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松子と沙織の子供が小学校に上がる頃になると、沙織は松子の家を訪ねることはなくなっていたが、筍が出る時期には松子は沙織の家に届けに行き、近況など話し合ったりした。
松子と沙織の娘が大学に入学するまでは、お互いそれぞれの生活に追われて何年かが過ぎた。
そのころ、松子の家では思いがけない状況の変化が起きようとしていた。
松子の家屋敷が高速道として買収されるという計画が強制立ち退きという形で通達され、松子の夫は転居先の家を探し始めていた。
売りの情報が入ると、松子は夫に連れられてその候補地の下見をして回った。運良く、それまで住んでいた日照時間の少ない山の麓の敷地から、松子がしつこいほど言い張っていた日当たりのいい、町の中心に位置する土地を購入することができた。
奇遇ながら、徒歩で10分ほどの所に、沙織の家があることにも松子はほっとした。見知らぬ土地に来て心細かった松子にとって、それは救いだった。
沙織はちょっとした手土産を提げて、毎日のように松子の家を訪ねてきた。
引っ越しをして三年目に、松子が介護の世話をしていたアルツハイマーの叔母が亡くなったとき、沙織はうろたえている松子に寄り添うように裏方を引き受けた。




