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リンダ医師


「フローレンス、シシリー辺境伯の所へ行く前に話していた事を覚えているか?」とお父様が聞いて来た。


「ええ、もちろん覚えております。それがどうかされたのですか?何かお話が?」



「実はなクリス侯爵様からの提案なのだが、ハインツ様の紹介で王宮の医師達による健康診断を受けてみないか?とおっしゃってるよ。」


「えっ、でも本当に良いんですか?何だか恐れ多くて。。。私には無理です。」


「だが、王宮医療チームの中の女医の先生が引き受けるとまで言って下さっているらしい。お前断れるか?」と言っている。


「―――断われません。」そんなの無理に決まってます。


「なら話は早い。こちらからは了解と返事をするぞ。良いなフローレンス?」


「はい、わかりました。宜しくお願いします。」と答えてお父様の書斎を後にした。



数日後、家族で朝食を食べていると、

「フローレンス、あれから王宮の医療チームより連絡が入った。明日の朝一番に迎えを寄越して下さるそうだ。これもハインツ様のおかげだろう。普通に考えたらこちらから出向いて当たり前だからね。」と微妙な表情で話している。


「貴方、フローレンスは1人で大丈夫なのですか?良かったら私も付き添いますが?」とサマンサお母様がお父様と話をしてくれた。


「いや、時間がある程度掛かるから、フローレンスを1人で寄越す様にと言ってきた。」と気難しい顔をしてお父様がお母様に話している。


「お母様大丈夫です。別に命を取られる訳ではありませんから。」と努めて明るくフローレンスは話した。でも心中を言えば少し怖い。あまり良い結果ではなかったら?――――どうしよう。


そんな言葉がフローレンスの胸中をぐるぐると駆け巡る。気がつくと「ごちそうさまでした。」と食堂を後にしていた。



そして次の日の朝、王宮から馬車が迎えに来た。フローレンスは検査のちょっとした合間に描けるように、スケッチブックを持っていく事にした。


馬車から降りて来た御者に「おはようございます。今日は宜しくお願いしますね。」と挨拶すると「おはようございます。こちらこそ宜しくお願いします。」とうやうやしく一礼された。



「フローレンス気をつけて行ってくるんだよ。」とお父様とお母様が揃って見送ってくださっている。


「はい、それでは行って来ます。」と返事を返すとそれを合図かのように馬車が動き出した。


この屋敷から王宮はそんなに遠くない。馬車が20分ほど走ると王宮がみえてきた。


いつもなら王宮の庭師達の仕事が見られるのでワクワクする所だが、今日ばかりはそんな気持ちにはなれない。


馬車が止まった。


御者に降車を促されると目の前にハインツ様が待ってて下さっていた。


「おはようございます。ハインツ様。本日は宜しくお願い致します。」と挨拶をすると


「おはようございます。フローレンス嬢。今日はリラックスして診察を受けると良いですよ。後ほど今日の担当者をご紹介します。これから診察室まで私がエスコートします。さぁどうぞ。」と話すと腕を差し出されたのでフローレンスはその腕に手を添えた。


ハインツ様はなぜかそのフローレンスの手を、一旦腕から外し手に取った。そして手首を見ると、「綺麗に治ってますね。良かったです。」と話し再び自分の腕に添えた。


フローレンスは「その節は本当にありがとうございました。」と再度お礼を伝えた。


王宮の廊下をゆっくりとハインツ様と歩く。時折ハインツ様が笑顔で場所の説明をして下さっています。

廊下にかかっている絵画の作者の話やそのこぼれ話など。


気のせいか周囲からじろじろと見られている気がして、フローレンスは恥ずかしくなって俯いてしまった。



「大丈夫ですか?フローレンス嬢?」とハインツ様が気を使って話して下さるのですが、「はい少し緊張している様です。」と答えておいた。


しばらく歩くと、ある部屋の前でハインツ様の足が止まった。「担当医師 リンダ・マーシャル」とドアの所に札がかかっている。


ハインツ様がノックをすると、「どうぞ。」と女性の声がした。ハインツ様が扉を開き中へと入ると、その部屋は立派な診察室だった。


「あぁ、貴女がフローレンス嬢ですね?ハインツからお噂はかねがね。私は王宮専属医師のリンダよ。宜しくね。」とこちらへ歩み寄られ握手を交わした。


リンダさんは年齢は40代前半って所だろうか?この辺りでは珍しい褐色の肌にサラサラのシルバーグレイの髪を無造作に後ろに1つに束ねていた。スレンダーなスタイルのある意味個性的な美人さんだ。


黒縁のスクエアカットの眼鏡がその雰囲気に一層趣きを添えている。


「さぁ、ハインツ、これから診察を始めるから君は外に出る!」とハインツ様に声をかけると「あぁわかってるよ。フローレンス嬢、では後で迎えに来るよ。」と言いながら部屋を出て行きました。


まずフローレンスの今までの病気の話、普段の生活状況、脈を取ったり、血圧を測ったりとリンダ医師は的確にそして決してフローレンスを問い詰める事も無く、じっくりと話を聞き診察を進めて行った。


触診もあり、「フローレンスさん、ちょっと貧血気味だね?後でお薬出しとくわ。」と診察されました。


ついでだから、と生理周期の話やその状態なども女同士の気安さで話をした。


最後に血液検査の為に採血すると、「今日はここまでです。今回の結果はまた送らせて貰うわ。」と言いながら採血した場所を清潔なコットンで押さえシュっとテープで留めた。


その時部屋のドアからノックの音がした。


「あの男はいつもはああじゃないのよ?」と、リンダ医師は苦笑いし、ついで?にフローレンスにウインクすると「どうぞ」と答えた。


「リンダ医師、もう終わる頃かと。」とドアの隙間からハインツ様がひょっこりと顔を覗かせた。


「あぁ、ほぼ済んだよ。フローレンス嬢、約1週間ぐらいで結果がお家に行くと思う。今日はお疲れ様。」と話すと、ふと思いついた表情になりフローレンスに向かって


「そうだここのレストランのランチはなかなか美味いよ。良かったらハインツの奴に連れて行って貰うといい。」とフローレンスの肩をポンッと軽く叩くと、にっこり笑って言った。

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