ギルバート様を支えるのは誰か!
side王子様ギルバート.アセドニヤ
シェリルは流石に元通りとは言えないけれど、顔色が良くなっていた。
一昨年流行り病にかかり、去年もう助からないだろうと聞かされていた。それが、いきなり回復に向かったときいて、胸を撫で下ろした。
今日の面会で、記憶を無くしていると言われ、少なからずショックを受けたが、かなりの高熱にうなされていたらしい彼女に、あまり無茶を言うわけにもいかず。。。
(あの時、とっさに兄上と言ったけれど多分彼女は、自分の兄だと思ってるんだろうなぁ~。ふぅ。。)
実は、兄は兄でも私の兄上とである。
(どうしたものか。新たな人生を共にとは言ったものの、彼女かなり雰囲気変わってた。令嬢だけど、どこか違和感を感じざる終えない。病にかかる前は、大人しくそして人見知りがちだったのだけどなぁ~)
実は、今私の兄上もシェリルが患った流行り病で苦しんでる。
兄上は強い人だ。だが、周りはもう兄上を諦めて、私を王太子に擁立しようとしているらしい。。。
(兄上、早く元通り元気になっていただきたい。颯爽と執務に戻ってきて頂きたい。)
だが、無情にも病はどんどん兄上を蝕んでいる。
(祈るしかないのか?シェリルは、記憶を対価に病床からたち戻ったとでも言うのか?しかしそう考えてしまう自分がいるのは確かなのだ。)
今自室で、今日のシェリルを思い出しながら、なんと自国の危機を伝えたものかと、考えながら温かいお茶を飲んでる。
それしか出来ないのだ。父王には、兄上のもとには行ってはならない。と、きつく言い渡されている。
(今の兄上は、どのような状態なのか。兄上付きの侍女に聞くことしかできない。あぁ、本当にどうして自分ではなく兄上なのか、何故。。)
やりきれない、私は何も役に立つことが出来ない。そんな思いを飲み込むことしか出来ない。
兄上の代わりに振り分けられた書類にペンをはしらせる。ただそれだけ。。
(兄上は今、病と戦っている。私がこんなに弱気ではいけないな。シェリルを思い出す。兄上は大丈夫だ。)
ギルバート様との面会から数日後、私シェリルのもとお兄様から訃報が知らされた。
ギルバート様のお兄様が亡くなったと。。しかも、私と同じ病で。更に感染予防のため、直ぐに火葬されるそうだ。
(私のお兄様が教えてくださったのだけれど、王都にいらっしゃるお兄様は大丈夫だろか?)
自国アセドニヤ公国、貿易の拠点に位置する国なのだが、どの周辺諸国もこの流行り病が蔓延しているらしい。
(私、ギルバート様に会ってくる!こうしてはいられない、早く領地を出て王都、お兄様のところに行かなくては!)
お父様は、確か書斎にいたはず。お母様はどこかしら?足早に書斎に向かう。
バンッ!
「お父様!私ギルバート様の元に行って参ります!止めないでくださいませね!」
「何を言ってるんだ。お前はつい最近やっと普通の生活が出来るようになったばかりなのに!」
「止めても無駄ですわ!それに私は一度病にかかっています。更に感染することはないでしょう。」
「何故それがわかる?また病にかかると今のお前では直に。。」
「とにかく大丈夫ですの。お父様達を行かせるよりずっとましだわ!」(う~ん、免疫力何て言っても分かってもらえないだろうし、このまま勢いで行くしかないわね!)
「どうしたのです?二人とも落ち着きなさいませ。」
開け放たれた扉にお母様が。。もう一度お父様に伝えたことをお母様に伝えた。
「あなた、この子一度言い出したら、何をしても意見を変えない頑固者だってこと、忘れてなぁい?記憶云々は置いておいても、頑固なのは変わらないは。」
「しっ、しかし万が一を考えると。。」
「もう。私達の娘はあの病に勝った子ですよ!行かせてあげましょう?」
そして私に、
「ギルバート様のところへ行きたいのでしょう?いってらっしゃい!しっかり支えて差し上げなさい!いいですね!」
「はいっ!ありがとうございます。では、行って参ります。」
こうして、私は侍女のユーリを連れて王都に向かったのです。
side王子様ギルバート.アセドニヤ
たった今、シェリルがノートン領を出たと知らせを受けた。
(今はどの辺りだろうか。何故ノートン領を出たりしたんだ?王都は、確かノートン領の南側にある。大丈夫なのだろうか?兄上が心配なのか?)
ギルバートは、まだ正式に王太子に任命されたわけでもなく、中途半端な立ち位置だ。
こちらに来ても、何もしてやれない。
(兄上が亡くなったことにより、王室は混乱の中にある。私がしっかりしなくては!父王や母上は気落ちしてしまっている。こう言うときメンタル面で、私の支えになってくれるものが欲しい。甘えかもしれないが、私とてとても辛いのだから。)
父王の代わりに、辛い胸のうちを秘めて指示を出したり、書類の整理をしたり、ドタバタとしている王室を落ち着かせるために、ギルバートは、仕事に没頭していた。
王室が慌ただしくなっている今、私シェリルは王都に着いた。有能な侍女ユーリにアドバイスをもらいながら、どうすればギルバート様のお力になれるか、考えていた。
王都にあるノートンの屋敷に着いたとき、お兄様にはコッテリ怒られてしまいました。先触れを出しておいたので、何とか私のとして使っている部屋は、掃除が行き渡っていた。
「ねぇユーリ?どうしたらギルバート様に会えるかしら。じゃないと、何のために王都に来たか意味がなくなってしまうの。。」
ユーリは、お茶の準備をしながら言ったわ。
「まず、正門で追い返されてしまうかもしれないですね。でも、殿下にも先触れを出してありますし、こちらから『王都に着きました。お会いできますか?』と、お手紙を書かれてはどうでしょう。『我が儘をお許しください』と言うのはいかがですか?」
私も少し考えていたところだった。流石はユーリは有能である。
「そうね!まずはギルバート様に私が居ることをお知らせしなければいけないわよね。お会いするのは、それからでも遅くないわ!」
カップを受け取りながら、私は何とか会えるように手紙に工夫をしなければ、と物思いに耽った。
お茶を飲んで落ち着いた後、手紙をしたためていた。明日王城に届くはずだ。
(後はギルバート様からのお返事を待つだけ。無理に押し入ったのでは、意味がないもの。多分すごくお疲れなはず。心が落ち着く紅茶を持っていこうかしら。あぁ、もどかしい。)
手紙を届けてもらってから、はや2日目。午後のお茶の時間、王城から返信が届いた。
(お会いできるのかしら、不安だわ。忙しいとわかっていて会えないかと手紙を書いたのだもの。期待はしちゃダメ)
ユーリから手紙を受けとる。そこには、ギルバート様の繊細な心持ちが書かれていた。
「やっぱり、会うのは難しいかもしれないそうよ。どうしましょう。お食事や睡眠はちゃんと取れてるのかしら、これではギルバート様が心配だわ。」
顔合わせの後、手紙のやり取りをしていたので、文字からお疲れの様子がうかがえる。
昔のシェリルでは、絶対にしないだろうと思う事を私は思った。
「ねぇユーリ。私ギルバート様の婚約者よね?」
「そうですよ。婚約者ですね。」
「明日、朝から王城に直接行ってみたいのだけど。。ユーリはどう思う?」
「流石に馬車無しでは行けませんし、そうなるとカイル様に見つかって連れ戻されるのでは。。」
ユーリは、ちょっと困ったなぁと言う顔をしてる。
「お兄様が起きる前に、行ってしまいましょ!王城まで行って、追い返されたら、また考えましょう。もう決めました!」
side侍女ユーリ
シェリル様が記憶喪失になったときは、とても心配でした。でもまさか、ここまで行動力のある方になるとは、私もお屋敷の下働きの子達も思ってなかったですわ。
旦那様も奥様も、とてもアクティブになられたシェリル様を見て、驚かれていました。
私個人的には、今のシェリル様のほうが、暖かみがあって良いのではと思っています。が、朝から王城に行く!と宣言されたときは、正直ため息が盛大に出てしまいました。
でも、王城へと言う気持ちも分かります。シェリル様はまだ分かってらっしゃらないかもしれませんが、ギルバート様をとても大切に思っていらっしゃいます。
では、私も明日シェリル様についていかせてもらいます。
朝まだ、日が上りきらないうちに、外出の準備と馬車の準備をして、いざ王城へ!
すると、正門で警備に当たっている騎士に止められました。当たり前ですよね!
そこで、私がギルバート様の婚約者であること、馬車に我がノートン家の家紋があること私自らお話させていただきました。
勿論直ぐに通して下さいましたわ!使えるものは何でも使わなくちゃ!
暫くすると正面玄関口に、執事らしき人がおりました。私が正門に着いたとき、伝達されたのでしょう。私を見て、アゼルと名乗った執事が、訴えかかってきました。
「良く、よくぞ来ていただきました。シェリル様を見れば、少しはお眠りになると思うのです。私達では、ギルバート様をお止めできません。何卒よろしくお願いします。」
やっぱり眠ってらっしゃらないみたいね。
「では、お食事もまともに食べてらっしゃらないわね?どう?」
執事は、更に続けます。
「睡眠は勿論のこと、食事などパンをかじる程度なのです。もうどうしたらよいやら。。」
事態は一刻を争うようです。
「アゼル、ギルバート様の所へ案内してくださいませ!リラックスできるお茶を持って参りましたの!」
「はい!こちらでございます」
アゼルの案内で、何とかギルバート様の執務室に着きました。果たして会ってくださるかしら。。
でも、ここまで来たのだし無理にでも取り次いでもらいましょう!
「ユーリ、お茶をお願いね!」
「はい!」
では、コンコンコン。もう一度、コンコンコン。
中から苛立たしげに「今は誰も取り次ぐなと言っている!邪魔をするな!」多分アゼルだと分かったのでしょう。
「ギルバート様!シェリルにございます。入ってもよろしいですか?」
とたんにガタガタと言う大きな物音がしました。許可をとっている場合ではありません。扉を開きながら、「ギルバート様!大丈夫ですか?お怪我は?」
ギルバート様困惑ぎみに、
「何故来た。」ですって!
「ギルバート様が心配で、領地からここまで来てしまいました。婚約者ですもの、少しの無礼はお許しくださいますか?」
自分でも、酷い言い訳だなぁと思いましたわ。でも、ここで引いては何も始まりません。私は、ユーリとアゼルに目配せをし、通じたと思ったら、真っ先にギルバート様に近づきました。
「お食事も睡眠も、まともに取ってらっしゃらないと、アゼルから聞きました。せめて少しだけでも落ち着いてくださいませ。」
「失礼いたします。」ユーリでした。
「これは心を落ち着かせるハーブティですわ。どうぞ、召し上がってくださいませ。」
ギルバート様をソファーへ連れていき、ハーブティを差し出しました。少し考えてから、ギルバート様は飲んでくださいました。
すると、あっという間にお眠りになりました。
すると、部屋の前でアゼルが、驚いていました。
「これは安眠茶ですわ!そこまで身構えないでくださいな。」
昨晩ユーリと相談した結果、ハーブティで眠っていただこうと言うことで、意見が合いましたの。
「数刻もすれば、起きられると思います。寝室は遠いですか?遠いのなら、このまま私の膝の上で眠っていただきますけど。」
アゼルがすかさず、そのままでお願いします。と言ってきた。
「きっと後でお叱りになるでしょうね。でも、この時間は私のものです。そもそも不摂生が原因なんですもの。」
目の下に隈を作って、頬は少しこけていますね。私の予感通りですわ。
ギルバート様の髪を撫でながら、数刻誰も何も話さず、ただ眠っていらっしゃるギルバート様を眺めていました。
side王子様ギルバート.アセドニヤ
ハーブティに誘われて、どうやら数刻眠ってしまったようだ。頭が、柔らかな感触を伝えてくる。そうっと目を開けると、シェリル嬢の膝枕で眠ってしまったらしい。頭がスッキリしている。
「ギルバート様、体調はいかがですか?」
と、控えめに私を見やる私の婚約者。
「すまない。私は、眠る前貴女に酷いことは言ってないか?あのハーブティは凄いな、数刻寝ただけで頭がスッキリしてる!ありがとう。」
礼を言うと、恥ずかしそうに
「私は、ギルバート様の婚約者ですもの。心配は勿論、お手伝いも致しますわ。書類は流石に見ることはできませんが、お食事と睡眠のお手伝いは出来ますわ!」
私の婚約者は、素晴らしい女性のようだ。
もう一度、ありがとうと伝え丁度朝食が運ばれてきたので、食べることにした。
不思議なもので、私はお腹が空いていたんだなぁと、シェリル嬢を見た。彼女は、私が朝食を綺麗に食べ終わるまで、ニコニコしていた。




