後
「どこの国出身ですか?」
「私はこの世界から見たら異世界、ニライと言われる世界から来ましたの」
「はあ、では何故ラーメン屋を始めたのですか?」
「比較的、参入障壁が低くお素人でも開業しやすかったからですわ」
「ほら、こう、ラーメンを食べて感動したとか・・・エピソードをお願いします」
「なろうラーメンですわ」
「チェーン店ではないですか・・・そこで修行したとか?」
「鑑定をして成分を分析しましたの。そこからニライの調理法を取り入れましたわ」
私はテレビの取材を受けましたの。
だけど、皆様、目を丸くしておりますわ。
「好きなアニメは?」
「見ませんわ」
「日本の事、どう思いますか?」
「そうですね。文明は遅れておりますが、皆様、一生懸命に生きていて素晴らしいですわ」
「じゃあ、日本のすごい所を・・・」
「そうですね。無駄にエネルギーを使って非効率的ですわ。
でも、魔法がないからこそニライなら平民でも出来る魔法を大規模な発電所とかで再現する知恵が素晴らしいですわ」
「それじゃ、ダメだ。テレビで放映できないよ!」
「ディレクター?」
10人長かしら、ディレクターという方が出てきたわ。セーターを羽織っていらっしゃるわね。
「コスプレ不思議ちゃんで行こう。出身はベルギー、好きなアニメはジブリ、憧れて日本に来てラーメンを食べて感動したって筋書きだ!」
「嫌ですわ。嘘ではないですか?」
「演出だよ。でないとテレビ出られないよ」
「出なくて結構ですわ」
「「「ハアーーーー!」」」
皆さん、驚かれましたわ。
「いいのか?信じられない。セブンテレビの朝の情報番組だぜ・・」
「テレビだよ・・・」
「帰って下さいませ!」
「あ~あ、貴重な時間無駄にしたぜ!ヒロインラーメンに取材に行こう」
帰って行きましたわ。
このためにお料理を準備しましたのに・・・
カラカラ~
「もう、取材終わった?」
「ヨシダさん。はい、少し伸びましたが、良かったら悪役令嬢ラーメンお食べになりますか?無料で良いですわ」
「え、本当、有難う・・・ところで会話、スマホで録音しておいたからSNSで流しておくよ」
「まあ、そうですの。でも心配ですわ。テレビに嫌われてしまいましたわ」
「大丈夫、昨今の情勢だと、テレビに嫌われた方が勝ちだぜ」
ヨシダさんの仰る通りお客様が大勢来るようになったわ。
ザワザワザワ~
「店長、水!」
「はい、ただいま」
「まだ?」
「申訳ございません・・・」
お客様が多くなったわ。
私一人では大変だわね。何よりもお客様にご迷惑がかかるわ。
「フランソワーズさん。そろそろバイトを雇ったら?」
「でも・・・」
「フランソワーズさんが心配だよ。俺がネットで募集かけてあげようか?」
「いいのです。実はあてがあるのです」
そう、この世界にはもう一人来ている令嬢がいる。エミリー様だわ。
お店の休日に自転車で彼女の店に向かう。
店名はヒロインラーメンだわ。
ドアを開け店に入る。
「らっしゃい!・・・何よ。フランソワーズ様・・・冷やかしに来たのかしら!」
「エミリー様、私はお客様ですよ」
食券を出すと彼女は無言で受け取り。厨房に入った。
13時・・・それにしてもガラガラだわ。私一人だわ。
彼女の店は上手くいっていないと噂で聞こえて来る。
そう、彼女も殿下に選ばれなかった。ポッと出の聖女様に奪われたわ。
店内を見回す。ドレスにエプロン姿、鉢巻きを頭に巻き腕を組み厳つい表情のエミリー様の写真が店内に飾ってあった。エミリー・ランダース。ニライ世界ノースラリア王国伯爵家出身・・・
注意書きが多い。
スマホを見ながら食べるのは禁止
無言で食べるべし
魂を込めた一杯心して食べるべし。
6歳未満は入店禁止
「お待ち・・・」
「はい、頂くわ」
ラーメンを啜る。味は悪くない。いえ、美味しいわ。
「丁寧に作っているのね」
「そうよ。麺は特注、調味料も食材は全てプレミアを使っているわ・・・私の味について来られないのが悪いのよ」
「そう・・・でも、子供向けのメニューも。餃子やサイドメニューがないのね・・」
「私はラーメン一筋なのだから、それ以外は邪道よ!」
「そう・・・ごちそうさま、また来るわ」
あの慈愛の令嬢の面影は見るカゲもないわ。
☆☆☆回想
『皆様、フランソワーズ様は悪くないわ。少し殿下への愛が強すぎたのです』
『さすがエミリー様!』
『慈愛の令嬢だわ』
『さあ、フランソワーズ様、共に手を携えて王国をもり立てましょう』
エミリー様が手を差しのばしてきたわ。
私はこのとき、孤立無援だったわ。
私はエミリー様の手を払いのけ。
『まだ、負けていませんわ。殿下はきっと私を選ぶはずだわ。能力も実績も全て私が上だわ』
この時、エミリー様は微笑んでいたわ。
『ええ、そうね。きっとそうだわ』
余裕の女・・・私はこの時、負けを確信したわ。
・・・・・・・・・・・・・・・・
あれから一月、ヒロインラーメンは廃業したわ。
SNSの評判も良くなかったとヨシダさんから聞いたわ。
「子供でも一杯なのに子供向けのドンブリがないそうだ」
「そう・・・」
「『職人ってお前、何歳だよ』と書き込みがあったぜ」
どうしようかしら・・・私は・・・
悩んでいると、ヨシダさんが背中を叩いてくれたわ。
「行ってあげなよ」
「どうして・・・そう思うのかしら」
「友だろう?分かるよ。店長が気にしているのをよ」
「そうだ、行ってやりなよ」
「臨時休業の看板をだしな。客が来たら俺たちが説明をしてやるよ」
「グスン、皆様・・」
私は彼女の店に自転車で向かう。シャッターが降りている。その前に体育座りをしているエミリー様がいたわ。
チャリン♪
「エミリー様」
「グスン、フランソワーズ様、・・・笑いに来たのね」
「そうでなくて・・・と言いたいところですけども、競争相手が没落して笑みがこぼれますわ」
「な、何ですって!」
エミリーは立ち上がり私を睨み付けたわ。
「・・・最高の材料で作って朝4時から仕込みをして、何回もスープを捨てて最高の味を客に出したのよ!」
「ええ、そう素晴らしい情熱だわ」
「SNSで名をあげてラーメン評論家としてバズったわ!」
「素晴らしい努力ね・・」
「テレビにだって取材を受けたのだから!」
「そうね・・・」
「職人令嬢として売り出してもらって・・・グスン、でも、嘘だろとSNSで評判になったわ・・」
「ええ、それは可哀想ね」
「だけど、何故、悪役令嬢ラーメンに客が来るのよ!私は絶対に認めない。グスン、グスン!」
私の胸をポカポカ叩きだしたわ。
そして、私に抱きついて泣き出したわ。
「こんなはずではなかったわ・・・この世界ではチート出来るって思っていたのよ」
「チート・・・私には分かりませんわ。でも、生きるのってどこでも大変ですの」
「グスン、グスン、グスン」
「貴女にはゆっくり自分を見直す時間が必要だわ・・」
それから、エミリー様は私の店で働いてくれている。餃子を作ってもらっているわ。
「餃子の結び目は笑った時の口のようにするのよ」
「はい、店長・・・」
て、店長?と呼んでくれたわ。
私にやっと眷属が出来た瞬間だった。
・・・・・女神歴1079年、西暦2026年、王国は増えすぎた失脚貴族を地球に追放するようになって四分の半世紀が経過した。
追放された貴族子弟たちは日本を第二の故郷としそこで働き、愛を育み。そして子を育て死んでいった。
そう、参入障壁の少ない業界に多くのニライ人が働いていると云う。
最後までお読み頂き有難うございました。




