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二十四話

 俺の言葉に、嘆息するように瞳を閉じて、女教師はソファに背を預ける。

 急かす事無く、答えを待ちながら淹れられたお茶を楽しむ事暫し。再び身を起こした女教師の唇が動き、紡がれる。


「彼の家はな、分類で言えば新興貴族。それも冒険者貴族だ。」

「ふむ。」


 貴族の種類には、興国の頃から尽力していた一族が賦てられ代を重ねて来た門閥貴族(我が家もこれ)、戦争で手柄を挙げた兵士や傭兵が賦てられた戦争貴族、そして国内の魔物討伐やダンジョン踏破などの目覚しい功績を積み上げた、高ランクの冒険者が賦てられる冒険者貴族が存在する。

 隣国との戦争が相応に起きる王国に置いて、平民であろうと武力を持つ者達を取り込むのは、初代王より続いた政策の一環らしい。

 ただ、歴史を重んじる門閥と、あとの二つの新興には、互いの意識に深い溝が存在する事が長年問題となっているのだが。


「エリクオルの父は十四年前、王国南部における暴竜討伐で際立った戦果を上げた、当時は特級ランク冒険者でな。

 それで当代陛下に気に入られて叙爵を受けた家だ。

 しかも奥方は時の第六王女殿下が、陛下の肝いりで降嫁されている。聞いた事は無いか?」

「すいません、知りませんでした。何分、我が領地は王国中央から遠いもので……。しかしそうすると、彼は王族の血を?」


 おいおい、冗談じゃない話がでて来たぞ。予想以上に面倒な一件じゃないか?

 ん? だが王族が降嫁したにしては爵位が低すぎるような……。それに降嫁だと、継承権は時点で返上されているから、やっぱり大丈夫か?


「そうなる。その為に最初は子爵位を与えようという話も出たのだが、他の多くの貴族からかなりの反発がでてな。流石に王家もそれを無視出来なかった結果として、男爵位に落ち着いたそうだ。」


 ああ、なる。門閥貴族が尤も騒いだんだろうなと容易に想像できるわ。

 だが元王女殿下が母親なら、ますます彼があんな思想に育った理由が訳分からんのだが。


「というのも、その父親の方が大分破天荒な方でな。身分を鼻で笑い飛ばし、無礼討ちや暗殺者を送り込んだ相手を物理的に叩き潰し、一時期は反逆罪とまで手配されながらも、その類い稀な武力で悉くを跳ね返し、門閥貴族を震え上がらせた化け物だ。」

「は?」

「何をしても、どうやっても殺せない彼に、とうとう貴族連中も匙を投げ、それを面白がった陛下によって経緯を調査された結果、彼の側に非は無しと免罪されたという逸話持ちだ。」


 何そのチート野郎。レベル幾つだよ。


「そして母上である王女殿下も、性格的にかなりその、奇特なお方だったが故に、夫となった男爵と相性が良かったらしくてな。そんな二人に育てられたエリクオルは、成るべくしてああなったと言う訳だ。」


 オイ王家、そんな相手に首輪つけるなら、せめて常識的な王族嫁に出せよ、と不敬ながらも俺が考えてしまったのは仕方無い事だと思う。

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