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―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟 その異世界を巡る叙事詩――  作者: EPIC
チャプター10:「Intrigue&Irregular」
120/224

10-13:「Cavalry HuntⅠ」

「やりゃぁがったッ!」


 小形トラックの車上で、竹泉の荒げた声が響く。

 指揮通信車と馬車の激突の様子は、それを後方より追っていた小型トラック上からも、はっきりと見えた。

指揮通信車に激突された馬車は一瞬宙に浮かび、その後に叩き付けられるように横転。さらに速度の弱まらない指揮通信車に再び追突され、草むらの上を荒々しく押してずられる。

 やがて指揮通信車側がブレーキを掛けたのだろう、速度の減退を見せ、両者は衝突地点から十数メートルも先の地点で、ようやく停止した。


「ヘイ!ありゃぁ馬車ん中、洗濯機状態じゃねぇかぁッ?」

「ヘタすりゃ中の奴、おっ死んだんじゃねぇのかぁ?」


 小型トラックの後席荷台で、多気投と竹泉が、巻き起こった事態を前にそれぞれ懸念の言葉を上げる。


《――ジャンカー4、今の見えていたか?》

「えぇ、大層派手な演出だ」


 そこへ、インカムより長沼の声が飛び込んで来た。

 車上の各員が驚く様子を見せる中、唯一変わらぬ様子でいた制刻が、通信に軽口混じりの淡々とした声で返す。


《あちらの現場は、私と1分隊で対応する。そちらは予定道理、後方の敵を排除してくれ》

「了解。――聞いたな?後ろにバラついてる奴等を、黙らせるぞ」


 続き長沼より聞こえ届く説明と指示。それを聞き了解の返事を返した制刻は、それから車上の各員へ向けて振り向き、指示の声を発した。

商議会の組んでいた隊列の後方、轍の両脇には、散会した警備兵達の姿が見える。

彼等は、隊列に向けて接近してきた小型トラックや高機動車に対応しようと、散会し行動に移る最中なのであったが、しかし今は皆愛馬の脚を止めて、巻き起こった事態に目を奪われている様子であった。


「エヴリヴァディ、ポカーン状態みてぇだなぁ」

「いや――反応確認」


 一様に呆然としている警備兵達の姿に、多気投は茶化すような声を上げる。しかし直後、策頼がそれを否定。彼の眼は、搭載のMINIMI軽機の照準の向こうに、動きを見せる一騎の軽騎警備兵を見た。小型トラックのエンジン音を聞きつけ、そして近寄る小型トラックに気付いたようだった。

 その軽騎警備兵は少し戸惑う様子を見せたが、しかしすぐに馬上で、おそらくクロスボウであろう得物を構える様子を見せる。

 しかし、それよりも速く策頼は動いた。

 策頼は、すでに旋回照準を付けていたMINIMI軽機の引き金に力を込め、そして発砲音と共に十数発分の5.56㎜弾が撃ち出された。

放たれた5.56mm弾の群れは、一瞬後には軽騎警備兵に届いて襲い、内の数発が警備兵と愛馬の身を貫いた。

 馬は痛ましく叫び上げた後に崩れ、警備兵はその手のクロスボウより矢を放つ事無く、馬上より投げ出される。そして警備兵も地面に落ち、人馬とも沈黙する様子を見せた。


「一騎沈黙」


 相手の沈黙を確認し、端的に報告の声を上げる策頼。


「剱、適当な所で止めろ」

「あぁ……!」


 報告を聞き、そして制刻は鳳藤に小型トラックの停車を指示する。それを受け鳳藤は、周辺に散会する警備兵達より少し距離を離した位置で、小型トラックを停車させた。


「おぉし、行くぞ」


 停車と同時に制刻は、各員へ降車展開を促す。

 そして、車輛搭載のMINIMI軽機を担当する策頼以外の制刻等四名は、小型トラック上より飛び降り、駆け出した


「剱は俺とだ。お前等は、左っ側に広がれ」


 制刻は掛けながら指示を飛ばす。四名は二手に割れて広がり、それぞれが進行方向に適当な身を隠せる地形、及び遮蔽物を見つける。

 そして竹泉と多気投は、先程軽機の5.56mm弾に倒された馬の亡骸に。制刻と鳳藤は草原の中にできた小さな窪地にそれぞれ飛び込み、身を隠した。


「うェッ、チックショウッ!」

「アーォッ!お馬ちゃぁんッ!」


 竹泉と多気投が身を隠した馬の亡骸は、流れ出た血で汚れ、さらには血溜まりが広がっていた。その状況光景に対して上げた苦く渋い声が、制刻等の元にも聞こえ届く。


「他のが、来るぞ」


 しかし、その事を気にする余裕など無い事を訴えるように、制刻が声を上げる。

 周辺に展開していた他の警備兵達も、制刻等の接近に気付いたのであろう。数騎の軽騎警備兵が、行動を始めこちらへ向かい走り出す様子を見せた。


「やれ」


 その軽騎警備兵に対する行動を、制刻は端的に支持。同時に、各所各員から発砲が開始。

 撃ち出された各銃火から早速命中弾が生まれ、端に位置する一騎の軽騎警備兵が、弾を受けて落馬する姿を見せた。


「まず一つ」


 一体の沈黙を確認し、端的に発する制刻。

 続け攻撃を再開しようとしたが、その他の軽騎警備兵が、それまでの直進の行動から、違う動きを見せ始めたのはその時であった。


「ホワーイ?」


 見えた光景に、多気投から訝しむ声が上がる。

 軽騎警備兵達はそれぞれの愛馬を操り、ジグザグ行動取りながらの前進を試み始めたのだ。


「蛇行……回避行動を取りながら来るぞ!」

「俺等の攻撃の正体に、察しをつけたようだな」


 相手の動きを見た鳳藤が発し上げ、制刻が分析の言葉を発する。


「面倒を――!」


 一方で、竹泉は悪態を吐き上げながら、馬の亡骸の上で構えた小銃の照準内に、一騎の軽騎警備兵を除く。

 そして3点制限点射で二度発報。しかし撃ち出された弾は、蛇行行動を取る軽騎警備兵の横を掠め、命中弾は無かった。


「あぁウゼェ、チョコマカと――」

「――竹泉、身を隠せッ!」


 回避され射撃が不発に終わった事に、忌々しく声を荒げかけた鳳藤。しかし時、鳳藤から竹泉に向けて、警告の叫び声が飛ぶ。


「ッ――!?」


 それを聞くと同時に竹泉は、視線の先、迫る軽騎警備兵の内の一騎が、何か馬上で腕を翳し上げている姿を見る。

 見た瞬間、それが何かを意味する考える前に、直感で危機を感じ取り、反射で馬の亡骸に身を隠す。

 ――〝それ〟が襲い来たのはその直後であった。


「ヅッ!?」

「ウワァオッ!?」


 竹泉等を襲ったのは、身を隠した馬の亡骸越しに伝わりくる、いくつもの何かを強く叩くような振動。そして同時に、竹泉等の頭上を同様にいくつもの何かが掠めて飛んで行く。


「ッ!なんだって――……マジかよ……ッ!」


 それが収まり、竹泉は悪態混じりに馬の亡骸より頭を出す。しかしそこで目に映った物に、竹泉は言葉を切り替えて目を剥いた。

 飛び込んで来たのは、馬の亡骸に突き刺さった、 長さ20cm程の針状の鉱石の山。20本近いそれ等は、馬の亡骸の表面を、まるで剣山のように変えていた。


《4-3、策頼。攻撃を受けました》


 そこへさらに、インカムより策頼の声による報告が聞こえ来る。襲い来た鉱石の針は、後方の小型トラックにも流れたらしい。


「またも鋼の、雨あられか。オメェら、ハリネズミにならねぇよう、気ぃつけろ」

《フワっとした警告はやめろや!具体策をくれ、具体策をぉ》


 少し呆れ混じりに呟き、そしてインカムで各員へ注意喚起の声を送る制刻。しかしそれに、竹泉から訴えの声が返される。


「向こうの攻撃には、予備動作があるようだ。良く観察して、隙を狙え」

《あぁ、へいへい。参考にしますぅ》


 訴えに制刻は、対応策を説く。それに対して竹泉からはいい加減な返事が返された。


「剱、今のヤツをやる。折り返すタイミングを狙って、発砲だ」

「あぁ……」


 通信を終えると、制刻は鳳藤に攻撃行動を行う旨を告げる。狙うは、先に鉱石の魔法攻撃を放ってきた一騎。

 両名はそれぞれの小銃を窪地の端より突き出し構え、蛇行行動を行う軽騎警備兵を、その向こうに見る。


「予測進路を狙え――今だ」


 狙うは、相手が次に身を置くであろう空間――その軽騎警備兵が蛇行の折り返しに入った瞬間、二人は引き金を引いた。

 安全装置が単射に合わさった状態で、制刻は3回、鳳藤は2回発砲。

 軽騎警備兵の予測進路上に撃ち込まれた計5発。内の3発が、その進路上にまるで自ら当たりに来るように身を晒した軽騎警備兵に、見事命中。

 警備兵は馬上より打ち飛ばされ、地面に投げ出されて沈黙した。


「一体排除だ!」


 敵の無力化の旨を鳳藤が発する。両名が別方向に、また別の軽騎警備兵の動きを見たのは、その直後だ。

 その手にはクロスボウと思しき物が見え、そして次の瞬間に放たれた矢が、制刻等の元へと襲い来た。


「いッ!」


 飛来した矢は、制刻等が身を隠す窪地の、すぐ手前に突き刺さった。

 幸い命中とはならなかったが、襲い来たそれに鳳藤は顔を伏せて、困惑の声を零す。


「おもしろくねぇな」


 一方の制刻は、手前につき刺さった矢に視線を落としつつ、淡々と吐き捨てる。そして小銃を構え直して、矢を放ってきた軽騎警備兵を狙おうとした。


「ッ!左方ッ!」


 だがそれよりも前に、鳳藤が声を発し上げる。制刻がその言葉を受けて示された方へ視線を向ければ、その先に腕を翳し上げる動きを見せる、また別の軽騎警備兵の姿

見止める。


「チッ」


 制刻の舌打ち。それと同時に制刻と鳳藤は、反射的に窪地に伏せて再び身を隠す。――瞬間、多数の鉱石針が飛来。それ等は制刻等の頭上を、まるで機関銃の銃撃のごとく勢いで掠めて行った。


「……ッ!魔法現象使用者は、複数いるようだぞ……ッ!」


 襲い来た攻撃に鳳藤は顔を顰め、そして魔法使用者の複数の存在が確認された事に、苦い声でその旨を発する。


「愉快じゃねぇな――殺るぞ」


 対する制刻は端的に、その魔法使用者を排除する旨を発する。

 そして制刻と鳳藤はそれぞれ小銃を突き出し構え直し、その照準内に、魔法攻撃を放ってきた軽騎警備兵を覗く。

 しかし直後、制刻等が発砲するよりも前に、蛇行行動の折り返しに入っていたその軽騎警備兵は、瞬間馬上で何かに打たれるように体勢を崩した。


「ウォーらぃッ!ゲボ吐き戻すまで食らいやがれッ!フィーウィーッ!」


 同時に制刻等の側方から、陽気で高らかな声が聞こえ来る。その主は他でも無い多気投。

 彼の扱うMINIMI軽機より放たれた銃火が、軽騎警備兵を襲ったのだ。


「アイツか」


 制刻は多気投の方を一瞥して呟き、そして視線を警備兵へ戻す。

 立て続けの被弾により警備兵は、一瞬の内に何度もその身を弾かれもんどり打ち、そして馬上より飛ばされ地面に落ちた。


「三つ目だな」


 敵方のさらなる沈黙に、それを数え呟く制刻。

 その制刻等の視線の先に、またも別の軽騎警備兵が、視界端より駆け現れる。その手にはクロスボウらしき物の構えられる様子も見える。


「させねぇ」


 しかし今度は、制刻等の行動の方が早かった。制刻等は構えていた小銃を即座に再照準。そして引き金を数度引き、銃弾を軽機警備兵に向けて叩き込んだ。

 銃火は軽騎警備兵の馬と、馬上の警備兵の双方に命中。馬は崩れて激しく転倒。そして警備兵は馬上より放り出され、運の悪い事に、その先にあった剥き出しの岩場に頭より落下。頭部を激しく強打する様子を見せ、そして沈黙した。


「見たか?岩場に顔から言ったぞ……!」

「ああ、今度は愉快だな」


 敵方の迎えた痛々しい末路に鳳藤は驚きの声を上げ、制刻は台詞に反した淡々とした声色で呟いた。

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