表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/24

顛末と事実




ガタッ、ガタンッ


………!


国王陛下は椅子が倒れるのも気にせずに勢いよく立ち上がり、宰相閣下はこれでもかとばかりに目を見開き、騎士団長様は何事も無かったかのように佇んでいらっしゃる……


動じない姿、騎士の在るべき姿…?騎士団長様が一番大物なのでしょうか…?


それとも事態を理解されていないだけなのでしょうか…?


気になりますがそれは後ですね、


「お、王太子がそなたを下賜したと……?」


信じられないとばかりに聞いてきますが、その通りなのです、私も驚きましたよ?


「はい、下賜されました。今回の私の件、どの様に伺っておいででしょうか?」


「それは…」


あぁ、下手な事を言って父に漏らされては余計にまた領地を……と、


ご心配なさらず、


「ウィンクルム侯爵との婚約は本気です、後から父上が私が下賜された事を知って何か言ってくるかもしれませんが。


私には関係ありません。


私は侯爵閣下を命の恩人のように思っております、


まぁそれだけの事を王太子殿下がなさったということですが、」


「話してくれるかね?」


「失礼ですが、この期に及んでまだ自国の保身でしょうか?


まずはそちらがどの様に今回の件を認識しているかの説明と私への謝罪が先ではないでしょうか?


父上と保証や補填の話はなさったのかもしれませんが、攫われたのも、人生を変えられ狂わされたたのも、全て私ですよ?父との補償なんかの話は私は全く関係ありませんよ?


今後私をどの様に利用するのか算段をなさっていたのかも知れませんが、


私は攫われてきて価値が無いと知れると直ぐにこの国の王太子に、近くに居た部下に適当に下賜され、死ななければ好きにしていいと吐き捨てられたのですよ?その意味はお解りですよね?


なんとも雑でしたが、王太子自らが宣言したことです、既に私は下賜されています。


そしてあなた方は何様なのでしょうか?


王太子に無責任に攫われてきた他国の王女に対する対応がこれなのでしょうか?


もうこの国の物なのだから国王陛下の言う事を聞け、と?」



「…………息子が、我が国の王太子が、無責任にしでかしたこと、誠に済まなかった、国王である儂が代わりに謝罪しよう。」


「無責任にしでかしたこと?代わりに謝罪しよう?巫山戯ているのでしょうか?


まるで自分には一切責任は無いが謝っておこう、そう聞こえるのですが?


王太子が仕出かしたことは全てあなたの責任です。親であり国王である、あなたの。


そのことを解っておいででしょうか?」



「………。」


「王太子がなんと言ったのかは存じませんが、私がとっくに下賜されているのは紛れもない事実です。


敵国であり大国である隣国との和平の象徴とされる王女が、王太子の正妻ではなく側室、そして一瞬にしてそばに居た部下へ下賜された…どの様に世間や民衆は受け止めるでしょうか?


侯爵閣下が私に惚れて器の大きい王太子殿下が侯爵閣下に下賜し私を託した?


私が侯爵閣下に惚れた…?


どちらも和平の象徴として嫁いだ王女には有り得ない結末ですね。


ただ単に私が侯爵閣下に嫁ぐ、そうだったとしても、こう言ってはなんですが、侯爵家では格が足りませんし、アウストラリス王国を大分下に見ている、侮辱するようなものですね?


それとも結納品を私に対して贈り、侯爵閣下の領地や爵位を上げてなんとかするおつもりでしょうか?


どちらにせよ中途半端な事をすれば、アウストラリス王国がどう思うのか、そしてアウストラリス王国の民たちが、この国に対して何を思うのか、よく考えてから行動された方がよろしいでしょう。


自分で言うのもおかしな話ですが、私、アウストラリス王国ではそれなりに人気がありましたのよ?


殿下殿下と慕ってくださる方が多くおりました。


父上のことですから、今頃国で私はアウストラリス王国の為に、和平の為に、敵国である隣国に嫁いだと美談になって今回の話が流れているでしょう。


それが実際には側室でとっくに下賜されていると知れれば…アウストラリス王国からは完全に敵対され和平どころではないでしょうし、父上は面子を潰されて激怒でしょうね、


それもこちらは大切な娘を嫁がせたのに、向こうから和平を破られた、民の為に嫁いだ娘は向こうで冷遇されていた、と。


戦争の引き金には十分ですし、大義名分はこちらにあり、民衆や騎士達の士気も絶好調。


対してこの国は民衆からは不満と不信感、騎士達だって命が掛かっていますからね、無責任な王太子の行動で起こる事の無かった戦が起こる、士気は最悪でしょうし、民衆からはどの程度の協力が得られるか…


よくお考えになってくださいね?」



「…………。」


「私は別に脅しているわけではありませんよ、?


寧ろこれから暮らすこの国を思って現在起こっていること、起こるであろうこと、そして王太子がしでかしたことをお伝えしただけですからね?


あなた方が保身の為に流そうとしていた事の重要性と重大性をお伝えしただけです、」


「…………。」


「私としては私と侯爵家、そして侯爵家の庇護下にある者、物に対する強要をしないことを認め、宣言して頂ければそれで結構です、


私の願いは昔からのんびりと穏やかに暮らしていきたい、それだけですので。」



「……………わかった、フィーリア殿と侯爵家、そして侯爵家の庇護下にある者、物に対する強要をしないことを認め、宣言しよう。後ほど証文にし侯爵家へ届けさせよう。


そして改めてフィーリア殿、この度のこと、誠に申し訳なかった、心から謝罪する。


……そして、忠告、感謝する。


早急に会議を開き、国の重鎮達に此度の王太子の愚行を話し、王太子の処分と、これからのアウストラリス王国との関係について検討しようと思う。


厚かましい願いだが、またそなたの知恵を借りられないだろうか?」


「謝罪は受け取りました、私に今回の件についての見解と認識の説明を一切していない事に関しては国王としての陛下の判断に免じて不問と致しましょう。


また、私の願いを聞き入れて下さったので、私からは今回の件について他言しないと宣言致しましょう。証文を用意することは出来ますが、こればかりはどこから漏れるか分かりませんから私を信用して下さいとしか申し上げられません、」


「いえ、先程の話を我々にして下さったのです、十分信頼できると言えるでしょう、


王太子の側室、そして既に下賜されている、というこれだけの状況が揃っているのです、


フィーリア殿は幾らでも言いようがありますし、わざわざ我々に父上の事まで話す必要は無かったのですから。」


たしかに私が悲劇のヒロインだと事実を脚色して叫べばこの国は破滅でしょうからね、

それだけの事実がありますからなんとでも言えるでしょうからね。


「そうですか、先程の最後の願い、聞き入れましょう。私で宜しければ少しは知恵を貸しましょう。


しかし大臣や部下の教育はしっかりと頼みますよ?


欲に目がくらんで使い潰される未来が目に見えているので。


知識提供の強要もなさらない様に、くれぐれもお伝え下さいね。」



「わかった、部下の教育も約束しよう。」


「よろしくお願いしますね、


それでは私も疲れているのでそろそろよろしいでしょうか?


皆様も顔色が優れないようですので、あまり無理を為さらずに、


まずは王太子の矯正が大切かと、


それでは失礼しますね、行きましょうか、ウィルトス様。」


「あ、ああ。それでは陛下、失礼致します。」


「あら、エスコートはして下さらないので?」


「ふっ、喜んでさせていただきます、」


「ふふ、ありがとうございます。」




「やはりフィーリア、君は天の邪鬼のようだね…あの瞬間、僕は生きた心地がしなかったよ。

国王陛下に対して…とんでもない度胸に驚いたよ…」


「また天の邪鬼だなんて……たしかに悪意ある言い方はしましたが、王太子の気分次第で殺されるところだったのですよ?


それに、死ななければ好きにしていいだなんて…


下手したら死ぬより辛い人生が待っていたのですよ?


本人は軽く言ったつもりでも、それは王太子の言葉なのです。


重みも分からず人の命を…はぁ、


それに他国との関係や折り合いも何も考えていないのです、


なのであれくらい良いのです、


それに私は事実しか言っておりませんし。


ある意味攫われたのが私で良かったでしょう、そして下賜された相手がウィルトス様で。


王太子が気紛れで他の国の王女を誘拐して他の部下に下賜していたら…


そしてその王女に恋人や婚約者がいたとしたら…


国へ帰っても立場も婚約者との関係も嫁ぎ先も…


その王女は悲惨な運命を辿ったでしょう。


今回のような事は二度と起こしてはなりませんからね、


国王陛下も大層御立腹でしょうし、


一度痛い目に遭えばいいのです、そうすれば目も覚めましょう。


国王陛下も私が下賜されているなんてアウストラリスへの体面も有りますし、私を利用することも出来ず痛い所でしょうが…


あの王太子殿下を自由にさせ過ぎている陛下の招いた事でもありますからね、


親子でそれぞれ痛み分け、といった所でしょうか?」


「あ、ああ。たしかに、そうだね。君の言っていることは尤もだ。」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ