16話 安全と利益のどちらも欲しいがどうするか
「おお、今日も稼いだみたいじゃないか」
「まあ、ぼちぼち」
そう言って成果を周旋屋の買い取りに持っていく。
「今日は、核が六十三個か。
前より増えてきたな」
「おかげさまで、どうにか」
適当に返事をしながら清算金をもらう。
「ほらよ」
「銀貨三枚に銅貨が三千七十五と」
普通に考えればなかなかの成果である。
一人銀貨一枚を超えている。
そこまでいきつけない冒険者もいる事を考えれば、ヒロタカ達はよくやっていた。
「ま、この調子で稼いでくれ。
こっちも助かるから」
「出来るだけ頑張りますよ。
でも、期待しないでください。
運が良いだけだと思うんで」
「運も実力のうちさ」
そういって周旋屋の職員は笑う。
その笑顔を背に受けて、ヒロタカは周旋屋をあとにした。
そのまま夜の町を抜けて町の外れへ。
そこにある自宅へと帰っていく。
門の横にある通行用の戸を開け、家の方へと向かう。
中に入ってすぐに出会った使用人に、他の者達がどこにいるかを聞いていく。
「皆さん、お食事中です」
「そう、ありがとう」
やはり先に食べてるようだった。
別に文句はない。
他の皆と同じく席に着き、さっさと料理を食べようとする。
そんなヒロタカに父が、
「凄いじゃないか」
と声をかけた。
「今日一日で一百五十体以上倒したんだな」
「ええ、何とか」
そう言ってヒロタカは今日一日を振り返る。
朝、一晩放置した罠に群がっていたモンスターを倒してからは、いつも通りに行動していった。
餌をつり下げてモンスターを集め、出向いてきたものを倒す。
その繰り返しで五十体以上の犬頭のモンスターを倒した。
そして、大量のモンスターを倒した場所へと向かう。
昨夜からずっと餌をつり下げていたそこには、昨晩と同様にモンスターが集まっていた。
日中という事もあってか、数は朝の時より多い。
それでも怯むことなくカズヤは突っ込んでいき、モンスターの全てを倒した。
その結果、が一百五十以上という戦果である。
駆け出し冒険者の出せる数字ではない。
入手した核の数もそれに見合ったものとなっていた。
もっとも、それをそのまま持ち込んだらちょっとした騒ぎになりそうだった。
なのでヒロタカは、さして目立たない程度の数だけもって売却しにいった。
全く成果がないのも注意をひく可能性になってしまう。
何事もほどほどに、他と大して違いのないあたりを呈示する。
その事で、無駄な注目や注意を集めないようにしていった。
危険視されている餌の一晩放置をしてるだけに、面倒に繋がりそうな事は避けたかった。
ただ、ある程度目安が見えてきたのも確かである。
一晩というか、半日ほど放置していればかなりの数のモンスターが集まる。
そうなると対処が面倒になるから、小刻みに倒す方が得策である。
しかし、もしそれだけの余裕があるなら、集まったところで倒しても何の問題もない。
核などの消費も激しくなるが、見返りは十分にある。
危険が全くないわけけはないが、見返りは十分にあった。
大分出遅れてしまったが、当初の予定通りの稼ぎに到達するのも難しくない。
今夜も仕掛けを新たに作って残してきている。
おびき寄せの罠は、二つになっている。
そこに明日どれだけ貯まっているかが楽しみにすらなっていた。




