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オカルト科学"界"の僕と多次元魔法"海"の私  作者: 坂水 雨木
第三章、異世界海上同棲生活with星と煙と他色々。
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第十一話、竜神。

 ――ヒュォォォォォ


 風の音がする。いや、空気の音だ。

 掃除機に近い。視線の先、竜の口。開けたそこに吸い込まれる空気――。


『――やばいじゃん』


 考える余裕なんてなかった。ファンタジーにありがちドラゴンブレスじゃん!僕は当たらな……いや待て、神様の攻撃なら僕にも当たる可能性があるぞ、これは。とりあえずリィムさんがやばいか!!


『むむむ、われからよそみとはよゆうだな、おまえ』


 エネルギーが爆発した瞬間、妙にはっきりした甘ったるい声が聞こえてきた。


『ていうかクゥレいるし!?』


 聞こえてくるも何もすぐ傍にいた。僕の声に反応し、ぴっと手を振り上げて答えてくる。むふむふ笑っているが、やっていることはまたやばかった。


【グォォォォォォ!!!】


 ブレスはクゥレの作った白いもやもやに全部吸い込まれ消えていた。竜神様が吠えている。意思疎通可能って言ってたけど、全然獣の吠え声ですね。本当に話せるんですか――あ、ちょっと再ブレスはやめてください!


『クゥレガード!!』

『わわっ、くふ、くふふ、いいぞ。われがまもってやろう!』

 

 煙の妖精を掴んで前に持ってくる。手触りは煙らしくふわふわもこもこ羽毛布団のよう。僕の手の上でふんぞり返り、上空にさっきの白いもやを広げる。ブレスは再び呑み込まれ、綺麗さっぱり消えていなくなった。


『……ふぅ。思ったより危険だね。クゥレありがとう。対話できそうなの?』

『むりだぞ。すっごい怒ってるから。まあわれなら海に押しこめてしずめられるけど』

『君のそれだと神様沈没しちゃうからね。だめです』

『ん、まあいい。じかんかせぎもけっこうたのしいから』


 わくわくとした面持ちで空を見上げる。楽しそうな妖精だ。


『ツィヤ。海上神と会話できると思う?』

『シー、ニー。現状では不可能でしょう。当初は見境なく暴れる海上神の意識を誘導する予定でしたが、どうやら既に意識はこちらへ向いているようです。特にわたしとジンゴに強烈な敵意を向けています』

『え、なにそれ初耳』


 困ったわ、と頬に手を当ててみても解決策など思いつくはずなく。


『星脈の乱れの原因がジンゴとわたしだと思われているようです』

『やばいじゃん』

『シー。やばいです』


 冗談でもなく普通にやばいんだよね。

 と話している間に五月雨レーザーが降り注いできた。クゥレのパーフェクトバリアが防いでいる。忌々し気に吠える竜神様と、不敵に笑う妖精。サイズ差があり過ぎて非現実的だ。まあ神様とか妖精って時点で非現実的だけど。


 神様の意識を誘導しなくてよくなったということは、僕に意識を向ける必要はなくなったということだ。重複してる?いいやしていない。

 とりあえず念力使用をしなくて済むわけで、じゃあ次どうするかという話になってくる。


「ジン?ねえ、竜神様とのお話ってできそうなの?」

『わ、リィムさん。すみませんちょっと事情が変わって』


 タイミングもよかったのでお話を聞いてもらうことにした。もちろん通訳はツィヤが傍にいるので完璧だ。向こうにはツィヤの声が届いているのだろう。僕の肉声は未来永劫届くことはない……嗚呼悲しき哉。


 しょんぼりしながらサクサク話を進める。


「ふーん……なるほど。思ったより大変そうね。……言うまでもないか。見ればわかるもの」

『ね。やばいですよねー』

「ん?ふふ、そうね。やばいわねー」


 え、なにそれ可愛い。好き……。

 咄嗟に口を押さえ、リィムさんの可愛さに打たれた胸を叩く。普段かっちりして真面目な感じの人が、砕けた口調でふんわか笑って喋ってくれるの……いいよね!


「でもどうしようかしら……ジンの方は何か思いついているの?」

『いやなんにも』


 これが困ったことに本当に思いつかないんだ。

 僕らに意識誘導しなくて済んだのはいいんだけど、普通に怒り過ぎで標的だけ定めて理性失ってる、みたいな感じなんだよね。神様ってばお怒りですか?お怒りですね……。


 この状況じゃリィムさんが対話しようにもそもそもの取っ掛かりがない。

 少しでも理性があればあとはリィムさんにお任せ!で終えようと思ってたのに。クゥレの"すっごい怒ってるからむり"の意味がわかってしまった。そりゃ無理だよ。あんな全方位攻撃してくる相手じゃ無理だ。


「そうなのね……。なら、神様の意識に無理やり言葉を差し込むのはどう?」

『……ツィヤ、どう?』

『シー、可能です。ですが現状では海上神の防護壁に隙がないため単純な言葉さえ届けるのは困難です』

『その話、リィムさんには』

『既に伝えてあります』

『ありがとう。さすがツィヤ』


 ピカリ。

 最近思ったけど、無言でピカって光って返事代わりにするのちょっとかっこいいよね。サンキューライトみたいな。


「防護壁、防護壁か……ミィルクさん、神様の防護壁に穴を開けることは可能でしょうか?」

「うーん、そうねぇ……あ、ソベ君ちょっとここ任せるわねぇ」

「え、ちょっ。ミィルクさん!!私だけでは既に、限界、が!!!ぁあああ!!限界、第二段階ですよ!?!?」

「うふふー、まだ大丈夫そうねぇー」

「ですね」


 おおソベルトさん。珍しく声荒げてる。でもまだ余裕そうだ。頑張ってください。

 無言でぐいっとエールを送り、耳はリィムさんとミィルクさんに傾ける。


「私が見たところだけどね。竜神様、すっごーく硬い障壁張ってるみたいなの」

「そう、ですね。私もそれは感じていました」

「うふふ、ね?だから簡単な魔法術じゃ突破なんてできないわ。空も飛んでいるし、海の力を直接使ってーなんていうのも難しいでしょう?」

「はい。……私たちは神様と敵対しない方が良いでしょうし」

「ええ。あの神様、レメイラの海を司っているって言うものねぇ。ね、リィムちゃん」

「はい」

「ふふ、問題ですっ。強力な障壁を壊さず上手に越えるにはどうすればいいでしょうかー」


 むむ、っと考え込むリィムさん。同時に僕も考えてみる。久しぶりに思考加速だ。


 竜神様の障壁を壊さず突破か。

 ちらと上を見て。


『……』


 クゥレのバリアにブレスを吐いて、ブラックホールならぬホワイトホールの白いもやを避けるように拡散するブレスが空を覆い尽くしていた。見なかったことにした。

 やけに空明るいと思ったんだよなー。そういうことかー。


 気を取り直して、障壁突破ね。

 レメイラなんだし、そういう魔法術ありそうなもんだけど……。たぶん、そんな高度な魔法術を使うにはエネルギーが足りないんだろう。魔力とか深力とか。けどなんだろう。頑張ればいけそうだね。こう、針の穴を通すくらいの穴なら障壁にも作れそうだし。

 なんだ、答え簡単じゃん。


「――うふふ、そうね。魔法術の出力が足りないわ。じゃあリィムちゃん、足りない時はどうすればいい?」

「それは……他所から持ってくるしかないと思いますが――ぁ」


 僕と同じ答えを言っていたリィムさんが、はっと目を見開いて虚空を見つめる。


「そう、ええ、うふふー。ちょうど今、私たちのすぐ傍にたくさんのエネルギーがあるわね」

「そうですね。これなら……できそうです」


 虚空、というか僕とツィヤが現在進行形で念力を使っている場所。

 既に完全なシャットアウトはできていないけれど、それでも他の空域より遥かに風も波も雪も弱い場所。魔法船の傍。


 つまりそう、僕らがポルターガイストキャッチし続けてきた深力を使う時がやってきたのだ。

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