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49 これから生死を共にする仲なのに?

「あれで、いいのかな?」


年が明け、充分に休息をとった僕たちは指定されていた王都の中央地区、王城から数百メートル程まで近い場所に人だかりができているのを見つけた。

護衛の兵士であろう鎧を着こんだ人たちが見える。ざっと見て20名前後はいるかもしれない?


「あの、アレスと言いますが皇太子殿下の護衛任務でやってきたのですが…」

まばらに集まっていた民衆の間を抜け、手前の兵士に声を掛ける。


「おお、アレスと言ったか!よく来てくれた。ディーク!来てくれ!」

その兵士さんの大きな声で呼ばれ、ふとましい体をゆらしながら出てきたのは、長い金髪にひょろりとした口ひげの男だった。


「マルチス大隊長殿!お呼びですか!」

話しかけた男性は大隊長さんだったらしい。ディークと呼ばれた兵士はマルチスさんにペコペコ頭を下げている。


「この子たちが今回殿下とご一緒する冒険者さんたちだ。アレスくんと、リーゼロッテちゃんとクラウディアちゃんだったかな?」

ニッコリと笑顔を浮かべたマルチスさんから紹介され、慌てて頭を下げ順番に自己紹介をする僕たち。


「こんなガキどもが殿下と一緒に狩るパーティですか?大丈夫なのでしょうか」

ジロジロと値踏みするような視線を向けてくるディークさん。


「おいディーク!今回お前が隊長となったとは言え俺もいる。あまり迂闊な言動はつつしむことだ」

「はっ!失礼いたしました!では私は準備がありますので!」

そう言って軽く礼をすると、僕たちを睨むように目を向けた後、バタバタと戻って行った。


「すまんな。あれが今回の仕切りを任された奴だ。どういう訳か今回隊長に抜擢されてしまってな。不安でたまらないから今回無理言って同行させてもらったんだ。何かあれば俺に言ってくれ。

ああ、そうそう。聖騎士隊大隊長のマルチス・レコマルドだ」

爽やかな笑顔でマルチスさんに握手を求められる。あの隊長さんはたしかに大丈夫なのかと心配ではあるが、この人がいれば安心だとは思った。


そして暫く出発の時間を待つ。

すると、先ほどのディークさんと他の兵士に囲まれながら、男の子がこちらに歩いてきた。その豪華な貴族服をきた身なりから皇太子殿下だと思った。


慌てて膝をつき頭を下げる。

横目で2人もそれにならって膝をつこうとしているのが見えたのだが、それは「いやいや、そんなに畏まらないでよ」と殿下から声で動きが止まる。2人もかなり緊張しているのかも。


ゆっくりと立ち上がると、ニコニコとした笑顔を見せてくれた殿下。


「僕が今回君たちにお世話になるエクワード・ユルレイだ。気軽にエドと呼んでくれていいよ」

気さくに話しかけられたがどう返して良いのか分からず困惑する。


「殿下!そのような下賤な者どもにそんな」

「うるさいよ」

「うぐっ」

ディークさんが殿下のひとことに大量の汗をかいているようだ。


「エクワード殿下。恐れながらそのように砕けた呼び方は、こちらとしても緊張してしまいます。人目もあればなおさらで…」

僕も必死で訴えかける。


「えー?これから生死を共にする仲なのに?」

「それは…」

「大丈夫大丈夫。何か言われたらそいつの首切るから。マルチスが物理でね」

「くびっ…それは…」

殿下の物騒な言葉に言葉がつまる。両隣の2人も固まっているようだ。さっきから一言も発していない。


「ちょっと緊張しすぎだよ?それだと僕も不安になっちゃうよ?」

「分かり、ました。今すぐには無理そうですが徐々に慣れるよう努力いたします」

僕の絞り出した返答に満足したようで、ディークさんに「そろそろだね」と伝えると、慌ただしく動き始めメイド服を着た女性2人に誘導される殿下とそれを追う兵士たち。


それらを息を吐き出しながら見ていたが「アレクたちも」とその後を追うように大隊長マルチスさんに指示された。


そして目の前には大きな馬車があり、その扉を開けて待機している御者がいる。

扉の上には簡素化された竜に王冠、四隅には火水風土のマークが入った王家の紋が付いている。実家の馬車と比べてもその豪華な見た目に見入ってしまう。


「アレク様。こちらへ…」

御者と思われる男性からそう呼びかけられる。なぜ?


「アレク、お前は奥だ」

「奥?何のことでしょうかマルチス大隊長殿…」

混乱してしまうが、まさかと思うが僕もあれに乗れと言っているのだろうか?


「マルチスでいいぞ。お前たちも当然あれにのるんだぞ?同じパーティだろ?早く行ってこい。殿下をお待たせするのか?」

「は、はいー!」

殿下をお待たせと言われてしまえば大急ぎで馬車の扉の前まで移動する。


両隣からも2人の悲鳴のような声が聞こえたが、僕でもどうしたら良いか分かってないから、成すがままになるしかない。2人も頑張って耐えてほしい。

馬車の扉の前に立つと、侍女の一人に手を添えられ一番奥の席へ座ることになる。やばい、ふかふかだ!実家の何倍も柔らかい座席に、汗で汚したらどうしようと考えてしまう。

視線をきょろきょろさせ、いざという時の逃げ場を探す。


「良かった。普通にこっちも扉があるよ」

反対側にも扉があったのでホッとする、いざとなればこちらから飛び出すことも可能だ。


「何が良かったんだい」

「ふぁい!」

不意に殿下に声をかけられ変な声で返事をしてします。なぜ隣に?


「ふはは。アレスはおもしろいね。緊張しすぎだよ。言葉遣いとかで貴族だっていうのは分かるけど…さすがにひどいよ?」

「すみません。それと貴族、ではないです」

「そうなのかい?」


殿下の話を聞いていると、目の前にカチコチとなったクラウと、殿下の正面に座ることになり、オロオロしながらクラウとなんとか場所を入れ替えようと、四苦八苦しているリーゼを見ることになる。

いやさすがに無理だよリーゼ。


その後、侍女の2人を最後に載せた馬車は『魔の森』に向け出発した。


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ディーク・ダイライエ

皇太子殿下の警護を主にする第一聖騎兵隊の隊長。父親は騎士爵。昨年までは城内警備を担当していたが、地道に根回しした甲斐もあり、今回の護衛任務に第一聖騎士隊のそれも隊長として抜擢される。今回の任務で自身も手柄を立てて騎士爵を目指す。ふとましい体に長い金髪、口元にはひょろりとした口ひげで自分は選ばれた人間だと常日頃から感じているため、平民は意のままに扱っても許される存在だと思っている。普段は平民と触れ合う機会が一切無いため言動に問題は無かったのだが…


マルチス・レコマルド

聖騎士隊大隊長。父親も聖騎士隊に所属していた時に騎士爵を得ているが、自身も長年聖騎士隊に貢献し、その長として数々の功績を残し、就任時には騎士爵を得ている。優しそうな笑顔が特徴の年配男性。鎧の左腕には大隊長を示す真っ赤な王家の紋入りの布当てが巻かれている。


王家の紋章

シンプルな竜に王冠、四隅には火水風土のマークが入った王家の紋。謀れば死罪はもちろん、似たような意匠については認められていない。特に竜と王冠は王家に類する家のみに許されている。

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