60 ぶっとばしたら良いんじゃない?アレスが
「ほへー」
「これは、凄いですね」
主街地のギルトと比べても見劣りしない大きな建物に2人が驚く。大きさだけなら主街地の冒険者ギルドより大きく見える。
少し緊張しつつも中へと入ると、体格の良い冒険者たちが多数でにぎわいを見せていた。
朝の忙しい時間が過ぎたのか、受付の列にならぶ冒険者たちはまばらだった。とりあえず5つある受付の右端のお姉さんのところまで足を進める。
「ちっ!」
ふいに舌打ちが聞こえその方向を見ると見覚えのある顔が…誰だっけ?
スキンヘッドにロン毛にデブ神官…
その3人がこちらを少し睨んでいるが、視線を送ると逸らされた。
『ねえあそこの、右側のあの3人って誰だっけ?』
2人に[絆の心]で確認すると、2人はちらりとそちらに視線を送る。
「あー!」
リーゼが叫ぶので3人がこちらを向いた。
そして再度舌打ちされる。
『だめですよリーゼ。何のためにこうやって話してるのですか』
『ごめーん。でもあれってあれだよね?』
まさかのリーゼが覚えているとか…『誰だっけ?』と再確認。
『王都の竜でしたでしょうか。アレスが王都で叩きのめした…』
『そうそう』
『ああ。思い出した…なんたら男爵とかの…』
確かニガリッソ男爵だったかな?それの支援するクランに所属してるから、あまり関わらない方が良いとか言ってたよな。
『面倒にならないように早めに依頼を聞いてしまいましょう』
『え?ぶっとばしたら良いんじゃない?アレスが』
「待ってよ!あっ…」
リーゼの物騒な提案につい声に出てしまう。
横目で確認すると視界の端にこちらを睨んでるっぽい3人が…
ため息つきつつも、止まっていた足を動かしお姉さんの元へたどり着く。
「あら僕。冒険者の登録?」
「いや、違うくて…」
いい加減このやり取りは面倒だ。と思いギルドカードを出す。今度から初めての場所ではこうしとこう。
「ごめんなさいね。Dランク冒険者、アレスくんね。うーん、じゃあ、ちょっと待っててね」
そう言うと褐色のたわわなお胸のお姉さんは、一番左のスレンダーな長身の凛々しいお姉さんのところまで行くと、何やら話をした後、そのお姉さんがカウンター下から出した封筒を受け取り戻ってきた。
「お待たせ。これが依頼の内容。確認したら不明点をあの端のお姉さんに聞いてね。私はラクーシャ、あっちはシャルロット。よろしくね」
「よ、よろしくお願いします」
話すたびにたわわが揺れるので頬が緩む。そして外殻が削られてゆく感覚に頬を引き締める。全損は免れたようだ。
その後、2人もギルドカードを出して自己紹介。改めて『親愛の絆』とパーティ名を名乗っていた。
その流れで談話室を借りて封筒の中身を確認する。
その時には、あの3人はすでにいなかった。
◆◇◆◇◆
封筒の中身を熟読する。
どうやら依頼主は王家のようだ。他言無用だとか。
クラウは追い出したくせに依頼するなんて…と少し怒っていたが、「冒険者剥奪とか処刑とかじゃなくて良かったじゃん」と言って宥めておいた。
調査はベイリン領側から『魔の森』に入る事、最深部の様子を確認すること、報告は定期的に北部の受付、シャルロット嬢へ口頭で、ということだった。
さらに期限は無期。報酬は相応のものを、できれば長期で原因を探ってほしいとのこと。魔物暴走とその他の違いなどは同様にシャルロット嬢に確認してほしいとのことだった。
僕は備え付けの魔道自販機から出した紅茶を飲みながら、ため息をついた。結構長期間の調査になりそうだと…初めての調査任務でなんと重たい内容だとも思った。
その時、談話室のドアがノックされる。
「失礼します」
そう言って入ってきたのは、シャルロットさんだった。
銀の長いストレートヘアに長身、姿勢が良いからなのか凛としていて強そうだ。というか多分強いよねこのお姉さん。立ち振る舞いがどことなく母を見ているようだった。
まずはと自己紹介からはじまり、調査内容の再確認から魔物暴走の兆候などを細かく教えてくれた。
それは最深部の魔物の飽和から始まり、それらのストレスが限界値を超えると外を目指し移動するのだとか、浅い層の魔物が外に出る分には日常的にあるとのこと。
なので最深部のエリア内の魔物の飽和度を確認してほしいという事らしい。
だが、正直通常の状態がどの程度かわからないし、ドラゴンのイラつき具合なども当然ながら分からない。そんなことを伝えると、とにかく暫く観察していて、層の境界部分に度々執着するようにした仕草がないか確認してほしいとのこと。
話を聞くと、シャルロットさんも僕のクラスやスキルについてすでに知っていたようだ。僕の個人情報が知らない間に駄々洩れているのを感じで憂鬱になってきた。
とりあえず、ドラゴンの監視だ。気配を殺し何日か夜営したらなんとかなるかな?なんて思っていたが、考えてみたら[隠蔽]はONとOFFは自分でできるものの、持続時間は1分程度だ。
消費魔力は5とは言え、連続で使い続けれるものでは無い。ん?まって?1時間に300?今は1時間で90ちょっと回復か…もう少し魔力が多くなればいけるかな?そんなことを考えていた。
一応、最深層の手前の層からの確認をすることになるだろうが、その深層にだってそれなりの魔物が居る。だが常時[隠蔽]を使えるようになれば大丈夫にも思えた。
何とかなりそうだ、とシャルロットさんに伝えると「たまに気配を出しておびき寄せ、それで最深層を何度も越えようとしたり、超えてしまうかを確認してほしい」とも言われてしまう。
「いやいや、一度でも気配を見せたら執拗に追われそうなんですけど?」
「気付かれたら[隠蔽]を使ってもダメなのですか?」
「分からないですけど、多分気配を消しても動いたら補足されるかもしれないでしし、正直あの目が怖いです。お前覚えておけよって言われているようで…」
その後もシャルロットさんに何度か無茶を言われてしまう。
これが普通なのだろうか?
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ラクーシャ
ブラウンのウェーブヘアに褐色肌、たわわなお胸のお姉さん。ベイリン領・冒険者ギルト・北部分所の受付のお姉さん。彼氏なし。
シャルロット
銀の長いストレートヘアに長身スレンダーな長身の凛々しいお姉さん。ベイリン領・冒険者ギルト・北部分所のサブマスター。受付も兼任。彼氏なし。自分より強い男が好きだと公言。
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