王宮医療チーム
「君は確かここの近くのコンラート男爵家の御子息だね?コンラート家では、いきなり初見の女性の手首を掴んで引っ張る事を奨励されているのか?」と後ろから聞き覚えのある声がする。
「この事はここの警備に連絡して、コンラート男爵に直接報告させてもらう。」と言いながらハインツ様が現れた。そしてつかつかとフローレンスの方へ歩み寄ると、その男に掴まれていた手首を離してくれた。
「そっ、それは困ります。失礼をしました。」とハインツを認めると途端に顔色を変えて焦り出す男。
「私より他に先に謝る人がいるのでは無いですか?」とハインツがその男に話すと、その男は「勝手に勘違いをしてすいませんでした。」とフローレンスに謝りながら慌ただしく立ち去った。
丁度そこにマリーが駆けつけて来た。騒ぎを聞き付けて来たのか呼吸が荒い。
「お嬢様!!私が目を離したばかりに。本当に申し訳ありませんでした。」と目に涙を浮かべながら謝罪をした。
「マリー、ハインツ様に助けて貰ったの。」とマリーに話すとマリーは「ハインツ様、お嬢様を助けて頂き本当にありがとうございました。」とうやうやしく礼をした。
「それより大丈夫ですか?フローレンスさん。」とハインツがフローレンスを見つめていた。「はい、ありがとうございました。助かりました。」とハインツを見つめてお礼を述べた。
「それよりフローレンスさん、ちょっとその手首を見せて貰えませんか?」と言い出した。
「はい?」と疑問を持ちながらも小さく頷くと、掴まれていた手首を見せた。そこは結構赤くなっていた。
ハインツは慣れた仕草でフローレンスの手を取り診察すると、「ちょっと待って下さい。」と足元に置いてあった自分のカバンを開けて薬を取り出した。薬の蓋を開け、さっとフローレンスの手首に塗ると、「この薬を朝の起床後と夜の入浴後に塗る様にして下さい。」と使用上の注意を話しマリーに預けた。
「では私はこれで。」とハインツ様は颯爽と去って行った。
「だから私が言っただろう、フローレンス。」とお父様は厳しい顔でフローレンスを窘めていた。「すいませんお父様。」と屋敷に戻るなりフローレンスはしょげ返っていた。
あれから屋敷へ戻り、事のあらましをお父様に報告した所のお父様からのお冠だ。
「でもさすがハインツ様だな。お医者様だから手際が良くていらっしゃる。」とその時お父様がポツリとおっしゃったので「ハインツ様お医者様だったのですか?」と聞き返した。
「ああ、フローレンスは知らなかったのか?彼は王宮の医療チームの人間であり、今回の特効薬の開発担当者だよ。まあこの話を知っているのはごく一部の貴族だけだからね。」ハインツ様の事はあんまり言わないようにな?とお父様から口止めされてしまいました。
話が動き出したと感じたのはそれからしばらくたってから。
何とシシリー辺境伯の屋敷へクリス侯爵と共に招かれたのだった。もちろんお父様も一緒だ。フローレンスはとても驚いた。
シシリー辺境伯の所へは馬車で数時間ほどかかる。結局はクリス侯爵様とフローレンス達はシシリー辺境伯のお屋敷で待ち合わせる事になった。
お父様とシシリー辺境伯のお屋敷に行く日は驚くほどの快晴で、途中何度か休憩を挟みながら夕方には着いた。
シシリー辺境伯のお屋敷の執事に案内され広間へと案内された。どこもかしこもとても立派なお屋敷で思わずキョロキョロと見渡してしまった。
特に目を引いたのは庭園だ。
ここの庭園は腕の良い庭師の親子が見ているらしく、その整備の計画もしっかりと立てられて作業をなさっているという事。
さらに話を伺うと、そのお父様の方がフローレンスも何冊かその方の本を持っているぐらいの、名の知れたガーデナーだった。通りでこの仕上がり。
眼福だわ。と声を掛けられるまでしばらく見惚れていた。出来ればお話しを伺ってみたい。
「はははっ、おまえは相変わらずだね。フローレンス。」とお父様が執事の方と苦笑いしていた。
「さぁ、行こうか。」と再び歩き出した。
執事の方に連れられて、広間に着くと1番初めにサマンサお母様とアンリエッタが見え、アンリエッタの側に見目麗しい1人の男性とその両親なのであろう上品なシシリー辺境伯ご夫婦の姿が見えた。
「ようこそおいで下さいました。サフィノワ伯爵様。」とにこやかにシシリー辺境伯が手を差し出し握手を求められた。
「こちらこそお招き頂きありがとうございます。また家内と娘をお預かり頂き助かりました。」とお父様も笑いながら握手を交わした。
そしてシシリー辺境伯はフローレンスを見て
「貴女がフローレンス嬢?」と聞かれたのでお父様がすかさず「はい、この子がアンリエッタの姉にあたるフローレンスです。」と紹介をした。
「お初にお目にかかります。フローレンスです。この度は母と妹が大変お世話になりました。」とカーテシーを披露した。
いつの間にかシシリー辺境伯の側に来ていた御子息も「フローレンス嬢、私からも自己紹介を。私はアルバートと言います。アルバート・シシリーです。」と自己紹介された。鋭い理知的な瞳をお持ちの方だ。とフローレンスは思った。
「アルバート様、フローレンス・サフィノワです。宜しくお願いします。」とお辞儀をした。
すぐにアルバート様が「サフィノワ伯爵様、フローレンス嬢これから少しお時間頂けませんか?」と声をかけられた。
思わずお父様と目を合わせたが、「分かりました。」とお父様が御子息に同意をしていた。
「お2人ともこちらへ。」とアルバート様に別の部屋へと案内された。こちらの部屋も素晴らしい調度品がしつらえてあり、この一族が潤っている事を見せつけている。しばらくして部屋に入ってきたのはアンリエッタだった。




