ひとりかくれんぼ 後日談
これ書くのは久しぶりでいろいろ設定忘れてしまっていた・・・。
おかげでちょい文章おかしいかも・・・。
翌日、浩一と香也乃は昨日儀式に使った人形を燃やすために川原に来ていた。
今日は休日だったがまだ朝だということもあり川原に人の姿は無く、パチパチとたき火の中の人形が燃える音が妙に大きく聞こえた。
浩一は燃える人形を視界の端に捉えながら昨日の体験をノートに書いていた。儀式の方法から始まり儀式中に起こったこと、そして人形のことも事細かに書き記していく。
燃えていく人形をジッと見つめていた香也乃がそれに気づきノートを覗き込んできた。
「浩一、それはなんだ?」
「あれ? 呼び方…」
「言っただろう? これからは私たちは一蓮托生、運命共同体だと。
長い付き合いになるんだからいつまでも君やらさんを付けるのは嫌だし、下手に後回しにすればタイミングを逃すからな。 今変えさせてもらった」
「あー、あれ本気なんだ……」
「冗談であんなこと言うものか。 だから私のことも呼び捨てで呼んでくれ」
「あはは……善処します」
あまりにもストレートな香也乃の言葉に浩一は苦笑した。
口ではなんやかんや言っても浩一は嫌がっているわけではないのだ。
「それでこれのことだっけ。 このノートに昨日のことを記録してるんだよ。 また同じような目にあっても対処できるようにってね。
この前の神社での事も書いてあるけど……読む?」
「もちろんだ!」
浩一がノートを渡すと香也乃は早速ノートを開き読み始めた。
ノートを香也乃に渡し手持ちぶさたになった浩一は視線を人形に移した。
人形はまだ燃え尽きることなく燃えていた。未だ形を保っているのには執念すら感じる。
その無機質な瞳は浩一を向けられている。
だがすでに脱け殻になった人形に何かできるわけでもない。
浩一がその辺にあった棒でつつくと呆気なくその体は崩れ灰となった。
それを見届け浩一はこれでようやくひとりかくれんぼは終了したのだと実感した。
あとは後始末をするだけだ。
たき火を消すための水を汲みに浩一はバケツを片手に川に歩いていった。
―――水辺には霊が集まる。
そんな話を誰でも一度は聞いたことがあるだろう。
昔話でも幽霊が出る場所といえば井戸から始まり水路や橋の下など水辺での怖い話には事欠かない。
その例に漏れずこの川原にもそういう類いの噂がある。
ここで水死した男の子の霊が出るというどこにでもあるような噂だ。
だが何故幽霊は水辺に集まると言われるのだろうか?
浩一は前々から不思議に思っていた。
三途の川というものがあるように水と幽霊は切ってもきれない関係なのだろうとはわかる。
だが三途の川があるから水辺に霊が集まるのか?もしくは水辺に霊が集まるから三途の川が連想されたのか。
それともただ単に水辺での死者が多いだけなのか。
今の浩一にはわからないことだらけだ。
だがこうしてオカルトに関わっていけばいつかわかる日が来るのではないか。そんな期待もあった。
そんな事を考えながら歩いていくと目的の橋の下に着いた。
この川は全体的に見て浅い場所が多いのだがその反面突然深くなる場所も多い。
その上水も濁っているので底がよく見えず深みにハマる事故が多い。
だが橋の下は深い場所ばかりなのである意味危険がわかりやすく水を汲む分には安全な場所だった。
バケツを水に沈めた所で浩一は昔より川の水が濁っていることに気づいた。
浩一が子供のころには底が微かに見える程度には綺麗だったはずだが今では底がまったく見えないほどになっている。
ふと浩一は水辺でも流れが急な場所や水が濁っている場所に霊が集まるという話を思い出した。
そう考えると案外水辺に霊が多いのはそこで死んだ人が多いからという話が正しいのではないだろうか。
川の水をバケツで汲み上げた時、浩一は水中に何かあるのに気づいた。
―――顔だ。
水中に浮かんだ男の子の顔がジッと浩一を見つめていた。
(ああ、噂は本当だったのか)
そんなことを考えながら浩一はその顔を見つめ返す。男の子は何をするでもなくただ浩一を見続けている。
はぁ、とひとつため息を吐いた。
「こんなとこにいつまでもいないでさっさと成仏しなさいな」
男の子の霊にそう言うと浩一は踵を返した。
すでにただの幽霊は見飽きているし子供の霊は散々相手にしたことだってある。
明らかな殺意や意思を持っているならともかくただそこにいるだけの霊に怯える理由は無い。
見た感じ地縛霊ではないようなのでイタズラ好きの浮遊霊といったところか。
それとも未だに自分が死んだことに気づかず遊び回っているのか。
どちらにしろ浩一はあの男の子の霊にこれ以上関わる気はなかった。
すべての霊をどうにかできるわけがないのだから会う霊会う霊に構う訳にはいかないのだ。
あくまで自分の興味のために霊と関わる。そう浩一は決めていた。
浩一が戻ってくるとちょうど香也乃がノートを読み終えるところだった。
たき火に水をかけ後処理を済ましている横でノートを読み終えた香也乃は満足げな顔をしている。
「ああ、そういえば聞きたいことがあるんだが」
「ん? なにさ?」
「昨日助けてくれた女の子の名前はなんだ?」
昨日助けてくれた女の子――十中八九、鈴の少女のことだろう。
そこで浩一は気づいた。―――鈴の少女の名前を知らないのだ。
「えーと、その・・・」
「・・・まさか知らないのか?」
「いやだって、何が言いたいのかなんとなくわかるだけで会話できるわけじゃないんだよ? 名前なんて聞けるわけ無いよ」
「いやそれも十分すごいと思うが」
「文字も書けないみたいだしまともなコミュニケーションとれたことないんだよね」
「でもジェスチャーである程度はできるんじゃないか? 質問する形にすれば”はい”か”いいえ”で答えられるだろう?」
「そっか、その手があったか。 なら早速!」
浩一は「おいで」と呟くと手首の鈴を軽く振った。
――――チリン
鈴の音が鳴ると同時に少女が現れた。
少女は浩一の足にしがみつくと、どうかしたのか、というかのように首を傾げた。
浩一は軽く少女の頭を撫でると話を切り出した。
「突然で悪いんだけどいくつか聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「・・・・・・(コクン)」
少女の了承は得られた。だがいまいちどう質問すればいいのかがわからない。
それを見かねたのか香也乃が少女に話しかけた。
「いきなりで悪いが君の名前を教えてくれないか?」
出来るだけ声色をやさしめにして香也乃は話しかける。だが問いに対して少女は首を傾げるだけだった。
その反応に浩一と香也乃は顔を見合わせた。話が通じていないわけではなさそうだがどうもおかしいのだ。
不意に浩一の脳裏にある可能性が浮かんだ。
「もしかして・・・名前が無いのかな? 食うにも困るような村では口減らし前提で名前付けなかったって話もあるし」
「その話は聞いたことがあるが何度聞いても胸糞悪い話だな」
顔を歪め香也乃は吐き捨てるように言った。それに関しては浩一も同意見だ。
「よし決めた。 この子に名前を付けるぞ」
「え?」
「名前はとても大切なもので言わば生まれた証なんだと私は思ってる。 それが無いなんてかわいそうだ。
それにこの子は今、新しい人生を歩んでいるとも言えるだろう? だからこの契機に名前を付けるのはちょうどいいじゃないか」
「まぁそういうことなら俺は反対しないよ・・・でも本人には了承とりなよ?」
「もちろんだ!」
言うが早いか香也乃は少女にあれこれ話しかけ始めた。
その様子に浩一はため息を吐く。だがその顔には笑みが浮かんでいた。
――――しばらく後。
「浩一! この子の名前が決まったぞ」
「随分時間が掛かったね」
あれからおよそ30分経っていた。
少女は何事も無かったかのように再び浩一の足にしがみついた。
それを微笑ましそうに見ながら香也乃は
「あの子とじっくりと話し合ったからな」
「・・・話せたの?」
「いや・・・正確にはあの子が気に入る名前が出るまで私が案を出し続けたんだ」
30分もかかったということはどれだけの数の案が出たのだろうか。
少女の気に入る名前がなかなか出なかったのか、それとも香也乃のネーミングセンスがアレなのか。
少し気になったがそこには触れないようにして浩一は話を進めた。
「それでどんな名前を付けたの?」
「ああ、そうだな紹介しないと」
香也乃は浩一の横にしゃがむと少女の頭を撫でた。
「この子の名前は鈴音。 鈴に音と書いて鈴音だ」
「鈴音か・・・いい名前だね。 やっぱりこれを参考に?」
浩一は鈴をつけている右腕を持ち上げる。すると鈴がチリンと音を立てた。
「ああ、この子にぴったりだろう?」
「うん。 よかったね鈴音」
―――チリン
そう名付けられた少女――――鈴音は普段よりも機嫌が良さそうに鈴を鳴らした。
―――――――
香也乃と別れたあと浩一は一人物思いにふけっていた。
「名前は生まれた証か・・・人でも物でも、何であっても名前がなくちゃ意味が無い・・・」
浩一はノートを取り出し眺めた。まだ新しいノート。それは当然だ。これを浩一が買ったのはほんの一ヶ月と少し前のことなのだから。
だがそのただのノートは浩一と香也乃にとって意味のあるものになっている。
「ならこれにも名前を付けてあげないとね」
少しの間浩一は考え込む。
しばらく考え込んだ後おもむろにネームペンを取り出しノートの表紙にタイトルを書いた。
――――怪奇見聞録。
これからも怪異に出会えますようにという願いと無事に見続けられますようにという願いをこめて付けた名だ。
(俺にしては洒落たネーミングか)
浩一は満足そうに頷くと家路に着いた。そして雲ひとつ無い青空を見上げ呟く。
「さてさて、次はどんな事が起こるのやら」
というわけでひとりかくれんぼ編終了。
次は完全オリジナルの話なんで時間がかかるかもしれない・・・。




