62話 今までに比べれば楽なものではあるけれど
村の内部(と言っても崩れかけてる柵の中というだけ)に突入する前に、射撃による制圧が行われた。
クロスボウに弓と武器は人それぞれだが、とにかくこれが当たる。
アオイをはじめとしてレベルを上げていた者が多く、放った矢のほとんどが命中した。
それでも無傷で残る者もいたが、序盤でモンスターを大きく削いだのも確かである。
モンスターもそれでヒロタカ達の接近に気づき、突進をしてくる。
遠距離攻撃で全てが倒せたわけではない。
まだ健在なものが多数残ってる。
それらが柵を隔てたヒロタカ達に向かってくる。
ヒロタカは堀を飛び越え、柵をまたいで迎え打つ。
難しい事では無い。
レベル8に到達してるヒロタカにすれば、犬頭を何頭か相手にするくらい大した事でない。
同じように続いてきた他の者達もいたので、戦闘らしい戦闘にもならなかった。
一方的な殲滅になる。
見えてる範囲にいた敵は、それで片付いてしまった。
モンスター除けをその場に設置して村の中に入っていく。
建物の中などはさすがに気をつけていったが、それも杞憂に終わった。
中にモンスターはいたが、それらも敵になる程では無い。
廃屋から飛び出してくれば一太刀で切り伏せられる。
ヒロタカ達が侵入してくるのを待ち構えるようにしていたものも、同じ結果に終わる。
村の中からモンスターが消えるまで一時間もかからなかった。
数で言うなら一百体以上はいたはずだが、それほど手間取りはしなかった。
一つにまとまって襲ってきていたら脅威だっただろうが、分散してあたってくるので大した問題にはならなかった。
一度に二十体や三十体であれば、普段相手にしてる数の方が多い。
ましてそれらを六人七人で対処している。
弓などによる援護ではない直接戦闘にあたってる者はその半分になる。
そんな事をしてる者が二十人ほどやってきてるのだ。
問題など起こるわけもない。
制圧を完了し、村の柵にモンスター除けを設置したところで作業の第一段階が終わった。
「それじゃ、呼んできてくれ」
待機してる者達への連絡を一組に頼み、ヒロタカはその場に残る。
粗方片付けはしたが、まだ村の中に残ってるモンスターがいるかもしれない。
それらを片付けねばならなかった。
村の周囲にある田畑などにネズミなどの小型モンスターが蔓延ってる事もあり、まだ油断は出来ない。
どこからどのように侵入してくるか分かったものではない。
「俺らは建物の中を探ってくるから、そっちは村の周りの堀を見ていってくれ。
部分的に埋まってる所もあるだろうし。
それに、柵も見て回ってくれ。
崩れてる所はいっぱいあるはずだから、場所を確認してほしい」
紙に略地図を書いて、どこの状態がどうなってるのかが分かるように記入させる事にする。
それからヒロタカは村の中の廃屋を調べてあるく事にした。
「頼むぞ、アオイ」
村の中、廃屋の探索では彼女を頼りにする事にした。
この中で探知などの技術にもっとも長けてるのは彼女だ。
「任せてください」
元気よく返事をするアオイは、廃屋の周囲を探り何かしら痕跡がないかを確かめていく。
さすがにレベルが高いと色々と気づくようで、廃屋の中にモンスターがいるかどうかをぴたりと当てていく。
また、物陰になる所も簡単に発見し、
「いるならここですね」
と指摘もしていく。
その精度たるや凄まじく、一見して分からなかった死角を簡単に見つけていく。
幸い、潜んでるモンスターは居なかったが、それらが要注意箇所になった。
更に足跡などから村への侵入経路も発覚。
堀や柵の崩れてる部分に留まらず、予想もしてなかった(しかし言われてみれば納得出来る)侵入経路も分かった。
一見すれば侵入不可能な場所も、移動の仕方次第で中に入ってこれるのが分かる。
それらが略地図に書き込まれ、今後の対応課題となった。
「こりゃ大変だ」
落胆は大きい。
手入れや補修は必要だが、それが結構な数になる。
それらをまともにやっていたら、かなりの労力と資材が必要になりそうだった。
だが、見つからないよりは良い。
何も知らずに今後も侵入を簡単にゆるすよりは、見つけて対応に追われる方がありがたい。
それらが終わり一通り見て周った所で残してきてた者達が到着した。
職人や作業員、そして資材。
村の再建に取りかかるための人員である。
それらの所に向かっていって、話を始める。
「それじゃあ始めてもらいたいんだが」
略地図を見せて補修箇所を提示する。
想定以上の多さに職人達も驚いた。
「こりゃあ手間がかかりますな」
「だよな。
でも、手のつく所からでいいからやってくれ。
まずは周囲の防御からで」
村の中にモンスターが入ってこれないようにしなければならない。
でなければここを拠点と出来ない。
「分かりました。
とりあえずこのあたりの大きな所を。
それとここからここの広い部分。
ここだけ防げ結構なんとかなるでしょう」
そうして作業が始まった。
村を取り戻した第一歩はこうして終わった。
あまりにも呆気なく。
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