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17 和歌の登校拒否

  和歌ちゃんが学校に来なくなりました。病気やケガではなくて、登校拒否です。もう1週間も、学校に来ていません。


 その原因は大好きなおばあちゃんの認知症が進み、隣町の老人スミノホームに入居させられたからです。

 ある朝、ホームから迎えの車が来て、おばあちゃんは無理矢理に連れていかれてしまいました。

 おばあちゃんは車に乗りたくなくて、「いやじゃ、いやじゃ」とあばれました。和歌はそんなおばあちゃんを見たことがありませんから、大ショックでした。


「和歌ちゃん、助けて、助けて」

 おばあちゃんが叫んで暴れたので、和歌が抱きついて行かせないようにすると、お父さんが強い力でふたりを引き離しました。お母さんのほうを見ると、「だめよ」と言いました。

 

 ホームの車は行ってしまい、おばあちゃんの部屋にはもう誰もいません。

 おばあちゃんのことを思い出すたびに、和歌はかなしくて、さみしくて、ガラスがわれてしまったように元に戻せないくらい心が痛いのです。

 和歌はおばあちゃんをホームにいれた両親が大きらいになって、部屋から出てこなくなりました。


 和歌が登校拒否をしていること知っても、めぐみ先生は「そのうちに、出てきますよ」とのんびりしていているように見えました。

 いつもはすぐに行動する先生なのですが、今回はどうしたのでしょうか。


「そのうちって、いつ?」とそう太郎がききました。

「1ヵ月か2ヵ月か、いや1年か2年、もっと?」なんて言うので、生徒はびっくりです。

 

 それで先生ですか、という気持ちが生徒の顔に出ています。

「アメリカでは知らないけど、日本では登校拒否は大問題じゃよ」と明夫が言いました。

「じゃ、どうすればいいと思う?」とめぐみ先生がききました。

「先生なんだから、何か方法を考えてください」と愛子が言いました。


「そんな方法があったら、日本中から登校拒否がなくなっているわよねぇ」

「それはそうだけど、何とかして」とくるみです。

「わたしは新米教師だから、わからないことが多いのよ」


 めぐみ先生があまりに頼りないので、生徒は自分たちで問題を解決することにしました。

 まず学級委員のそう太郎と明夫が宿題ノートをもって、和歌をたずねました。でも、和歌は「おばあちゃんが戻ってくるまでは、ぜったいに学校には行かない」と部屋のドアをあけてくれません。


 次に、れいか、愛子、くるみの女子3人組が行きました。部屋にはいれてくれました。

 最近では、おばあちゃんの認知症が進み、2ヵ月で3回もゆくえ不明になっているので、家ではめんどうを見るのはできないから仕方がないのだとれいかが説明しました。

「うちにいたらだれが面倒をみるの?」

「わたし」

「和歌は学校があるから、できんじゃろ」

「できるかどうか、やってみんとわからんじゃ」と和歌が口をとがらせました。


「お父さんもお母さんも外で働いていて忙しいのだから、うちでめんどうをみるのは無理」と愛子です。

「そんなら、わたしが学校をやめて、めんどうをみる。おばあちゃんに会いたい」と和歌が泣きました。


「そんなこと、できねぇ。子供じゃけん」とくるみが言いました。

「あんたら、もう友達じゃない。友達なんか、いらんじゃ」

と和歌がおこって、「おばあちゃんと暮らせないんなら、もう死ぬ」とその日から食事もとらなくなりました。


 ハンガーストライキを始めてから3日たちました。

「人は何日食べないと死ぬんじゃろうか」とそう太郎が言いました。

「大体1週間くらい。でも、和歌ちゃんやせているから、3日か4日かな」とれいかが言いました。

 それじゃ、あと1日で和歌ちゃんが死ぬかもしれない。

 大変じゃと、みんなは廊下を走って、職員室のめぐみ先生のところに行きました。


「和歌ちゃんが死んじゃう、死んじゃう」

 生徒たちがカラスの子みたいに大きな口をあけて、肩をふるわせて泣きました。

「わかりました。だから、落ち着いて」とめぐみ先生が言いました。

 そして、「よし」とつぶやいて、立ち上がりました。生徒たちは何が「よし」なのだろうかと思いました。


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