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番外1

主人公寝ちゃってるのでちょっと余談話

 クーネが完全に寝てしまい、声をかけても、もう反応は返ってこなかった。エルミスは困ったように、


「好きに、と言われましても・・・。どうしましょう、ネィルさん。ネィルさん?」


 声をかけたが返事がなく、振り返ってみると、ぺたぺたといろいろ触りながら、感心しているネィル。エルミスの視線に気付き


「おぉ、すごいなここは。未知の物が沢山で興味が尽きない!見ろ、この皿を。木ではなく石でもない、このように薄く、しかも軽い!こんな素材があるのか!

 ん、この箱は何だ?これは引けばいいのか?おぉ、中にいろいろ入ってるな。しかも冷えてるぞ?冷却魔法が常に発動しているのか。どういう仕組みで永続させているのだ?むむむ・・・。」


 楽しそうにいろいろいじりまわるネィルに触発され、エルミスもネィルと一緒にいろいろ見て回った。

 クーネが寝ている部屋も起こさないように気をつけつつ見て周り、ネィルは本棚の本を一冊取り出し開いてみる。


「不思議な文字だな。何と書いてあるか全然読めぬ。これは、数字か?これだけは何とか理解できるが・・・。」

「ネィルさん、これ!これなら文字が読めなくても少し理解できそうです!」


 エルミスが持ってきた本をネィルが覗き込む。それは少しは文字もあるが、絵だけでも何となく理解出来そうな本だった。


「ふむ、これは何かの伝承を絵でまとめたものか?なるほど、確かにこうして絵をつなぎ合わせれば容易に場面が思い浮かぶな。他にこのような書物はないか?これなら少し理解できそうだ。」


 本棚をあさってみると似たような本がたくさんあり、その中の一冊に見慣れた人物が表紙となっている本を発見し、ネィルはそれを開く。


「うん?これはまさかジグラッドの冒険の記録か?ふむ・・・、ほう、これは私の城ではないか。む、四刑衆シケイシュウの連中か、懐かしい。つまりこの絵はあの時の物か。まさか何者かが覗いていたとはな、まったく気付かなかったぞ。

 いや、これは・・・覗かれていたとは違うな。なるほど、セイジの言っている事はそういうことだったのか。」


 絵だけを見てページをめくっていき、最後まで見終わると、次の本を見はじめる。納得したり驚いたり渋い顔をしたりと、ネィルの表情がころころ変わり、エルミスは本ではなくそちらに見入ってしまい、それに気付いたネィルは


「な、なんだ?なんか変なものでもあったか?」

「いいえ、ネィルさんのいろんな表情がかわいくてつい・・・。」

「ば、馬鹿者。親をからかうな!ま、まぁ、ちょうどいい。私がしてきたことの一部がこの数冊に書かれているようだ。クーネもまだ起きて来ぬようだし、お前にその時のことを絵を見ながら語ってやろう。」


 そう言うと、表紙は同じ文字だが数字の部分が違う本を13冊ほど持って最初の部屋のテーブルへ置き、備えられているソファーへと座る。

 エルミスは嬉しそうに後に続くと、ネィルの横へと座る。それを確認したネィルは本を一冊開き、絵を指しながら語り始めた。

 何冊かの後にエルミスがネィルの肩を抱き


「くすくす、懐かしいですね。昔はよくお父様とお母様に囲まれてこのように本を読んでいただきました。まさか、再びこのような幸せな気分に浸れるとは思いませんでした・・・。」

「私もだ。まさかまたこのようにお前と肩を寄せ合い、語り合えるとは思わなかったさ。以前のお前は私を避けているようだったからな。お前に何故嫌われているのかと悩んだものだ。」

「あ、いえ、あれは・・・。決して嫌いになったとかではなく、その・・・、恥ずかしかったと言うか、ちょっと意味もなく反抗したくなったと言うか・・・。」

「わかっているよ。ネィラの奴に『本気で嫌われているわけではないから気にするな。あのくらいの年頃の娘はそういうものです』と言われたしな。」


 ネィルは再び本に目を落とし、語り始める。エルミスは静かにそれを聞き入っていた。

 持ってきた本の最後の1冊の途中まで語り、そこで少し声が低くなる。


「・・・あぁ、今思えばこの時は我ながら非道な行いをしたものだ。怒りに身を任せ、ジグラッドを絶望の底へ落とそうと奴の故郷を襲い壊滅させ、目の前で親を殺したのだ。」

「な、なぜそのようなことを・・・?」

「お前を救い出した時だったからな。」


 質問の答えにエルミスは納得し顔を伏せる。


「だが報告によれば、この後に絶望から蘇ったジグラッドは覚醒し、一気に成長して私を滅するまでになったのだから恐ろしいものよ。ここで奴を引き合いに出すのは癪だがエルミス、お前もこのときのジグラッドのように過去を乗り越え成長すると信じているぞ。」

「はい!先ほどの出来事のおかげで少し楽になりました、あとはこれからの旅で成長するよう努力していきます。」

「よく言った。期待してるぞ。エルミス!・・・しかし、振り返ってみて、このときもっと冷静に違う手段をとっていれば別の未来があったのかも知れぬな。いや、その考えは意味のないことか。」

「そうです。過去を振り返った先の未来よりも、今この瞬間からの未来が大事です。」

「言うじゃないか、嬉しいぞ。」


 少女姿になり、短くなってしまった手を伸ばし、エルミスの頭をなでるネィル。その顔は恥ずかしいような、嬉しいような、どちらとも取れる笑顔だった。





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