Mission7-2
「なんだか、呆気なかったわね……ルート」
「そうね、ミランダ……」
「なんにせよ、殺せたんだから大丈夫でしょ?」
ジェット……天野ツバサの自室にて、2人と1匹は、この部屋の主の死体を眺めながらガールズトークをしていた。
死体は、首が切り落とされており、血が滴っている。
じわりじわりと、その赤い液体は絨毯を染めていく。
「さてと、死体……どうしよっか?」
「とりあえず、焼却施設に捨てとく?」
「いや、さすがにゴミみたいに扱うのはダメでしょ。火葬しましょう、火星だけに……」
「くそも、面白くねぇな」
「そう言わないでよ……ってあれ?今誰が言ったの?」
「私でもないし、ミアでも……って、ちょっと……ミランダ……死体が……」
「えっ??」
先程までそこに存在していた、この部屋の主の死体は、聖なる光を放ち、すべての傷、そして首が切り落とされていた現象事態が、まるで無かったことにされたようにして、復活し立っていたからだ。
「うぃーっす、黄泉の国から帰ってきましたよっと……」
「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ???」」」
ルート、ミア、ミランダは悲鳴に似た叫び声をあげていた。
普段冷静沈着である彼女たちでさえも、俺のこの状態には驚きだろうな。
「んじゃ、そういうことで!!」
と、俺は彼女たちが驚いている隙に部屋から逃げ出すのだった。
天野翔琉博士の居る場所、ルルイエの神殿へと向かうために、転送装置のある部屋へと俺は駆ける。
急がなければ……。
【緊急警報、緊急警報……施設内の異常を検知したため、すべての施設のアクセスを200秒後に停止します。直ちに安全地帯へと避難してください。繰り返します……】
このように警報が発動してしまうからだ。
ルートの仕業だな。
くそ、武器一式全部置いてきちまったよ。
取りに行ってる時間はねぇな。
「天野翔琉博士が一回だけ使えるようにしてくれた空間魔法は出来れば奥の手に取っておきたい。えっと、あと200秒でってなると……‼」
その時、目の前から銃弾が飛来する。
俺はとっさに後ろに飛んで、それをかわす。
弾丸の飛んできた方には、ルートの独立精鋭部隊が展開していた。
「ジェット殿。ルート隊長の名により、ここであなたを殺します」
独立精鋭部隊リーダーは、そう俺に言う。
内心、彼らはそんな気は毛頭ない。
何故ならば、本気で俺に勝つ……と言うよりかは、俺を本気にさせず足止めをすることが目的なのだ。
その隙に、施設のアクセスを全てシャットダウンさせて、合流したルートたちと共に俺を捕縛して確実に殺すのだろう。
暗殺者として、そんな事は定石通りだ。
確実に殺す任務……そして、被害を最小限にするにはその方法が一番良いだろう。
くそ……どうすれば。
『おーい、ジェットくん。聞こえる?』
ん?この声は……博士?
『そうだよ。翔琉だよ。せっかく空間魔法使えるようにしてあげたのに、即座に使わないのは賢明だけど……はて、何でそんなところで止まってるのかね』
「こちらは、武器なしなんですよ。向こうは武器ありのプロの戦闘集団。どうしろと?」
『まあ、任せなさーい。俺と魂をリンクさせてくれる?』
「リンクって……なにさせるんだよ」
『君に今必要なのは武器……ならば、俺がその武器を創造して君の元に召喚してあげる』
「もう、本当にあなたは何者なんですか」
『いいや。普通で普通な男だよ……』
そう言って彼は、俺の魂をリンクさせ、俺の思考を読み始める。
そして、俺が欲しいと思った武器を創造してくれた。
それは、直ぐ様俺の手元に光の結晶となって現れた。
「こ、これは……」
『スナイパーライフル……。弾丸は無制限に撃てるから、心配しなくていいよ』
「翔琉博士……こんど、射撃教えますよ。射的行きましょ?」
『あはは、それは面白そうだね。じゃあ、頑張れ……ジェットくん』
「はい‼」
光でできたスナイパーライフル。
こんな凄いものを、遠距離で簡単に創造できるだなんて……やはり、翔琉博士はすげぇ人物だな。
【施設閉鎖まで、あと100秒】




