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女はへそくりで財を成す?

そのコンビニは、都営地下鉄のT駅から徒歩12分くらいの住宅地にあった。少し歩けば、土手があり、夏には花火大会の観覧で、それ以外にも草野球やバーベキュー大会などで、沢山の庶民の憩いの場所であった。又、道路を隔てた向かい側の都営住宅には小さな公園風の場所があり、近所のお年寄りが集う交流所になっていた。

コンビニは大手のニコマートと法人でフランチャイズ契約をしていた。代表取締役は御年80歳の花山金太郎。金太郎の一人娘の信子は商社マンと結婚し、海外に在住、妻は半年前に病死していた。信子と美子は学生時代からの親友で、信子から美子は金太郎のことを頼まれていたのだった。

並子は、母と一緒にこのニコマート新土手1丁目店を訪問した。

「実は、あなたが帳簿を見たらわかるから言うけど…、私、会社に投資しているの。それで、役員にもなっているのよ。」

新土手1丁目店に向かう道すがら、母美子は並子に語った。

「コンビニは立地もよくて、経営も順調だったのよ。でも、半年前に信子のお母さまが亡くなられたのだけど…それから、様子がおかしくなってきたの。」

並子には良妻賢母のおとなしい母がコンビニに出資したり、役員をしたりしていたことが意外だったが、同時におしゃれな母の姿に納得もできた。父の徹男はとても、妻のおしゃれに余分なお金を出すような男ではなかった。

法人と言っても、個人経営から法人成りをした小規模な会社であった。勿論、コンビニ経営は楽なものではなく、花山金太郎と妻良子は、夫婦二人三脚で何度も赤字店舗を運営し、何度目かの挑戦で新土手1丁目店を運営することになった。なので、新土手1丁目店を挑戦する際には、資金も足りず、娘の信子は反対した。しかも、間が悪いことに、金太郎の妻良子がハードなコンビニ運営と家事の両立から、右足を疲労骨折し、杖がなければ、歩行できなくなったのだった。今後は、金太郎一人で店舗運営をしなくてはならない。

しかし、その頃、信子に頼まれて、金太郎夫妻と交流があった美子は金太郎の熱意に負けて、連帯保証人やら、出資やらをしたのだった。

「丁度、へそくりがあったのよ。最初は、私も信子さんに言われて、金太郎さんにコンビニなんかやめなさいって言ったのよ。でもね、金太郎さんが僕はコンビニしかできないからって言われて、頑固でね。それで、この人から生き甲斐を取り上げたらいけないって思ったのよ。」

美子は、おとなしい女性だ。だけど、そういう女性の多くがそうであるように、一度決心したら梃でも動かないそういう芯が強い女性なのだ。美子は、金太郎夫妻を支援すると決心したら、親友を自分が責任を持つと言って説得をした。そして、金太郎夫妻に物心両面での支援をし続けたのだった。

 金太郎夫妻は、美子の気持ちに応えた。金太郎は以前から使っていたアルバイトの井田太郎を店長にし、骨身を惜しまず働いた。妻の良子は店舗運営に直接は関わらず、経理や事務仕事と家事をこなし、夫を支え続けた。その甲斐があってか、新土手1丁目店は毎年売上を伸ばし続けた。そして、黒字が続いたある日、金太郎は美子に法人の株主と役員になってほしいと頼まれたのだった。

「お母さん、良いことしたわね」

並子は母に素直に感心した。昨今、弱肉強食の世の中である。その最たるものが振り込め詐欺だ。なのに、美子は見返りも求めずに、親友のご両親を支えてきたのである。全く世の中の逆をしていたのである。


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