10話目
数分の後、エルミスから離れたクーネは
「ありがとうエルミス。もう大丈夫。変なところ見せちゃってごめんね。」
「気にしないでください、それでこれからどうしますか?」
「とりあえず荷物を取り返して、ついでだからいろいろ貰っていっちゃおうか?」
「はい!」
「して、クーネよ、こちらの男はどうする気だ?」
「そうね、そいつは殺す、というのは変えるつもり無いかな。ただちょっと聞きたいことあるからとりあえず外までは『持って』行きましょう。」
クーネはネィルに「お願いね」とリーダーを託すと自分はいくつかある部屋のうちの一つへ向かう。エルミスも後を付いていき薄暗い、少し小さめの部屋へと一緒に入る。
そこには今までいろいろ盗んだりしたであろういくつもの荷物が山積みにされていた。二人でいろいろ物色していると
「・・・あった!私の荷物!」
少々大きめななリュックを引っ張り出し、そして中身の確認をする。幸いなことにまだ手をつけておらず、処分される前だった。
安心に胸をなでおろし、エルミスを見ると、いろいろと物色しては気に入ったものを見つけて、鞄の中につめていた。
クーネのほうも自分の荷物以外にいろいろと懐や自分のリュックにしまいこむのだった。
二人は部屋から出て、待っているであろうネィルの元へと急ぎ、洞窟の外へ出るとリーダーの悲鳴が聞こえた。
何事かと悲鳴の元へと向かうと暇を持て余していたネィルが、逃げられないようにとリーダーの指を一本一本丁寧に折っていた。
おもわず「うわぁ」とつぶやいたクーネに気付き
「やっと戻ってきたな。何か聞きたいことがあるのだろう?何を聞いても素直に答えるように準備しておいてやったぞ?」
「え、えぇ、ありがとう・・・。じゃあちょっと聞きたいんだけど、私を殺した後に楽しんでくれたとかいう人を教えてくれる?」
戸惑いつつネィルにお礼を言った後は、一気にトーンを低くし恨みのこもった声でリーダーへ質問する。
リーダーは震える手を持ち上げ、一人の男を指・・・動かすことが出来ないため腕を、指す。そこには突入前にネィルの大剣に押しつぶされた男がいた。
「あいつか・・・」
クーネはゆっくり近づき様子を見ると
「あれ、ネィル、こいつにはとどめさしてないの?気を失ってるだけで、まだかろうじて生きてるみたいだけど?」
「む、そうなのか。剣を拾い上げた時は死んでると思ったのだがな。何かの拍子で息を吹き返したか?とはいえ、もう長くももたないだろうよ。ほっといても死ぬ。」
「いえ、ちょうど良かった。まだ死なれたくないのよ。それとそこのリーダー、やっぱり貰っていい?私の手で殺してあげたいの。」
クーネの言葉に涙目になり、頭を地面にこすりながら必死に謝っているが、そんな『もの』は誰も気にすることなくリーダーにとっては絶望の会話が続く。
「クーネ・・・、それはかまわないが、大丈夫なんだな?」
「心配かけてごめんなさい。でも大丈夫。これでちゃんと吹っ切ってくるわ。」
「『のまれる』なよ?」
リーダーを持ってきたネィルから『それ』を受け取り、足元に倒れる男の回復をお願いする。意識を取り戻した男の腕を掴み
「私の初めての人と最後の人だもん。ちゃんと、しっかりと、丁寧に、相手してくるわ。」
「おい?・・・いや、この二人で最後というならいっそのまれて膿を出し切るのもありか。後処理はしてやるから存分に遊んで来い。」
「ありがとう、ネィル。ちょっと行ってくるね。」
意識を取り戻したもののわけのわからない状況に戸惑う男と、泣き喚き必死に謝り助命を懇願するリーダーを引き連れ、洞窟内へと入っていく無表情のクーネ。
姿が消えて数分後、洞窟内から絶叫が響き渡り、静かになったと思えばまた絶叫が響き渡る。
「エルミス、大丈夫か?」
「は、はい、大丈夫です。ところで、先ほどの『のまれる』とはどういう意味なのですか?」
「あぁ、出発前に、クーネは記憶とリンクさせて自然な動作を行えるようにした、と言っていただろう?だが記憶をリンクさせると言うことは本来のクーネの最後までその身に体験するのと同じことだ。
つまり、ここの連中を見たとき『クーネ』は奴らに対して酷い目に合わされた恐怖にのまれた、そしてその状況を作ったと自分を責めていた『セイジ』は、奴らに報復を考え怒りにのまれた、その二つが重なり精神が制御できずに暴走したのだ。」
「クーネさんの記憶とセイジさんの意思がぶつかってしまったわけですか。でもよくわかりましたね。さすがネィルさんです:」
「奴との会話を思い出してみろ。最初は『クーネを殺した連中』と言っていたのに、『私を殺した連中』と言っていただろう。それで精神が混同しているのだと気付けた。」
ネィルの説明に感心しているエルミス。二人が洞窟に目を向けるとまだ絶叫と悲鳴が聞こえてくる。
「くっくっく、ずいぶんと楽しんでるようだな。創造神ではなく、破壊神のほうが似合いそうだ。」
「やめてくださいネィルさん。暴走した時のクーネさんの一撃は、本当に恐怖を覚えましたよ。あの瞬間においてはクーネさんが一番怖かったんですから。」
「なるほど、これはクーネに感謝しなければな。エルミスよ、正直なところ、このような連中にまだ抵抗あるか?」
「まったく無い・・・とは言いませんが、何でこんな人達を怖がっていたんだろう、とは思います。恐怖、と言うより今は嫌悪に近いでしょうか・・・。」
「はっきり言ってそこまで抵抗がなくなるとは思わなかったが、なるほど、クーネの方により大きい恐怖を感じたか。おかげでクズ連中に対する恐怖を塗り潰してくれたようだな。」
「そんな、クーネさんに恐怖なんて。・・・今回のような暴走さえしなければ大丈夫ですよ。でも、あのクーネさんの強さは異常でした。どれだけ強いんでしょうか、クーネさんは。」
「後で聞いてみれば良いさ。」
久しぶりの親娘のゆっくりとした会話。どれほどの時間が経過しただろうか。突如洞窟が轟音とともに砂埃を舞い上げ崩れ落ち、その中からクーネがのんびりと歩いてきた。
「終わったようだな。『のまれて』は、いないようだな。」
「えぇ、大丈夫。もう、平気・・・。ただちょっと、疲れたかな?」
「そうか、どうせ目的のない旅だ、急ぐ必要もあるまい。ゆっくり休憩すればいいだろう。」
「目的がないわけじゃないんだけどね。でも今はその言葉に甘えさせてもらうわ。」
クーネはボーっとした意識の中、指を動かすと以前より少し大きな小屋が現れ、ゆっくりとした足取りでクーネが中に入っていき、二人もあとに続く。
中に入り、二人は内部の光景に驚き動きが止まった。
「こ、これは一体・・・!?」
「見たことないものがたくさんありますね・・・。どういう所でしょうか・・・?」
小屋の中は二人が見たこともない物がたくさん存在していた。そんな中を特に気に留めることもなくクーネは奥の一室の扉を開けそのまま進み、設置してあった大き目のベッドへ倒れこむ。
エルミスは恐る恐るクーネの入った部屋を覗き込み、呼びかけるのだが
「ごめん、エルミス。なんかすごい眠くて何も出来そうに無いの。好きにいじっていいから適当にくつろ、い・・・で・・・、すぅ・・・。」
そのまま寝息を立て始め眠りに入ってしまった。
もし相手が死んでても、激おこクーネさんは生き返らせてから殺すつもりだったようです。
なお中で何か行われていたかは・・・




