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封縁乙女と学園の呪いたち  作者: コハレルギー
第五章 水の記憶

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最終話 帰る人数

 朝だった。


 山の空気は、少しだけ涼しい。星蘭たちは、裏山の道を下っていた。昨夜のことが、どこか夢のように感じられる。


 誰も、あまり話さない。ただ。歩いている。


 星蘭はふと、言った。


「……朱音」


「なに?」


「私たち」


 少しだけ迷って。言葉を続ける。


「何人でしたっけ」


 朱音が笑う。


「何言ってんの」


「三人でしょ」


 星蘭は足を止めた。


 三人。そうだ。三人だ。


 星蘭。朱音。そして――


「……」


 名前が。出てこない。


 星蘭は振り返る。朱音がいる。もう一人もいる。


 だが。その顔が。うまく思い出せない。


 星蘭は首を振る。


「いえ……なんでもありません」


 三人は山を下りた。


 誰も。おかしいとは思わなかった。


 その日の放課後。


 星蘭は校舎の脇を歩いていた。


 古い花壇。白い花が咲いている。あの花だ。


 星蘭は足を止める。


 甘い香り。夏の匂い。そして。どこか。冷たい水の匂い。


 星蘭は、ふと振り返った。


 そのとき。


 後ろで。足音がした。


 自分のものとは。違う。もう一つの足音。


 星蘭は振り向く。


 誰もいない。


 風が吹く。白い花が揺れた。香りが、ふわりと広がる。


 その香りの中に。かすかに。すすり泣く声が混じっていた。


 ――あの夜。


 帰れたのは。誰だったのだろう。


 そして。今。ここにいるのは。本当に。誰なのだろうか。


 白い花が、静かに揺れていた。


 夏の香りの中で。それは。水の記憶だった。



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