72 アレスがフニャンソワさんをエッチな目で見てた!
暫く休憩をしながら2人の成果も確認する。
どうやらリーゼは[剣術]がLv3に、クラウは[火炎]がLv3になったようだ。リーゼは剣を振り動きを確認してご満悦だった。
クラウは近くの木に[火炎]を放ち燃え上がった大木を見ながら、威力がかなり上がっていると珍しくはしゃいでいた。
僕はグリーンドラゴンの亡骸をバッグに仕舞うと、分所へ戻ろうと足を進める。帰り道も何事もなく戻ることができた。
「アレスくん。少し話せるかしら?」
解体所へ向かおうとした僕たちに、シャルロットさんから声がかかったので足を止める。
「なるべく早く本部の方に顔を出してほしいとのことです。ギルドマスターのクライフより監視依頼についてのいくつかの報告、それと報酬についてのお話があるようです」
「分かりました。明日にでも向かいます」
その答えにニッコリ笑うシャルロットさん。昨日から笑顔が多く見れるのは、厄介な案件の目途がついたからだろうか?
「この後は裏に行くのかしら。今日も大漁に狩ってきたのよね?」
「あっはい。今日はブラックモンキーを中心に、後ドラゴンを1体…」
その瞬間シャルロットさんの顔が強張った。
「ドラゴンって、ワイバーンのことよね?」
「いえ、グリーンの方で…」
「分かったわ。私も同行します」
少しの沈黙の後、隣の女性に持ち場を預け解体所へ同行するシャルロットさん。
「おお!今日も来たな!」
「来たよー!」
解体所のおじさんから声が掛かりリーゼが手を上げハイタッチしていた。相変わらず仲が良いな。
「また丸ごと持ってきたので、解体の方もお願いします。まずはこれを…」
と言いながら、グリーンドラゴン以外の亡骸を3人でそれぞれのバッグから並べるように出してゆく。
30体以上の猿と、5体分の蛇が並んでいる。今日もそれなりに狩れたな。
「まずはと言うからには、今日はこれからじゃないってことか?まだスペースは開いてるから出してもいいぞ?」
最近は50体近く出していることもあるからこのぐらいでは驚かれはしないようだ。
「じゃあ最後にこれを…」
そう言って少し離れたところにグリーンドラゴンを出す。
「おいこれ…本当にお前たちが狩ったのか?」
「もちろん」
「まあ、そりゃーこんなの、簡単にやるよって貰えるものでもないだろうしな…持ってきたのだから自分たちで狩ったのだろう。しかもまだ体温が残っている。何かの拍子で死んだのを拾ったということでも無さそうだ…」
そう言いながらペタペタとドラゴンを触るおじさん。
ふとシャルロットさんを見ると少し口を開け、珍しい表情を見せてくれていた。
「シャルロットさん、大丈夫ですか?」
リーゼが「すごいでしょー!」とおじさんに自慢してる間にシャルロットさんに声を掛けておく。
「あ、はい。ちょっと待ってくださいね。ギルマスに報告する話が増えたので…明日までに報告しておくので大丈夫ですが、もう良く分からなくなってきました。アレスくんはこれも簡単に狩れるだけの実力があるということですね?」
ため息をつきながらそう話すシャルロットさんに慌てて否定する。
「いやいや、死にかけましたよ?ダメだと思って必死に深層に逃げたけど、結局抜けてきて…それでも2人が奮闘してくれたので僕も何とか立ち上がることができたぐらいですし…少なくとも暫くはもう戦いたくないです」
「そうだったのですね。それでも凄いことですよ。アレスくん、おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」
シャルロットさんの笑顔をまたも頂き照れながら頭を下げる。
「リーゼロッテちゃんにクラウディアちゃんも、これでドラゴンスレイヤーですね。おめでとうございます」
2人にもシャルロットさんの笑顔が向けられる。そうか、これで僕たちはドラゴンスレイヤーを名乗っても良いのか…いや、本当に暫くはドラゴン見たくないな。
「ドラゴンスレイヤー!やったねクラウ!」
「うん!私もドラゴンスレイヤーと名乗っても良いのでしょうか…ありがとうございますシャルロットさん」
「あっそだ、ありがとうございます!」
喜ぶ2人だったが、クラウに続く様にリーゼがシャルロットさんの賛美にお礼を返していた。
その後、カウンターへと戻りながらシャルロットさんに「明日行くなら一言声を掛けてから本部へと出発してほしい」とお願いされた。
少し待ち、グリーンドラゴン以外の素材の買取報酬を受け取ったが、グリーンドラゴンについてはなるべく高く売りたいから1週間程待ってとも言っていた。
ドラゴンは全てが素材となるため、グリーンドラゴンほどの大きさだとかなりの額になるようだ。Sランク冒険者はたまに狩るらしいので、それほどレアと言うことも無いためオークションにはならないようだ。
そして十分に休息を取り体を休めた翌朝、シャルロットさんに手紙を受け取ると、乗合馬車で久しぶりの冒険者ギルド・ベイリンシティ本部へ戻ってきた。
「フニャンソワさん久しぶりです。クライフさんいますか?」
「あっ、アレスくん久しぶりね。それにリーゼちゃんにクラウちゃんも!ギルマスに用事ってことは、あの依頼が終わったってことかしら?」
「はい。シャルロットさんからの手紙も預かってきました」
「分かったわ。多分大丈夫だから案内するわね」
そう言うと4階まで魔道昇降機にのりギルマスの部屋まで案内される。昇降機の中ではフニャンソワさんから素敵な香りに少しクラクラしてしまう。
「ギルマスー!アレスくんたちが来たよー!」
「入っていいよー」
フニャンソワさんはクライフさんの返事でドアを開け中に入る。
「じゃあまた後でね」とすぐに帰ってしまった。フニャンソワさんの帰り際の後姿と、その揺れるシッポに見とれていると、リーゼの肘により外殻が少し削れた。危険と判断して緩んだ頬を引き締めた。
「君たちは、何をやってるのかな?」
クライフさんが僕たちの様子を見て頬を掻いている。
「いえ、何でもないです」
「だって!アレスがフニャンソワさんをエッチな目で見てた!」
「アレス?」
リーゼの一言でクライフさんは吹き出して笑い、クラウは気づいてなかったのか僕に冷たい視線を送っていた。やきもちを焼く2人に頬がゆるんでしまう。
やっぱりモテる男は大変だよね~なんちゃって。
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ドラゴンの素材について
ドラゴンについてはSランク冒険者パーティがそれなりのペースで狩っているようだ。グリーンドラゴンは下級ドラゴンではあるが、その素材は大きい物なら白金貨50枚程度にはなるだろう。Sラングパーティが複数集まり上級ドラゴンを狩ることもある。それ以上のドラゴンについては災害級とされ、何か害が無い限り狩ることはない。討伐する場合は、大人数で戦いある程度の死者を覚悟することになる。
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