71 よし行こう!ドラゴン退治だー!
翌朝、リーゼにも何度か確認してから深層までダンジョンワープで移動する。
景色は変わりいつもの場所で再度ダンジョンワープの登録を済ませておく。
最深層を伺うと、上空に2体ほど旋回しているのが見えた。
「よし行こう!」
そう言って森エリアを目指す。
お昼過ぎには2つの[黒牙]を獲得し、Maxになった。
「じゃあどうする?もう少し狩ってクラウにも[譲渡]できるようにしておく?」
「うーん。それはまた今度お願いします。暗くなってくるとまずいので一回試してみませんか?」
「じゃあ、行こう。リーゼも準備はいい?」
リーゼは鼻息荒くうなずいている。
まずは層の境界付近で[隠蔽]を使って中に入り様子を伺ってみる。
すぐ近くに3体のグリーンドラゴンが身を寄せ瞳を閉じている。
『どうしよう、近くに3体いる…』
『じゃあ一旦戻ってから、場所を変えた方が良さそうですね』
僕はその言葉で左右を見回してから戻った。
「やっぱり怖いね。でも、もう少しあっち側に、見た限りは1体だけいるのが見えたよ」
そう言いながらそのグリーンドラゴンのいる方向を指差している。
「それならそっちに行ってみましょう」
「よし行こう!ドラゴン退治だー!」
リーゼの元気な掛け声と共に程移動する。
途中、蛇と何度か遭遇するがサクっと倒しつつ、岩エリアを回避して10分程度で目的の場所へと到着した。
「じゃあもう一回見てみるね」
そう言ってまた最深層へ侵入する。
うわっ!と悲鳴を上げそうになる。すぐ近くに1体のグリーンドラゴンが羽を休め座っていた。
息を殺してゆっくりと距離を取る。
辺りを見回し確認し、もう一度戻る。
「びっくりした。入ったら思った以上に近くにいたよ。層の境界越しにみるのとやっぱり少しずれがある気がするよ」
「そうなんだ」
「それで、どうしますか?」
クラウが不安そうに見ていた。
「もう少し先まで進もう。そうしたら目の前にいた奴をおびき寄せれば、多分すぐに他のが集まってこないぐらいは距離があると思う」
「やった!じゃあ早く移動しよー!」
リーゼはやっぱりヤル気満々で、クラウも覚悟を決めたようにうなずいた。
移動後に[隠蔽]を使い、3人で層を抜ける。
再度周りを確認するが、狙っている1体以外は遠くに見える程度であった。
『2人とも、大丈夫?』
『大丈夫!で、どうするの?』
『私もなんとか大丈夫です。まずは2人で遠距離で、その後でリーゼが[斬]で有効打を与えれるかを確認でどうでしょう』
クラウの提案にうなずく僕とリーゼ。
『じゃあ行くよ!3、2、1!』
僕とクラウは[黒牙]と[火炎]を連続で放つ。
それに気づいたグリーンドラゴンが羽を広げながらこちらを向き、その羽で払うような動きを見せたが、僕たちの攻撃はその羽を傷付けることができたようだ。
グリーンドラゴンから『ぎぎゃぎゃ』と悲鳴があがる。
痛みに怯んだのか少しだけ上空へ飛ぶそのドラゴンは、すでに走り出したリーゼを敵認定したのか大きく口を開ける。
僕は咄嗟に[睨む]と[恐慌]を使いながら[疾風]で距離をつめる。
あまり効果は無かったのか特に変化は見えなかったが、ドラゴンの視線が僕へと移り口を一旦閉じた。その隙にリーゼは深く沈みこんでから飛び上がり、[斬]でドラゴンの胴を袈裟切りにする。
表面上は斜めに大きく傷を付けることに成功したようだ。
綺麗に着地した後、僕と入れ替わるように距離を取るリーゼ。クラウからは[風牙]が連続でドラゴンの顔へと着弾していた。
そして至近距離からの[黒牙]を3発。
ちゃんと胴に深く刺さっているのを見て、やったと胸をなでおろす。
その攻撃に再度ドラゴンが吠え、口を大きく開けたので、[岩の盾]を広範囲に広げつつ可能な限り出しつ後退する。出すたびに破壊される[岩の盾]に内心焦る。
だが途中で破壊が止まったので、やっとクラウの元まで戻ることができた。
クラウが[風牙]を連発していたので、それで注意をそらす事ができたのだろう。
リーゼも身構えながら攻撃できるタイミングを見ているようだ。
「あっやばっ!」
そう言いながら[危険察知]が反応し、その反応に従い距離をさらに取ると、大きな咆哮とともに目の前の[岩の壁]が全て消え、体に痛みを感じる。[外殻]が全損したようだ。
咄嗟にクラウの前に立ち守っていたため、クラウは無事だったようだ。リーゼは傷を負ったようなので同じように外殻が全損したのだろう。
「ここは引こう!」
「分かった!」
「分かりました!」
そう言いながら層の境界に飛び込むようにして通り抜ける。
荒ぶるドラゴンが抜けてこないか確認するように見ていると、少し上空に飛んだ後、竜爪をこちらに向け、一直線に僕を狙って突っ込んでくると、そのまま層に激突した。
頭から血を流すドラゴンは、層の境界に何度も頭を打ち付け、そしてするりと通り抜けることに成功した。
逃げようか迷っていたが、クラウが[火炎]を放ち、リーゼはすでに[斬]を繰り出していた。それによりドラゴンの傷が増えて行く。僕も覚悟を決め「リーゼ!一旦離れて!」と叫ぶ。
[竜巻]を2発重ねると、そこにリーゼの[火炎]が合わさってゆく。そして再度3発の[黒牙]を放つと、たたんだ羽に1発、胴には2発が深く刺さる。
次の瞬間、グリーンドラゴンが再度上へ向けて大きく吠えると、そのまま横へと倒れて行った。
僕が力が抜けたように地面にへたり込むと、リーゼが飛び上がって喜んでいる。そんなリーゼを、僕と同じように座り込んでいるクラウと一緒に眺めていた。
さらにリーゼはグリーンドラゴンから出たスキル玉を指差し、「つんしていいの?私がしていいの?」と確認していたので、「いいよ。つんしちゃって」と返しておいた
―――スキル[不可視の風]を覚えました。
「不可視の風だって。無数の風の刃を放つって書いてあるよ」
「何それカッコイイ!」
「散々喰らったあの攻撃でしょうね。私もぜひ使ってみたいです」
僕は重い腰を上げて検証するため、近くにある岩山エリアへと向かった。
結果、岩肌に無数の傷を付け、3体の蛇が瀕死となる程の威力を見せてくれたが、広範囲に広がるほぼ見えないその攻撃と、それを狭めたりのコントロールができない、使いどころが難しいスキルであった。
消費魔力は30であるため、連発は今のところ考えられないので、出合い頭に殲滅するためのスキルとして使っていこう。
さらにリーゼとクラウも、その後に確認した能力板を見せ合い、2人で喜びハイタッチしていた。
こうして初めてのドラゴン討伐が無事に終わった。
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グリーンドラゴン
本来は王都北西部・魔の森の最深層、岩山エリアに巣を作って生息している。
固有スキルの[不可視の風]と言う広範囲のブレスと、破壊力抜群の竜爪での攻撃を繰り出してくる。[不可視の風]の消費魔力は30その表皮は固く魔法耐性もあるので、固い表皮を貫くような物理攻撃スキルで倒すのが一般的。その体の全てが素材として有効活用される。
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