K.G.S.と“縁”の力
――わたし、新倉つばさは、今日、死ぬかと思った。
あの“鏡の部屋”で見た赤い目、歪んだ笑顔。這い寄る“わたし”たち。
そして、最後に現れたのは、漆黒の扇子を手にした美しき先輩──大杉玲子。
あれは夢なんかじゃない。現実だった。だからこそ、今もまだ、胸の奥がズキズキしてる。
朝。教室にて。
「……おかしいな。玲子先輩って、ほんとにいたよね?」
机に突っ伏してぼやくと、隣から美鈴が「いたでしょ」と呆れ声で返す。
「鏡の怪異も、あの除霊も……」
「信じられないけど、ぜんぶ、本物だったね」
その日の午後、旧校舎のある一室では──
久遠女学園 女学生霊学研究会(K.G.S.)
《縁封乙女報告書》 No.103
依頼名:旧校舎三階・鏡の異変調査
対象:鏡面に発生する擬態型怪異(擬似自己投影型)
状況:深夜、複数の生徒が“鏡の自分”に襲われる報告あり。現地にて封縁乙女・大杉玲子が対応。
対応内容:結儀式《鏡封映陣》を展開し、縁の歪みを制圧。対象の回収および封縁完了。
備考:一般生徒二名が現場にいたが、負傷なし。怪異への感応反応強め。今後も要観察。
【玲子の個人結儀式日誌 抜粋】
“鏡の縁”がひどく濁っていた。
一人の霊ではなかった。感情の澱が累積した集合体。
結儀式《鏡封映陣》にて対象を捕縛。封縁完了。
……目撃者がいたのは誤算。
でも、あの子――新倉つばさは、見込みがあるかもしれない。
※追記:K.G.S.の名前を“秘密結社”と言われた件については、後日クラリスに抗議する予定。
【つばさの感想メモ】
『あれは本当に、鏡だったのか。
“わたし”じゃない“わたし”が、あんなにもたくさん……。
そして、助けにきてくれた玲子先輩。
黒髪に月光。制服の裾が揺れて、手には黒い扇子。
超・美しかった。映画かと思った。
怖かったけど、でも……また会いたい。
今度はちゃんと、お礼が言えるように。』
【K.G.S.部内補足資料:桐嶋クラリス聖蘭】
所属:久遠女学園高等部二年/K.G.S.部長
縁系統:神仏の縁
使用アイテム:十字架(銀製)※本人私物
信仰体系:外見・言動はクリスチャン風だが、実際には仏教真言をマントラ(聖なる音)として除霊時に使用。
宗教的整合性よりも実践的効果を優先。
性格:外見は完璧なお嬢様だが、言動は常に“想定外”。
計画性ゼロの発想力と、突き抜けた行動力により、部員たちからは陰で「ポンコツ女」と呼ばれることも。
口癖:「ふふ〜ん♪」「……それって、いい感じ?」「やばい、考えてなかった☆」
備考:信仰の整合性については、部内でもたびたび議論の的になる。
──そして、まだ知らない。
わたし、つばさがこの“K.G.S.”という世界に、どっぷり関わることになるなんて。
次の放課後――クラリス部長との、衝撃の出会いが待っているとも知らずに。