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冒険に、ついてこないでお母さん! 〜 超過保護な最強ドラゴンに育てられた息子、母親同伴で冒険者になる  作者: 茨木野
3章「遠征編」

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34.邪竜、魔王四天王をブレスで消し炭にする【前編】

お世話になってます!



 擬態宝箱(ミミック)を倒した、数分後。


 カルマは息子達とともに、トラップ部屋から離れた場所にいた。


「リュージさんシーラさん、見てくださいこれっ!」


 カルマは息子達に、先ほどゲットしたものを見せる。

 

 黒い宝珠だ。


「キラキラしててきれいなのです……!」


 シーラが宝珠を見て目を輝かせる。


「あんな何重にも罠がかかっていた箱の中に入っていたのです。お宝に違いありません」


 カルマは息子に喜んでもらいたかった。


 宝を見つけて喜ぶ息子を……見たかったのだが。


 リュージは険しい表情をしていた。


「どうしたのですか?」


「ええっと。……なんだか、とても嫌な感じがするんです」


「嫌な感じ?」


 はて、と首をかしげるカルマ。


「はい。上手く言えないんですけど……なんかすごく、禍々しいオーラというか、言葉にできない嫌な感じがあります」


 息子が母の手に載る、宝珠を見てつぶやく。


 その顔は適当なことを言っているようではない。真剣さがあった。


 まあ息子が仕事に対して適当だったことはないのだが。


 カルマは宝珠を見ても、特に何も思わなかった。

 

 ただの黒い水晶だなくらいにしか思わない。


「うーん……。私は何も。シーラさんはどう思います?」


 と、そのときだった。


「!?」「!?」


 リュージと、そして、カルマは、同時に驚愕に目を開いた。


 先ほどまで、そこにいたはずの……シーラが。


「シーラっ!?」

「シーラさん!?」


 なんと……いなくなっていたのだ。


「シーラっ! シーラっ!!」


 リュージは声を張り上げて、仲間の名前を呼ぶ。


「シーラさんっ! どこへ行ったのです!?」


 カルマも気付けば、必死になって、ウサギ獣人の姿を探していた。


 背筋が凍るとはこのことだろうか。ぶわり、と額に汗が出る。


 先ほどまで……シーラはその場にいた。


 シーラは黙って消えるような子ではない。どこかへ行くときは、一声かける。


「消えちゃった! どうしよう! どうしようカーサン……!!」


「…………」


 涙を流すリュージを見て、カルマも同じ思いを抱いた。


 シーラが忽然と消えたことに、カルマは、深い喪失感を覚えたのだ。


 何より……息子が泣いている。


 そんなの……許さない。


「落ち着いてリュージさん……」


 カルマは、決意した。


 この後、リュージにとても怒られるだろうと。


 でも、そしないといけないのだ。


 使わないと、いけない場面なのだ。


【最上級転移(ハイパー・テレポーテーション)】


 これは、行ったことのない場所へも、テレポートすることのできるスキルだ。


 そう、行ったことがなくても、行き先を念じれば、そこへ行ける。


 シーラの場所へ行きたい、と強く念じれば、その場所へ転移することは可能。


 ……だが。


 使った後、まず間違いなく……バレる。


【最上級転移】は神殺しのスキルだ。


 つまりこれを使ったら、自分は神殺しの邪竜であると、母であると、判明してしまう。


 だがそれがどうした。

 

 息子の友達のピンチなのだ。


 ……否。


 息子の嫁候補が、ピンチなのだ。


「リュージさん……私実は」


 と、正体を明かそうとした、そのときだ。

「!」


 カルマの手に持っていた、黒い宝珠が輝く。


 するとその光が、リュージを包み込む。


「か、カーサンっ!!!」


 黒い光がリュージを包み、そして強く輝くと、


「リュージ……りゅー君っっ!」


 リュージはなんと、黒い宝珠に、吸い込まれていったのだった。


【最上級転移(ハイパー・テレポーテーション)】を即座に使う。


 今度は迷わなかった。


 リュージが宝珠の中に消えた瞬間、カルマはテレポートを発動させた。


 リュージとそしてシーラの場所へ!


 とただそう強く念じて、テレポートを使った。


 ……視界がゆがむ。


 ……そして。


 ……気付けば、大部屋にやってきていた。


「りゅー君っ!? シーラっ!」


 その部屋は王宮の謁見の間ほど大きい。


 特筆すべきは……天井が、なかった。


「屋内でしょここ……?」


 そのはずだが、天井には星空が広がっているではないか。


 どうよく見ても、本物の星にしか見えない。  


「そんなことどうでもいい! りゅー君っ!? シーラっ!」


 宝珠が輝いて、息子が吸い込まれたとき、カルマは悟った。


 あの宝珠の中に、息子も、そしてシーラも、吸い込まれたのだと。


 ゆえにふたりは同じ場所にいるはずだと思ったのだ。


 果たして……。


「シーラっ!!」


 まず最初に、カルマは倒れているウサギ少女を見つけた。


 それを見てカルマは……。


 ほっ、と。


 大きな、安堵の感情を抱いた。


 そしてシーラに駆け寄り、抱き起こす。


「シーラっ! シーラっ! しっかりなさい!」


「うう……あうう……か、カーサン、さん?」


 シーラの肩を揺すると、彼女はうっすら、目を開けた。


 カルマはホッ……と心からの安堵の吐息を漏らす。


「よかった……無事で……」


 その言葉は、自然と、口をついた。


 ウソ偽りなく、心に抱いた言葉を、そのまま言葉にしたら、さっきのとおりになった。


「! りゅー君っ!」


 シーラの無事の次は、もっとも大事な息子の番だ。


 カルマは辺りを見回す。


 すると……。


 天井の、夜空に。


 何かが……浮かんでいた。


「なんです……あれ?」


「巨大な……悪魔?」


 果たして夜空に浮かんでいたのは……仰ぎ見るほどの、巨大な悪魔だ。


 黒い、禍々しい鎧を着込んだ巨体。


 側頭部からは山羊のねじれた角が生えている。


 尻の部分からは鏃のついた長い尻尾が伸びており……その威容はまさしく悪魔そのものだ。


 悪魔の顔は見えない。


 その顔は鎧と同じデザインの鎧兜(よろいかぶと)に覆われている。


 空に浮かぶ悪魔を、呆然とみていたそのときだ。


「逃げなさいッ!!!」


 と、カルマの目の前に、監視者のエルフが出現したのだ。


「チェキータあなたどこから」


「カルマ! テレポートで逃げなさい!!!」


 珍しくチェキータは焦っていた。


「あれは……魔王の部下。魔王四天王のひとり! 右方のルシファーよ!!!」


 

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