リックさん、フローレンスのお迎えに上がる。
「メリークリスマス。」と打って変わってここはサフィノワ家のクリスマスだ。
フローレンスが居ないので3人で過ごしている。こんなクリスマスは初めてだ。
「・・・フローレンスさん、今ごろどうしてるかしらね?」とサマンサが話を2人に話を振る。
「今、お世話になっている子爵家でクリスマスを過ごすそうだ。元気にやってると手紙には書いてあったな。」とフローレンスと手紙でやりとりしているストークが話した。
「そうですね。お姉様は割と逞しい方ですもの。きっと何処へ行ってもうまくおやりになるわ。あぁ、羨ましいわ。私ではとてもとても。」と皮肉るアンリエッタは相変わらずだ。
「所でアンリエッタ、婚約の話はどちらにするんだ?」
「嫌ですわ、お父様どちらも素敵なお方で。私などでは勿体無くて。」と笑いながら答えた。
「そうですよ貴方。まだこの子は若いわ。焦らずともよろしいのでは?」とサマンサも同意する。
「そうだ、フローレンスからそれぞれにクリスマスプレゼントが届いているぞ。まずサマンサ君にだ。」そう話すとまずはサマンサへフローレンスから届いていた小箱を渡した。それからアンリエッタにも。
「まぁ、可愛らしい髪留め。後でお礼の手紙を書きますわ。」とサマンサが言うと、「私には可愛いらしいタペストリーですわ。お母様、私もお礼を書きたいので後で一緒にお礼を書きましょうよ。」と微笑む。
ストークはこの会話を聞いて、この人達はフローレンスにはプレゼントを渡す事は一切考えて無かったのか?と思わず苦笑いしてしまった。
―――フローレンス、お前は本当にハインツ様の事を忘れられたのか?窓から見える庭園を眺めながらストークは考えていた。
「今日は本当にありがとうございました。」とフローレンスはナタリー家の玄関先で改めてお礼の言葉を述べていた。
「また遊びに来て?お姉ちゃん。」とリカルドくんが目を潤ませてフローレンスの足元に縋り真摯に訴えている。
「リカルドくん、私は教会でナタリーさんと絵を描いているの。また良かったら遊びに来て?」とフローレンスはしゃがみ込み、リカルドくんの手を握りながらそう話しておいた。
「・・・フローレンスさん、明日のクリスマスミサには行くの?」
「はい、カーネルさんにお誘いを受けたので一度参加してみようかと思っています。」
「じゃあ明日会えるわね。気をつけて帰るのよ。ではお休みなさい。」
「ええ、ナタリーさんもお休みなさい。良い夢を。」と答えてそうっとドアを閉めた。
ナタリー家の玄関先から表通りを歩くと、「フローレンスさん。」と呼びかける声がした。思わず声のする方を見てみるとリックさんがそこにいた。
「どうしたのですか?」と聞くと「あぁ、お袋が夜道は危ないから迎えに行けって。」と照れ臭そうに話した。
「そうでしたか。リックさんありがとうございます。」と礼を言うと「良いって。良いって。」と笑っていた。
「フローレンスさんってここに来る前に失恋でもした?」と一緒に歩きながら真面目な顔でリックさんが聞いて来た。
「えっ、どうしてですか?」と聞き返すと
「いやぁ、こんな時期に女性が1人だしな。」と言葉を濁した。
「そりゃそうですよね。でも失恋では無いですよ。ちょっと家庭環境で嫌な事が有って。と言った所です。リックさんもそんな時期無かったですか?」とリックの顔を見て苦笑いした。
「確かに俺もあったな。」とリックも苦笑いした。
お互い顔を見合わせると「ふふふっ」と笑った。そんな会話をしながらサンダース家へ帰っているとちらほらと雪が降って来た。
「あっ、雪だ。この辺りではあんまり降らないんですよ、フローレンスさん。」とリックは深々と降る雪を手のひらで受け止めつつ話し出した。
「そうなのですか?私の実家の方は割と積もるんです。本当に雪かき大変なんです。」フローレンスも雪が降り落ちる、雪雲が広がる夜空を見ながらそう話す。
「雪のクリスマス。またこれもいいね。」と鼻の頭を真っ赤にしたリックさんが笑っていた。




