34.邪竜、魔王四天王をブレスで消し炭にする【後編】
ミミックからゲットした黒い宝珠に、息子とシーラが吸い込まれた。
最上級転移を使って、息子達の居場所まで飛んだ。
と思ったら、そこには魔王四天王のひとり、ルシファーという悪魔がいた。
【GUUUUUUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!】
ルシファーが吠える。
びりびりッ!
と空気が振動した。
「痛いッ……!!!」
シーラが叫んで、その場にしゃがみ込んだ。
「シーラっ。どうしたのですかっ?」
カルマは慌てて、シーラの側にかけよる。
「あ、え……。聞こえないのです……。カーサン……」
「鼓膜が破れてますね。すぐに治癒を!」
カルマは最上級の光魔法(治癒魔法)をかけようとした。
だが、今は弱化魔法をかけた状態だ。
これでは邪魔でシーラの治癒ができない。
弱化の魔法を解除しようとしたそのときだ。
【GUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!】
上空にいたはずの、ルシファーが。
カルマ達の、すぐ側まで高速で移動してきた。
「まずい! カルマ! 逃げて!」
神速でチェキータが、いずこからかナイフを取り出し、それをルシファーに放る。
凄まじいスピードでナイフが飛ぶ。
ナイフは1本だったが、それが2本、4本、8本……と空中で倍々に増えていった。
無数のナイフがルシファーの体に刺さる。
だがそれを物ともせず、【GAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!】
ルシファーはその巨大な腕をふるい、チェキータを払いのける。
「キャアッ……!!」
「チェキータ……!!」
カルマが叫びがこだまする前に、チェキータは吹き飛ばされ、遺跡の壁に激突する。
「ガハッ……!!」
チェキータが血を吐いて意識を失う。
「チェキータさんっ!」
耳から血を流してるシーラが叫ぶ。
鼓膜が破れ、音が聞こえずとも、目で今の光景をとらえることができた。
「…………」
ドクンッ……! と、心臓が、体に悪いはねかたをした。
壁に埋まるチェキータ。
吐血し、意識を失っている。
……死んでいたら、どうしよう。
と、そのときだった。
「カーサンっ! チェキータさんっ! シーラぁ!」
と、上空から、息子の声がするではないか。
「!! りゅー君っっっ!」
見上げると夜空に、リュージがいた。
何か緑色の、四角い結界のようなもののなかに、リュージがいた。
良かった……無事で……と思うのもつかの間、すぐに状況を思い出す。
シーラは鼓膜が破れ、チェキータは瀕死。
眼前には、魔王四天王。
そして頭上に、息子。
息子は、泣いていた。
チェキータ、そしてシーラが傷ついた姿を見て、涙を流していた。
「…………」
カルマは怒りの頂点にいた。許せなかった。
嫁候補の鼓膜を破ったこと。
チェキータを、傷つけたこと。
そして何より許せないのは、息子に悲しい思いを、させたこと。
このクソ害虫野郎に対して、カルマは深い、深い怒りを抱いた。
【GYUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!】
悪魔が狂ったように叫ぶ。
そして巨人のごときその腕を、カルマめがけて、振り下ろす。
ずどぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!!!
爆音。地震。
衝撃による余波で突風がふいた。
「カーサンさんっ!」
「カーサンっっ!」
頭上で息子が、背後でシーラが、カルマの名前を叫ぶ。
まさかやられたのでは……と思った、そのときだ。
「安心なさい。お母さんは、無事です」
土煙の奥から、カルマが姿を現す。
そう、カーサンではなく、カルマだ。
顔にかけていた、認識阻害の魔法が付与されているメガネは、取り外されている。
否。衝撃でメガネが吹き飛んだのだ。
認識阻害が解けて、息子達の目からは、カルマの姿がはっきりと見えているはずだ。
「か、カーサン……え、母さん……母さん!?」
上空にいる息子がびっくり仰天している。
無理もない。
さっきまでいた冒険者が、母になったのだからだ。
カルマは弱化の魔法を解くと、まず……謝った。
「りゅー君。ごめんなさい」
「えっと……何を?」
「諸々です。今は時間がないので、取り急ぎ。あなたを後回しにするご無礼を、お許しください」
カルマはそう言うと、手を伸ばす。
最上級の回復魔法を、遠隔で、チェキータにかける。
チェキータの吐血の跡が消え、顔色が戻り、意識が回復する。
「……カルマ。あなた」
「…………」
次にカルマは、くるり、と身を反転させ、まずはシーラの元へ行く。
「大丈夫ですかシーラ」
カルマはシーラに、最上級光魔法を発動させる。
肉体の修復を行う回復魔法を使い、シーラの鼓膜が復活する。
「あ、ありがとうなのです……カーサン……えと、カルマ……さん?」
シーラも困惑しているようだ。
まあそうだ。目の前にいたカーサンが別人になったら、それは驚いても無理ない。
【GUUUUUAGAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!】
悪魔が叫ぶ。
先ほどの一撃でカルマをしとねそこない、機嫌を損ねてしまったらしい。
「黙れ」
カルマはルシファーに向かって、ひとこと、そう発した。
これは別に、スキルでも何でもない。
単に怒りを込めて、黙れ。
そう言っただけだ。
【………………!?!?!?!?】
それだけでルシファーは、萎縮してしまった。
体が震え、声が出ていない。
自分が声を出さないことに驚いてるようだ。
「シーラ。チェキータをつれて、できるだけ私から離れてください。できますか?」
きわめて優しい声音で、カルマがシーラに言う。
シーラはコクコクと震えながらうなずくと、チェキータの側へ行く。
監視者エルフに肩を貸し、シーラがカルマから離れる。
【GU……GUGAAAAAAAAAA!!】
恐怖から立ち直ったルシファーが、カルマめがけて、左手を突き出す。
すると手から激し雷が出現。
ズガガガガガガガガガガ……………………!!!!
と千の雷があたりに落ちる。
「うるさい」
カルマは左手に黒い雷を宿し、ルシファーの出した雷に触れる。
パキィイイイイイイイイイイイイイイイイイン………………!!!
と、千の雷は、カルマが触れただけで、消し飛んだ。
カルマの神殺しのスキルの一つ、【万物破壊】。
あらゆる物を消滅させる雷を使い、ルシファーの雷を打ち消したのだ。
【GUGAAA…………】
困惑するルシファーをよそに、カルマはテレポートを使って、上空へ移動。
「大丈夫ですかりゅー君」
息子を包んでいた結界を、【万物破壊】で壊し、リュージを救出。
お姫様だっこをして、カルマはそのまま、地上へ降り立つ。
「う、うん……」
「そう。良かった。お母さんちょっと、やることがあるので、謝るのは後で良いですか?」
カルマは息子を下ろす。
ビクッ……! とリュージが体を縮めると、「う、うん……」
と青い顔をしてうなずいた。
「本当にごめんなさい。あなたを怖がらせてしまった、罪深き母をお許しください」
「そ、そんな僕、怖がってなんて……」
と言いつつも、息子の足は震えている。
優しい子だ。怖がっているといってしまったら、母を傷つけるとわかっているから、嘘をついたのだ。
我が子へ申し訳なさと、そして優しい子に育ったことに対して、うれしさを覚える。
「離れてください」
「う、うん……」
息子がシーラ達のいる場所まで移動する。
カルマは無属性魔法【結界】を発動させる。
結界がリュージ達を包み込む。
カルマは「変身」とつぶやいて、邪竜の、本来の姿になる。
【GIGIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII………………!!!】
その瞬間、ルシファーが悲鳴を上げた。
その場に出現した邪竜の姿に、恐怖し、おびえていた。
【貴様に慈悲はかけん】
カルマは大きく息を吸い込む。
魔力を体の中で燃やす。
邪神を食らい、手に入れた無尽蔵の魔力。
その全てを、残さず使ういきおいで、炎へと変換させる。
カルマは大きくのけぞり、そして。
ルシファーに向かって、はき出す。
邪竜の、最大級の、息吹を。
【私の大切なもの、傷つけてるんじゃあねええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!】
ゴアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!
破壊の光線と化した邪竜のブレスは、凄まじい勢いでルシファーへと押し寄せる。
【GI】と、悲鳴をあげる暇もなく、巨大な悪魔は、ブレスに飲み込まれ。
そして……跡形もなく……消滅したのだった。
お疲れ様です!
ルシファーようやく出せました。
秒で消し炭になりましたが、出番はちゃんとこの後、用意してます。
次回で三章終わると思います。そしてその次からは新展開に入る予定です。
ではまた!