Mission6-3
ディルによって、海から引き上げられた俺たちは拡張した彼女の空間に入れてもらった。
斬神夜弥の死体と共に、ディルはその場にいた。
彼女の話によると、斬神夜弥は神魔法の効力によって、光の中に消されてしまったらしい。
あのほぼオリジナルに近しい天野翔琉クローンの肉体と共に。
唯一残ったのは、アダムとイヴによって殺され、脱け殻になった肉体だけだった。
一方、邪神アマギは、白百合最強奥義によって、今や肉塊と表現するべき存在に成り果てていた。
「白百合……お前、前回の任務でルート隊長に言われてたのに……全壊どころか、消滅させちゃったじゃねーかよ……」
「やり過ぎちゃった、てへっ」
可愛くねぇよ。
怖いよ。
「さてと……この2人はどうするんだ?」
と、俺はディルによって別空間に切り分けられ封印されている2体の獣……アダムとイヴの処遇について、ディルたちに尋ねる。
天野翔琉を守護するために作られた、合成獣。
基本ベースは人間なのか?それとも……。
「俺たちは」
「私たちは」
「「お前らなんぞに屈しないぞ」」
と、獣どもは声を揃えて言う。
その空間の方へ、白百合が歩み寄っていき、刀を納刀し……って、まさか。
「白百合!もうそれはやめろ!」
「あ、いっけない。なんか、イラッとしちゃって☆」
獣たちは、空間ごしではあったとはいえ、尿を漏らしていた。
そりゃそうだろう。
彼ら彼女らは、先程圧倒的な白百合の居合いを見てしまった。
そして、邪神とはいえ、神さえも復活できない程の肉塊に変貌させてしまったあの技を、もしも自らが喰らえばどうなるか……予想がつくだろうね。
「んじゃまあ、火星に戻りますか……」
と、俺は帰還要請を火星の本部へと送った。
だが、反応がない?
「あれ?もしもし……こちら、ジェット。本部、ルート隊長?応答願います。おーい……ん?」
「どうしたの?ジェット」
「本部に連絡がつかない」
「え?どう言うこと?」
おかしい……ルート隊長が出られない場合は、他の職員が対応するはずなのに。
何故だ?
「おっと、ジェットくん。あれだったら、向こうにはジンライがいるから、魔法で転移できるけど?」
「え?本当か?ディル」
「ええ。私とジンライは空間魔法を使えるから、相手の存在が確認できれば、そこまで転移することは可能よ」
そう言ってディルは、にこやかに指をならして、火星まで転移して見せた。
こうして俺たちは無事に火星に着くことが出来た。
だが、この火星は、火星基地は今、壊滅状態になっていたのだった。
「な、なんだよこれ……」
辿り着いたのは、指令室。
モニターは破壊され、普段ここにいる職員は惨殺され、そしてジンライがルート隊長とミランダ博士、それからミアを結界で侵入者から守っていた。
その侵入者とは……。
「おっと、ジェットくんたち。遅かったね♪」
そうにこやかに微笑む、邪神アマギだったのだった。
「なぜお前が生きているんだ!」
と、白百合は納刀した刀を強く握りしめていた。
すると、アマギは言った。
「あー、どうやら僕の分身体を倒したようだね……まあ、所詮は100分の1くらいの力しか出せないように設定してたからね♪」
「あの……あの強さが、100分の1?」
白百合は思わず持っていた刀を落としてしまった。
100分の1の強さ……あのレベルが?
「さて……ジンライ。お前との遊びは飽きたから、僕はジェットくんと遊んでくるから、じゃあねぇ~」
パチンと、指をならすと、ジンライは全身から血を吹き出して倒れた。
と、同時に結界は解かれた。
「ジンライくん!しっかりして!……この症状……エボラ出血熱?いま、血清を……」
と、ミランダは迅速に処置を進める。
俺はといえば、邪神アマギと対峙する。
「おや?ジェットくん。全く、臆してないね♪あは♪流石は、あの糞みてぇな天野翔琉の血統だな」
「それはよく分からないけど、俺の仲間を守ってくれたジンライがここまでボロボロに頑張ってくれたんだし……なにより、職員を惨殺されたことに対して、お前はなんにも反省してないみたいだし……仕方がないよね。こんなにも、俺はキレてるんだから……。ディル、みんなをつれて、ここから離れて。いや、俺とこのアマギを別空間に移動してもらっていいかな?じゃないと、火星どころか、太陽系を破壊してしまいそうなくらいの兵器使いそうだから……」
ゾクッと、殺気ににた笑みを受けたディルは、一筋の汗を垂らした後、無言で俺たちを別空間に移動させた。
「さて、じゃあ邪神アマギ。フィールドも揃ったことだし……」
「うんうん♪始めますかね♪」
「コードネーム:ジェット……殺戮任務開始します……」
俺は懐にストックしてある武器をずらっと、地面に落とし、両手にハンドガンを持ち、戦闘を……否、殺戮を開始した。




