた。
「やぁ……」
ごおぉおおおおおおお、と先ほどよりも大きな魔力が、ルコの体内から放出し出す。
「母さん!」
「ん? あ、やべ」
母も危険を察知したのか、「変身っ!」
邪竜の姿に変化して、【とう!】
と家の中で邪竜となった母が、そのまま真上に飛ぶ。
ばごおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!
と音を立てて、家の天井を破壊し、母が空高く舞い上がる。
リュージたちには、母がかけた無属性魔法【結界】に包まれていた。
母が飛んでいった天井を、見やる。
「やーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
どっっごぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!!
遥か上空にて。
青い炎の、爆発が起きていた。
それは先ほど、母を吹っ飛ばしたものより、何十倍も破壊力のある爆発だった。
びりびり……と地上にいるリュージたちの鼓膜を振るわせる。
「か、かーーーーーーーーさーーーーーーーーーーーー」「ただいまー」「ーーーーーーん、お、おかえり……」
母は何ごともなかったかのように、すちゃっ、とリュージたちの前に着地する。
「あ、壊れてますね。なおしときます。ていや」
母が万物創造スキルを発動。
壊れた天井が元通りになる。
一方でルコはというと。
今の爆発で、魔力を使い果たしたのだろう。
カルマの胸の中で、すやすや……と眠っているではないか。
リュージたちはその場でへたり込む。
「さ、りゅー君、シーラ。ルコが寝ている今がチャンスです。お仕事にいってください」
ふぁいとっ、とカルマがリュージたちに、明るい笑顔を向ける。
ふらふら……とリュージたちは立ち上がる。
「母さん……。その……ごめんね」
申し訳なかった。とんでもない子供を、リュージは生んでしまったことに対して。
だが母はきょとん、と首をかしげている。
「何を謝っているのですか?」
「だって……僕のせいで……」
「りゅー君のせい?」
リュージは今さっき思ったことを、母に伝える。
「何をバカなことをおっしゃりますか。息子に娘ができて喜ばない母はいませんよ」
にっこり笑って、カルマがリュージの頭を撫でる。
「それに元気があっていいじゃないですか。こんなのかわいいものです」
確かにハイパー無敵な母にとっては、大悪魔なんてかわいいものだろう。
「お母さんは息子に娘ができてとても嬉しいです。家族ができてとても幸せです。だからりゅー君はお気になさらず」
ね、とカルマが笑う。
「うん……」
この強い母がいてくれて、本当に良かったと思うリュージ。
「さっ! おはやく」
「うん……じゃあ母さん。ルコを、よろしくね」
「はぁああああああああああああああああああ!!!!!」
カルマが目をクワッと見開いて叫ぶ。
「りゅー君に、息子にっ! 頼られたのおおおおお! うっれしいいいいいいいいいいい!!」
ひゃあ! と喜びの舞を踊る母に、リュージは苦笑した後。
「じゃあ、いってきます」
「はい、いってらっしゃい!」
リュージは自分の仕事へと、、向かうのだった。
お疲れ様です!
次回もよろしくお願いします!
ではまた!