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オカルト科学"界"の僕と多次元魔法"海"の私  作者: 坂水 雨木
第三章、異世界海上同棲生活with星と煙と他色々。
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第四話、異常事態の考察。

 ツィヤから謎の生命体……生命体、なのかな。わからないけど、超高エネルギー反応が生まれたと告げられて早三日。特に何事もなく普通に過ぎ去ってしまった。

 相変わらずリィムさんは宇宙少女シェラタンとの会話プラス仕事に勤しみ、僕はのんびり守護霊らしく憑き纏ってその辺を徘徊していた。クゥレは僕と同じようにだらだらし、たまにどこかへ出かけて数時間の土産話をわいわいと披露してくれる。要領を得ないことばかりなのにはもう慣れた。


 そして肝心のツィヤだけど……。


『……』


 無言で情報解析を続けている。話しかければ返事はしてくれるし意識をこっちに向けて質問にも答えてくれるが、やっていることがやっていることなのであんまり邪魔をしたくない。


 菱形の周囲を回遊する光の軌跡はここ数日ずっと激しくきらめいている。それだけ忙しく意識を動かしているということで、僕なんかより圧倒的に上位種っぽい共星種のツィヤがここまで時間をかけているのは……なんか、今回の神様?とかは僕が思っているよりやばいんじゃないかなって思ったり。


 結構ね。こんなのんびり考えてるけど、意外とやばいんじゃないかなーなんて。


「うぅーん、対策考えるって言ってもねぇ。まだその神様のこと、なんにもわかっていないんでしょう?」

「はい……。マリテュールを散らして調べてはいますが、途中で弾かれて戻ってきてしまいます。結界とは違うようですが、単純に魔法術に込めた魔力不足かもしれません」

「そうねぇ。リィムちゃん以外も調査は出しているのよね?」

「私が出していますよ。他にも数人、宇宙調査の方で忙しくあまりこちらに時間、意識を割く余裕は取れていませんが、マリテュールを飛ばす程度ならと魔法術を行使してもらっています」

「そっかぁー。それでも成果はないのでしょう?」

「ええ。リィムさんの言っていたように相手側の力場に弾かれているようです。マリテュールたちは気を落として戻ってきました」

「ふふふ、あの子たちならそうなるかもしれないわぁ」


 のんびりゆるふわなお姉さんのミィルクさんと、きっちり無表情なお堅いソベルトさん。それといつも通り大人可愛いリィムさん。あと会話に参加していない緊張していそうなハユレさん。

 それなりの大きさの会議室でお話中の四人が神様案件への対策班だ。


 人数が少ないとか言っちゃいけない。僕も思ったけど宇宙戦争対策へ人員が駆り出されているからこっちに人が来られないのだ。仕方ない。

 会話の内容はツィヤが謎の自動翻訳システムを使ってくれているので僕でも聞き取れる。けどこの翻訳、音声をクゥレにしたのはいかがなものか。やたら舌足らずだし、当人が一緒に横で聞いてきゃっきゃしてるから集中して聞くことができない。どう考えても人員選択ミスでしょ。


「マリテュールの調査は難航していますが、昨日のうちに私が少々出向いて調査してきました。東西双方に行く時間はなかったため、状況の把握がしやすい西を選び行ける範囲まで進んでみました。結果、海上に異様な生物、竜に酷似した形状のエネルギー体を確認しました。進行方向は第十七都市、速度は遅く、十七都市まで正確な時間はわかりませんが十日以上はかかるだろうと思われます。資料はまとめ終えていないので後ほど皆さんに送ります。エネルギー体、仮称竜の問題ですが、前提としてそもそもの発生原因がわからないことにあります。何か心当たりのある方はいますか?」

「えっと、すみません。そもそもソベルトさん、昨日見に行ったんですか?」

「?ええ。はい行きましたが」

「危険じゃありませんでしたか?」

「まあ無事だったので大丈夫です」

「結果論じゃないですか……」


 和やかな会議を眺めながら僕なりに情報を整理していく。

 当たり前だけど、僕はリィムさんにくっついているので他の人の動向は知らない。会議で聞いた話によれば、ソベルトさんが結構本格的に動いていたみたいだ。海底は置いておいて、海上の神様はそれなりに情報も出てきている。


 とりあえず見た目は竜。これはツィヤも言っていた。

 大きさは計り知れない。ドーム以上には大きいらしい。

 目的地はこの場所、十七都市だと思われる。

 移動速度は遅くまだ余裕はある。油断禁物ではあるが。

 マリテュールを弾く何らかの力場がある。

 目的不明、発生原因不明、正体不明。対処法不明。


「ツキさんのおかげで意思を持つエネルギー体だっていうのはわかったけどねぇ、どうして十七都市に向かってきてるのかわからないわぁ」

「最悪同量のエネルギーを用いた魔法術で存在ごと相殺すれば良いそうですが、根本的に問題を理解しないと繰り返し竜が出現するだけになってしまいます。以前現れた粒子雲霊種のように対話する手段があれば……」


 ちら、と。

 全員甘い声の翻訳を聞きながら、下の会議を見守っていると視線の動きを察してしまった。

 わざわざ各人に合わせて声色変えて声真似っぽくしてるクゥレ翻訳のせいでリスニング能力が落ちてはいるが、それでも話にはついていけている。


 ちゃんと上から全員を見ているので、話の流れや雰囲気もなんとなく察せられる。だからわかってしまった。ソベルトさん、ミィルクさん、ハユレさんの視線が一か所に集まっているという事実に。


「え、も、もしかして私ですか?」

「うふふ、だってリィムちゃんならって思うでしょう?」

「はい。様々な種族と対話を熟し精霊とも意思疎通を行うリィムさんなら、と」

「ね、ハユレちゃんもそう思うでしょう?」

「うぇぇ!?、あ、アタシですか?い、いや、はい。思います。はい」


 急に飛び火して慌てて頷いてリィムさんにジト目で見られる。その立場羨ましくはない。ただなんというか、上の人に囲まれて緊張し続けるのは心労やばそうだなぁとは思う。やっぱり代わりたくはない。


「う、うーん……なら少しジンに聞いてみますね」


 わぁ、急に僕に話飛んでくるのね。いいよ任せてください。ツィヤ経由でなんでも答えますよ!


「えっと、ジン?聞こえてる?」

『はいはーい!聞こえてますよ!』

「あ、よかった。聞こえてるのね。……あのね、私たちの話聞いてた?」

『聞いてました聞いてました。竜との対話ですよね?』

「うん、そう。竜との対話。あなた、できる?」

『わからないです』

「わかんない?ふふ、そっか。そうよね……。他に手段知ってたりする?」

『それもわからないです。ツィヤならもしかしたら知ってるかもしれませんけど……情報整理終わるまでもうちょっと時間欲しいです』

「ん、そっちも時間欲しいのね。わかったわ。何かわかったらそっちから教えてもらえる?」

『任せてください』

「ふふ、お願いね」

『はーい』


 ぷつり、なんて音はしないけど会話は終わった。

 双方向自動翻訳だから僕の話したことがそのまま伝わってるってわけじゃないんだけど、結構それっぽく伝わってそうで嬉しい。向こうにはどんな声で聞こえているんだろうか。……とりあえずクゥレの声じゃなさそうだからいいか。こっちもリィムさんそのものじゃないんだけど、クゥレってやたらリィムさんの声真似上手くて複雑だ。元がリィムさん真似して姿作ってるからそりゃ似てて当然なんだけどさ。こう……うん。複雑。


『ちなみにクゥレ』

『うん』

『クゥレって神様と話す方法とか知ってる?』

『うーん……』


 会議はいったん置いておいて、こっちはこっちで意見を聞いてみることにする。ツィヤは忙しいので実質相手はクゥレだけだ。

 珍しく悩んでいる様子のクゥレに少し驚く。


『にしのかみさまははなせそうだけど、すごく怒ってるからだめかも』

『……怒ってる?』

『うん。いっぱい怒ってる。怒ってないて、かえせって言ってる』

『かえせ……帰せ?家に帰る?』

『ちがう。われはしらないけど、なにかとられたものをかえせって言ってる。たぶん』

『そっちの返せか。珍しいね。クゥレが曖昧なの』

『うーん。われの言うことなんにもきいてくれなさそうだし、怒ってるからこわいもん』

『そっか』


 よしよしと頭を撫でてあげる。

 普段騒がしいだけに、クゥレがしょんぼりしてるとこっちまで気が狂ってしまう。しかし少し情報が手に入った。


 神様が怒っている。


『返せ、か……』


 何を返せと言っているのか。

 誰に返せと言っているのか。


 別の世界にいるはずなのに、"神様"という存在が表に出てくるだけで地球の、日本の存在――怪異を思い出してしまう。

 例えば十七都市西に生じた神様が荒神として表に出てきているなら、それは魔法術どうこうで無理に封滅するものじゃない。きちんとした理由があって現実に影響をもたらしているのだから、その理由はなくしてあげないといけない。


 神様という存在は、ただ悪意をまき散らすものではないのだ。

 地脈や霊脈に関わり、その土地の豊穣や安定を司る。


 この世界の神様がどうこうはわからないけれど、少なくとも神様という概念がある時点で蔑ろにしていいものじゃないはず。


 何かを返さないといけない。

 奪った誰かが奪われた神様に、何かを。


『……はぁ』


 普通に日本で怪異と対峙している時みたいな気分になりかけてた。

 よくないよくない。レメイラじゃ僕は外様なんだ。中心人物はリィムさんたち。緩くいこう。凝り固まった思考じゃわからないこともたくさんあるからね。


『――ジンゴ』


 肩を回して背筋を伸ばして、ぐーっと伸びをしていたら急に声がかかった。


『うん。何?』

『ようやく掴めました』

『うん?』


 珍しく、本当に珍しくツィヤが曖昧な言葉で話しかけてくる。

 そちらに顔を向け、残光を置いて異様に軌跡を走らせているツィヤを見つける。ピカピカと。届く声はテンション高く、興奮しているようにも聞こえる。


『ジンゴ、やはりあなたは素晴らしい』

『……えっと、何が?』


 ちょっと怖いくらいだ。

 表情が見えないことなんて今さらだし、ツィヤが異様な種族だなんてことも今さらだけど、こうして冷静さを欠いた感じ見せられると怖くもなる。――あ、これ僕がリィムさん好き好き言ってる時のやつか。ごめんツィヤ、いつもこんなんだったんだね……。


『――失礼しました。ジンゴ、わたし、個体名ツィヤはわたしたち共星種の史上でも極めて珍しい、貴重かつ重大な観測を成功させました』


 さすがに落ち着き、それでも言葉の節々に興奮を隠せない様子。発見、いや観測か。何の話してるんだろう、これ。


『ジンゴ』


 じっと僕を見て、光を泳がせて僕を呼ぶ。


『――あなたの世界を、アースを発見しました』

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