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33.邪竜、トラップをものともしない【後編】



「さてでは宝箱を開けてみましょうか」


 息子達と無事を確かめ合い泣いた後、カルマは再度、部屋の中にやってきていた。


 床が抜けるトラップ付き。


 ということで、カルマのみが、ジャンプして、宝箱の上に飛び乗った。


 息子達には、部屋の外で待機してもらっている。


「本当に1人で大丈夫ですか?」


「だいじょうぶです。カーサンにおまかせあれ」


 カルマはよいしょ、と宝箱の前に降りる。

 どうやらこの宝箱、柱の上に乗っているらしい。


 この柱の上なら、床が落ちるトラップは発動しないらしい。


「さて、どんなお宝が入ってるのでしょうかね。楽しみです」


 別に自分が宝箱を楽しみなのではなく、お宝を発見して、喜ぶ息子を見るのが楽しみな、カルマであった。


「あの……カーサン、気をつけてくださいね……」


「…………。え、なんだって?」


 カルマは耳に手を当てて、息子の方に耳を突き出す。


「聞こえませんでしたっ。もっと大きな声でっ」


「えっと……。カーサン! 気をつけてください!」


「聞こえませんでした-! もっと大きな声で-!」


 と今のやりとりを3回ほど繰り返した。息子が心配してくれる。プライスレス。


 さておき。


「さーてご開帳っと」


 宝箱に手をかけて、カルマが蓋を開けようとする。


 ガチッ!


 と、蓋が開かなかった。どうやら鍵がかかっているらし「ていっ!」バキィッ……!


 力尽くで、カルマは鍵付きの蓋を開けた。

「か、カーサンいまバキッて……」「なんか鍵がかかってましたね」「過去形!?」


 蓋をヨイショッと押し開ける。


 すると……。


 プシャアァアアアアアアアアア…………!!!


 と紫色の煙が、カルマの顔にかかる。


「ど、毒ガス!? カーサン大丈夫!?」


「え、あ、はい。普通に」


 息子曰く毒ガスのそれが、カルマにかかったが……別にどうも感じなかった。


 なにせカルマの身体は、邪神を食らって得た超強力ボディ。


 毒ガスなんてまったくきかなかった。


「良かったぁ……」


 とリュージが安堵する。


 そして気付く。


 やばい、部屋の外にガスが漏れるかも!


「息子達に毒ガスを吸わせるわけには行きませんね! こぉおおおお…………!」


 カルマが息を思い切り、吸った。


 あたりに充満していた毒ガスが、すべて、カルマの体内に吸い込まれる。


 ごくん、と毒ガスをすべて吸い込んで、身体に取り込んだ。


「よし、これで大丈夫。ガスは取り除きました。安心してください!」


 カルマがグッ……! と指を立てて、息子に無事を知らせる。


「なんか……もう……なんか……」


 へたり、とリュージとシーラがその場にへたり込んでいた。


「毒ガストラップまであるんですか。ずいぶんと厳重な警備ですね。これはお宝の香りがしますよ」


 カルマは宝箱の中を見やる。


 観察して以下のことがわかった。


 まず、宝箱の中には、黒い宝珠がひとつ、入っていた。


 次に箱の縁にだが……。


「ん? なんか歯みたいなのがついてますね。牙というか……。宝箱に牙?」


 装飾にしてはおかしいな、と思った、そのときだった。


 がたがた……。


 と宝箱が震えた。


「カーサン! 逃げてっ!」


「へ?」


 そのときだ。


 宝箱がぶるぶると震えると、次の瞬間、カルマに襲いかかってきた。


擬態宝箱ミミックだ! 逃げてっ!」


「へ?」


 パキィイイイイインッ!!!


「た、宝箱がカーサンさんの身体にかみついた瞬間……ミミックの歯が粉々になったのです!!」


 カルマは歯が取れた宝箱を見て、ああ、と思う。


 どうやら宝箱に擬態したモンスターだったらしい。


 だがカルマの頑丈な身体に噛みついたので、歯が耐えられなくなり、壊れたみたいだ。


「硬いダイヤモンドをかめば、歯が痛むみたいな、そういう理論ですね」


 歯なしとなり、普通の宝箱になったミミックを見て、カルマがつぶやく。


 ぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶる…………!!!!


 と、擬態宝箱ミミックが、震えていた。


 何に? なんて言うまでもなかった。


 目の前の化物カルマを見てだ。


「さて宝箱さん」


 カルマがしゃがみ込むと、ミミックはびくぅっ! と身体を萎縮させた。


「私は別にモンスターを倒して経験値を得たいとは思ってません。だからあなたを倒す必要はないわけです」


 ミミックの震えが止まった。


「おとなしく箱の中身を渡しなさい。さすれば許してあげましょう」


 カルマがそう言うと、ミミックは蓋をあんぐりと開けて、箱を傾ける。


 ころり……と宝珠が床に落ちる。


 そして……ころり、と宝珠がもうひとつ、落ちる。


「2個宝珠が落ちましたね? って、あれさっきは1個しかなかったのでは?」


 カルマの両手には、ふたつの宝珠が握られていた。


 ひとつは黒い宝珠。


 先ほど宝箱の中で見かけたやつだ。


 もうひとつは……赤い色の宝珠だ。


 宝珠の中には、炎のようなきらめきがあった。


 赤い宝珠は、カルマが手に持った瞬間……カタカタカタカタ……と震え出す。


「あ、やべ」


 カルマは悟った。


 これ、爆発するやつだ。


 キイィイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!


 と激しい音と光を発しながら、赤い宝珠が震え出す。


 このままではこの宝珠、爆発してしまうだろう。


 それに対してカルマは……。


「てい」


 ごっくん。


 と、カルマは大きく口を開けると、赤い宝珠を、まるまる、飲み込んだ。


「……………………」


 ミミックが、蓋を全開にした状態で、カルマを凝視している。


 まるで……信じられない規格外の化け物を見たような、反応だった。


 お腹のあたりで、ずずん、と違和感がする。


 たぶん宝珠が爆発したのだろう。


「けぷ」


 とカルマが可愛らしくげっぷをする。


 口の端からは黒い爆煙が漏れていた。


「あー……。さて、ミミック君」


 カルマは擬態宝箱ミミックを見やる。

「きみ、自爆して私を殺そうとしましたね」


「…………!」


 ミミックがびくびく! と身体を震わせる。


「まあ私に危害を加えようとするのはいいです。ですが……」


 カルマは怒りで身体を震わせる。


「あなた……ここで自爆したら、部屋の外にいる息子達にまで……被害が及んでいましたね……」


 カルマの怒りは臨界点を突破していた。


 カルマがもっとも怒るのは、愛するちょうだい好きなラブリーマイ天使リュージを、傷つけられること。


 カルマは宝箱に手を乗せる。


 そしてそのまま、宝箱を持ち上げると、


「息子に手を上げたなこのクソ宝箱がぁああああああああああああ!!!!」


 グッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!


 と、擬態宝箱を、地面に思い切りたたきつけた。


 宝箱は地面にぶつかり、粉々になる。


 本来なら万物破壊のスキルで消し炭にしたいところだが。


 それを使うと、カルマであることを、息子にバレてしまう。


 だから使わなかったのだ。感謝しろよ、と粉々になったミミックに言うカルマ。


 さて。


「リュージさーん。この部屋、なんともなかったですよー」


 ひょいっ、とカルマがジャンプして、部屋の外へと出る。


 そこには息子達がへたり込んでいて、身動き取れないでいた。


「どどどど、どうしましたふたりともーーーーーー!!!」


 ずしゃあああ…………! とカルマがその場に膝をついて尋ねる。


「ああ、うん。なんか……ね?」

「び、びっくりしすぎて……腰が抜けちゃったのです……」


 どうやらトラップの連続に、息子達は驚きすぎてしまったらしいのだ。


「トラップに驚いたのですね。トラップを見るのが初めてだったなら驚いてもしょうがありません」


「え、いやぁ」「ええと、違うのです……」


 リュージ達は首を振るう。


「おやでは何に驚いたのです?」

「「…………」」


「そんな熱心に見られたら、照れちゃいますよぅ」


 かくしてトラップの連続を、カルマは余裕で切り抜けたのだった。

お疲れ様です!


明日も頑張って更新します!


ではまた!

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