Mission6-5
異空間での戦闘で、俺は邪神と呼ばれた少年を打ち破ることに成功した。
でも……なんども何人も殺してきた俺だから言えることだけど、なんか殺したあとって、頭のなかにもやっと、なにが立ち込めるような感覚に襲われるんだ。
何て言えばいいのかわからないけど、例えるなら後味の悪さってやつ。
もやもやとした、この暗い感情は悲しみなのか、哀れみなのか、虚しさなのか……それとも許しを求めているのか。
分からないもんだな。
だけど、今回はそんなもやっとした感覚がなかった。
なんでだろうな。
「ふう……さてと、ディル。やつを倒したから、出してくれ」
と、虚空の空間に俺は声を投げ掛ける。
この空間の持ち主であるディル以外に、俺は抜け出せないな。
「おーい、ディル?」
【聞こえてるわよ、ジェットくん】
「ならはやく……」
【それはダメ】
「は?」
何をいってるんだ?この女。
早く出せよ。
【しかし……恐ろしい銃撃もあるんですね……】
【あれはジェットの最強の近距離銃撃奥義『億念断罪』。本気の私ですら、切り伏せきれないほどの弾丸が一斉に襲ってくる超高等銃撃技術よ】
む?この声は白百合だな。
人の技を勝手に解説するなよな。
全くもう。
【ジェットは、まだあんな感じの技を、あと3種類と、最終奥義を残しているから、まだまだこんなもんじゃないわよ】
持ち上げすぎだぞ白百合。
流石に俺はそんなに技は有していない。
というか、所詮さっきのは武器だのみなのだから、俺自身のスキルじゃない。
あくまで磁力を帯びた銀製の弾丸を磁力の力で浮かび上がらせて、最後に相手に向かって永久磁石以上に強力な磁力を持つ特殊な弾丸を放っているだけだ。
空気に触れてから、2秒程でその超磁力を発揮する……故に、弾丸がその瞬間に一斉に襲ってくるのだ。
「いやいや、ほら早く出してくれよ‼」
そうだよ。
早く出せよ。
【駄目なんだって、ジェットくん……君を出すわけにはいかないね……】
「なんでだよ……なら、こっちから無理矢理出るぞ‼」
【ふふふ……またまたジェットくんったら、そんなこと出きるわけないのに……ハッタリ言っちゃって……】
「鏡弾:異空間破り」
持っていた【鏡弾】の弾丸を、俺は自らに向かって放った。
【鏡弾】……それは、敵の攻撃を反射する能力を付加された弾丸だ。
まあ、そういう性質のある金属を使った弾丸を用いているんだけど、今回それを自分に撃った理由としては至極明快だ。
相手の攻撃を食らっている自分に放つ、と言うことは、今自分がかかっている技を反射させる……つまりは、同質量の攻撃が発生するのだ。
その結果、何が起こるのかと言えば、同質量の攻撃と攻撃がぶつかり合い相殺……そして、攻撃は無に帰るのだ。
故に俺は今、脱出して、基地内の司令室に立っているわけなのだが……。
「なにこれ?」
という俺は、透明なカプセルに入れられていた。
そして、次の瞬間、カプセル内に麻酔薬が抽出され眠ってしまったのだった。




