前
「いらっしゃいませ」
「あ、あれ、外国人?縦ロールにドレス・・・にエプロン・・」
「左様でございます。味はまともなのでご安心下さい」
「え~と」
「食券機がございますよ。わかりづらくて申訳ございません」
「あ、本当だ」
私はフランソワーズ・ドズル
ドズル公爵家の令嬢ですの。
今は、こうして、魔法のない世界でラーメン屋を開業しておりますの。
「う、美味い!厚切りチャーシューに、スープは・・・」
「お豚骨にお野菜をポタージュにしておりますのよ」
「また、来ようかな」
「では会員権は如何ですか?スタンプが貯まるとトッピングサービスですわ。お名前を頂いても」
「是非、吉田と申します」
そう、ここは魔法のない遅れた野蛮な世界・・・
この世界に追放された時を思い出すわ。
☆☆☆回想
『お、お父さま、何故ですの?何故、まだ殿下の婚約者は決まっておりませんわ!』
『すまぬ。エミリー嬢がほぼ内定だ・・・』
『わ、私はきちんと王妃のお仕事出来ますわ!』
『そうではない。選ぶのは殿下だ・・・評判が悪くなった。ニホーンに行きなさい』
『嫌だわ。ニホーンに追放なんて・・・』
『追放ではない。避難だ。魔法のない野蛮な世界だ。チート出来るぞ』
『でも・・・』
『ここは天上界、地獄のようなニホーンで修行せよ。父は信じておるぞ』
・・・・・・・・・・
「あら、もう、閉店の時間だわ・・・のれん下ろそうかしら・・」
その時チャリン♪と呼び鈴がなったわ。
「あの、三人ですが、大丈夫ですか?」
「はい、どうぞ!」
母子三人連れだわ。
「実は、お金がなくて一杯を三人でシェアしたいのですが・・」
「よろしくてよ。どんぶりお子さんの分も出しますわ」
「・・・有難うございます」
・・・フフフフ、一人一杯が理想だけども、そうは行かないわね。
お客様ファーストよ。
☆☆☆回想
『お嬢様、厳しすぎます!グスン』
『あら、そう。なら、辞めなさい』
殿下がいらっしゃる。最高のおもてなしをするべきだわ。
『最上の小麦を選別するのよ。パン一つと言えどもドズル家の威信を見せるのよ!』
『・・・はい』
虫眼鏡で小麦を選別させた・・・
そうよ。私は王妃になるのよ。
だけど、・・・・
『ウグ、お嬢様・・・限界です』
『何ですって、私は3日寝てないのよ。貴方たちも出来るわよ』
私は何も見えて無かったわ。
・・・・・・・・・・・・・・
次の日も営業だわ。スープを仕込んで準備をする。
『ファイヤーエンブレム!』
魔法を使うからガス代は格段に安いわ。
これがチートかしら。何か違う気がするわ。
カラカラ~♪
「あ、ヨシダさん。まだ、営業時間前ですわ。少しお待ち頂けますか?」
「フランソワーズさん。大変だ。スマホ見て!炎上しているよ」
「まあ、炎上?この世界に魔法がございますの?」
「フランソワーズさん無いの?ほら、私のを見て」
「まあ・・・・」
☆お金がないので、悪役令嬢ラーメンに行きました。一杯で三人でシェアすると頼んだら、一杯のラーメンとどんぶり二つ・・・
あり得ない。普通はラーメン三杯持ってくるものでしょう?
こちらはシングルマザーなのに・・・失望しました。ヘルジャパン!
>ヒドいな。画用紙がなくてチラシの裏にお絵かきしている孤児院に画用紙ではなくチラシを送る行為!
>あ~、そうだよ。外人に日本人の心は分からない。おもてなしを理解していない。
>神対応・・・絶えて聞かないな。
>けしからん。高市が悪い!
・・・・・・・・・
「まあ、お値段一杯ですから一杯お出ししたのに・・・」
「それどころじゃないよ。ほら、飲食サービスで☆一つがものすごい勢いでついている・・・こいつら絶対にこの店に来てないぜ」
ヨシダさんのスマホを見たら頭が真っ白になったわ・・
☆☆☆回想
『皆様、聞いてエミリー様、男遊びがすごいのですって!』
『フランソワーズ様・・・噂流すの止めましょう』
『そうですわ。フランソワーズ様がそのような事をなさるとますますエミリー様の評判が良くなりますわ・・・』
『何ですって、貴女たち寄子の家門でしょう!私に従いなさいませ!』
・・・・・・・・・・
過去を思い出した
私はヨシダさんに微笑みました。きっと悪因悪果なのでしょうね。
「フランソワーズさん。俺たちも対抗して書き込むぜ」
「ヨシダさん。良いのです・・・」
「えっ?」
「教えて頂き有難うございました」
これは女神様が私に課した試練です。
ランチタイムにお客様5人・・・
利益が心配です。
その他にも店の前でスマホを向ける方・・・・
「ここが本当の悪役令嬢ラーメンです!名前だけじゃなかった」
配信というのをしているのね。
夕方はガラガラだわ。常連さんしか来なくなったわ。
また、閉店間際にあの母子たちがやってきたわ。
「いらっしゃいませ」
心なしか母親はニヤニヤしているわね。社交会の嫌な笑いを思い出す。
いいえ。私が陽気な貴婦人のようにニッコリ微笑ませて差し上げるわ。
「ラーメン一杯ね」
「はい」
「あら、空どんぶりを出さないのかしら?クスッ」
「この度は大変失礼いたしました。一人一杯お出ししますわ」
「まあ、改心したとSNSで上げてあげるわ」
私はご注文のラーメンを一杯お出した。
「あら、三杯ではないの?」
「ええ、一人食べ終わったらお出ししますわ」
「まあいいわ。多めに見てあげる」
子供達は後ろ髪が伸びていらっしゃるわ。
お母様が食べているのをじっくり見ている。
「次は僕だ」
「私よ!」
「ふう~、食べ終わったわ。さあ、子供達に出しなさい」
ここで私は魔法をかけるわ。何に?お母様によ。
【きえ~~~~!カシコミ!カシコミ!時間遡上!ラーメン食べる前に戻りたまえ!】
この国の精霊にお願いしたわ。
するとラーメンがお母様のお口から出てきてどんぶりに戻りましたわ。
時間を逆再生しましたの。
「う・・・何?食べたばっかりなのにお腹、空いているのですけど・・・」
「ママ、こんなの食べたくないよ」
「ママがはいたラーメンだわ!」
一端消化したものを胃から戻しましたの。
これで一杯分のラーメンで三人分食べさせますわ・・・
「ヒィ、基地外!」
「ママ、化け物だよ」
「ウワ~~~ン」
母子はラーメンを食べずにそのまま帰ったわ。
あら、ラーメンもったいないわ。
けど、汚いから捨てますわ。
その後、ヨシダさんが教えてくれたわ。
あのお母様はSNSで、悪役令嬢ラーメンは基地外だと発信。
あまりに文面が支離滅裂なので。
>お薬やっている?
>これは新しい基地外だ・・・
>祈祷をしたらラーメンが口から出てきた?はいたのではなくて?
>あ、こいつ、一杯のラーメンおばさんだ!
となったそうよ。
そして、まとめサイトという物が出来て、悪役令嬢ラーメンは悪くないと言って下さる方が多数だわ。
「フフフフフ」
「フランソワーズさん・・災難だったね。あの母子特定されてネット民による基地外参りが流行っているよ。全く基地外は怖いね・・・」
「ヨシダさん。いいのです。修行になりましたわ」
空を見上げると、母子の笑顔が大空に浮かんで来たわ。
また、来て下さらないかしら。
私が成長したのはあの母子のおかげね。




