Mission8-6
何もない虚無。
黒い黒い世界……。
そんな中に、俺とジンライは落ちていった。
「なあ、博士がお前産んだのか?」
俺はどうしてもそこが気になっていた。
ジンライがしきりにママといって慕っていた母親の存在。
それはてっきり、ディルだと思っていた。
だけど、先程のディルの話を思い出してみると、どう考えても博士が産んだことにしかならない。
「そうだけど?俺は……ジンライという生物は、父は雷の大魔導士ライそして愛しの母は異世界からやってきた最強の魔導士である天野翔琉ママなのだよ」
「え?でも、博士って男じゃん?子供産めなくない?」
「まあ、翔琉ママがお腹を痛めた末に俺が生まれたわけではない。正確には、ライパパが魔法でライパパと翔琉ママの血をあわせて作ったのが俺なんだ……だから、俺は作られた生命体ってやつだな」
「あ……」
ジンライも俺と同じ境遇なのか。
誰かによって作られた存在……。
「だから、ジェット。お前の出生の話を聞かされたときは他人事には思えなかったんだぜ」
「そうだったんだね……」
「まあでも、俺は作られたことには感謝してるんだ。例えそれが利用されるために作られたのだとしても、こうして誰かを愛する心が宿っているからね」
「俺もだ。俺、この戦いが終わったら結婚するんだ……」
「それ死亡フラグだからやめろよ」
「それもそうだな」
俺とジンライは意気投合した。
なんだか、最初は殺しあっていたのに、こうして仲良く話せると楽しいな。
「それにしても、これ……どこまで落ちるんだ?」
「分かんないな……翔琉ママ‼どこにいるんだぁぁぁ??」
「博士!!どこですか??」
俺とジンライは虚空に向かって叫ぶ。
だが、帰ってくるのは空間に響き渡る俺とジンライの声だけだった。
「博士!!」
「翔琉ママ!!」
そうすると、正面に光が見えた。
あそこにいけばいいのか?
「ジンライ、あそこにいくぞ!」
「おうよ!」
俺たちは光へと向かった。
そして、その先に博士はいた。
だが、博士は普通の状態でそこにいたのではない。
黒い結晶に閉じ込められていたのだった。
「翔琉ママ‼まってて、今助けるからね‼」
そう言ってジンライは黒い結晶に魔法を当てようとした。
だがその瞬間、結晶が闇の光を放ち、天野翔琉の姿に変身したのだった。
「あははは♪」
「その笑い声は……アマギ!!」
対峙した闇の結晶でできた天野翔琉は、アマギの声、そして笑い声を出していた。
そして、本物の天野翔琉はといえば、闇の結晶の奥にできた、柱に固定されている。
さながら、キリストの磔のようにされており、未だに苦しそうに眠り続けている。
「アマギ‼翔琉に何をした‼」
「あははは♪そう吠えるなよ、ジンライ。俺は翔琉が外的治療を受けるのを邪魔してるだけだぜ」
「やはりお前が……‼」
「そう落胆するなよ。俺を倒せば天野翔琉は救えるっていう超ご都合主義設定にしといてやったんだから、感謝してくれよ」
そう言ってアマギは、黒い結晶の身体から、邪悪な光を放ち始めるのだった。
そして、俺たちの方に手を向けると、魔法攻撃を開始したのだった。
「ほらほら、逃げ惑え」
手から放たれる光弾は、留まることを知らず数多に渡って襲いかかる。
ジンライは魔法でガードし、俺は弾丸を当てそれぞれ迎撃する。
だが、あまりにも数が多いため、俺とジンライは次第に押され始める。
「あははは♪どうした?おしまいかい?」
光弾は更に激しくなる。
俺とジンライは、とうとう押し負けてしまう。
「うわ‼」
「くっ……‼」
弾かれた俺たちは後方へ飛ばされてしまう。
仕方がない……。
あの技をやるか。
「喰らえ、アマギ‼奥義‼億念断罪‼」
そう言って俺はアマギに向けて、攻撃の始まりとなる弾丸を放つ。
だが、その弾丸はアマギの結晶ほ身体には通じず弾かれてしまった。
「ジェットくん。その技は前に一度見てるからね……だからこそ、この結晶の身体なんだよ♪」
「……ってことは、お前……あの時俺に話したことを覚えているか?」
「ん?あの時?はて?あの時はたしか、君に倒されて……それで……あれ?なんだろ?この霧にかかったような感じ……あれ?」
「覚えてないのか?」
そう俺がアマギに問い続けると、アマギは次第に頭を抱え始める。
隙ができた。
「ジンライ‼」
「神魔法:光天神発動‼光の魔法:神之憤怒‼」
ジンライの発動した光の波状に広がる魔法攻撃はアマギに当たる。
だが、アマギは結晶の身体。
つまりは、プリズムである。
プリズムとはガラスなど透明体の三角柱で、光を屈折・分散させるもののことをしめす。
その結果、ジンライの放った光は辺り一面に分散した。
だが、そのお陰で黒く覆われていた空間が光に満ち溢れた。
「そうか……さっきのは、俺の油断を……そうだ……きっとそうだ……」
アマギは、笑いながらこちらをギロリと睨み付ける。
だが……。
「アマギ、お前の敗けだ‼」
「何をいう?まだまだ、これからだよ……」
「いや、終わりだ……俺たちの役目は終わったんだ……」
「はぁ?何をいって……」
バタン……と、なにか大きなものが倒れる音がする。
それはなにか……アマギは、恐る恐る後ろを見ると、そこにあった……否、そこにいた眠っていた天野翔琉博士の姿が無かったのだ。
「そんな‼まさか‼」
そう言ってアマギは、辺りを見回す、すると空間の遥か上空に光が見える。
そして、その光はだんだん強大な光となってアマギを襲う。
「ふん、ばかめ!俺の肉体が結晶だ‼光の攻撃である限り、俺には傷ひとつも……ってあれ?」
アマギの腕はぼとっと取れた。
切断されたんじゃない。
あれは、溶けてるんだ。
「な、なぜだ……」
「結晶っていうのはね……」
そう言いながら上空から飛来する男が現れた。
先程のジンライ同様に、光天神状態と言えるべき光に包まれたその男は天野翔琉博士だった。
「か……か、け、るぅぅぅぅ‼」
「ある特定の温度になると、溶解する融点……ってのを持っていてね。それを意図も簡単に光で行うには、太陽光を濃縮させればいいのさ……だから、アマギ……君に今やっているのはまさにそれってわけ」
「くそぉぉぉまたしても、またしても……お前ごときに……」
「邪悪な神よ……俺の精神から消え失せろ‼」
そうして、超高密度な光に包まれたアマギの肉体は完全に融解し、邪悪な存在は消え去ったのだった。
「翔琉ママぁぁぁぁ‼」
ジンライは、あの巨体からは想像できないようなスピードで博士を押し倒し、彼にぎゅっと抱きついた。
「よしよし……もう大丈夫だからね」
「翔琉ママぁぁぁぁ死んじゃうかと思ったよぉぉぉぉ」
「よしよし……」
博士は起き上がり、ジンライの頭を優しく撫でていた。
そして、俺の方を見てにこりと笑う。
「ありがとうジェットくん。いや、ツバサくんと呼ぶべきなのかな?」
「いや、天野ツバサの名は捨てる……これからは、コードネーム通りジェットで通すつもりだ」
「そうなのかい……じゃあ、君は自分の真実を知って受け入れることにしたんだね」
「はい。もう、後ろめたい気持ちは何もないです……それに、この戦いが終わったら結婚するんで」
「それ、死亡フラグだから‼」
「ジンライにも言われましたよそれ」
そう言って俺と博士、そしてジンライは思わず笑ってしまった。
「さあて、んじゃ外にいるアマギを倒しに戻りますかねぇ~」
「そうですね」
「その前に、翔琉ママの回復が先‼外の肉体、瀕死の状態なんだから……」
「そうだったね……んじゃ、戻りますかね」
そう言って博士がパチンと指を弾くと、世界は光りに包まれて目の前が真っ白になった。




