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検証しようぜ、あ、大当たり








ー魔術師視点からお送りしますー



「俺たちは今、【ダンジョン道の駅ー青薔薇のカンパチ迷宮支店ー】にいる。」


「そうだな。」


「しかもコンビニのバックヤードにいるな。」


ダンジョン道の駅は、どの支店もかならずコンビニが併設されているのだ!

落ち着いた色味のレンガと木造の建物で、のどかな景観を損なわない。


黒く塗られた柱や窓枠、黒いドアに嵌った飴色のガラスが

異世界に馴染む風情を醸していて、コンビニとは思えないけどコンビニ。


魔術師の俺、カルチャーショック。

いや、遊び人の経営手腕ってやつがチートくさい。


「アンデッドの人が発注書書いたり、到着した商品を手書きで検品をしたりして

忙しそう。なんか居たたまれないのだが。…パソコン作ってあげないのか?」


「いやいや、賢者、流石にネットワークは業者さんに繋がらないから、

扱ってる品数も然程多くないし

POSレジが必要なほど混むこともないからなあ…」


「言われてみれば。しかし手書きの値札と電力使わない式のタイプライターみたいな

レジ…コンビニなのにレトロ感すごいな…。


言うなれば大正時代の雑貨屋とカフェを足した感じ?

店内の雰囲気もなんかオシャレだ。照明もアンティーク調なランプだし。」



「店内見たけど、冷たい飲み物全部瓶だ!面白いな。帰り買い物していいか?

前来た時は銭湯とカプセルホテルしか利用しなかったんよ。


こんな異界でコンビニなんて、絶対転生者絡みでトラブル起きそうだったからさー」


「おう、オーナーとしては、じゃんじゃんご利用ください!って感じだ。

ちなみに空き瓶は返却すると10円貰えるぞ。」


「マジで!なにそのシステム!」


「騒がしくすんなや、働いてる人(?)に迷惑だろ。」


『オーナーと、そのご友人様方、私め達の事はお気になさらず、

ご内見なさって下さい。』


やたらイケボのアンデッドさんだ…どこ需要だよ…

しかもコンビニの制服がコンビニっぽくない…。


白い詰襟シャツに黒いベストとスラックス、エプロン、黒い革靴…

カフェの店員さんみたいだ。


「わるいね、店長、俺達ボス部屋行くから、ボス部屋に他の人が入ってこない様に

立ち入り禁止の札掛けといてもらっていい?」


このパリッとしたイケボの雰囲気あるアンデッドが店長かよ!?


『かしこまりました、ご武運を…!』


「いや、攻略に来たわけじゃないの、罠とネタギミックのブレーカー落として!」


『そうでしたか、てっきり初のダンジョン攻略のサクラでもなさるのかと、よいしょ』


パチンっと、アンデッド店長が壁側にあるブレーカーを操作する。


「ありがと、じゃ、いってきまーす」


『はい、いってらっしゃいませ。』


やたら丁寧な、骨っぽいが清潔感のある、アンデッド店長が腰を折り見送ってくれた。

執事にでもなれそうな上品さが漂うアンデッド…コンビニの店長…混沌が脳にクるぜ。


飲み物補充する用の狭い扉をパカリと開いてみれば…


石の階段が曲がりくねって弱々しい篝火がポツポツと灯ってはいるが暗闇の割合がほとんどだ、

湿った空気が、まるで生き物の吐息の様な生暖かさでゆるゆると肌を撫でてくる。


足を滑らせないよう慎重に階段を降りて行く、

俺達の靴の音だけがやけに大きく聞こえて、周囲の静寂を一層際立たせるかのよう…。


まるで巨大な生物に喰われてしまった様な錯覚を起こしそうだ…。



…………。


「なんでっ!オシャレなコンビニのバックヤードから!いきなり禍々しい

本格的なダンジョンっぽく!なってるんだよ!遊び人んんんんん?????」


「な、何怒ってるんだよ魔術師、【ダンジョン道の駅】なんだから

本格的とか、当たり前だろ…、つか、デカイ声、エコーしてる…くっ」


遊び人の野郎が腹をおさえて笑っている!


「なんでもダンジョン言っとけば許されると思うなよ!?

エコーじゃねえ!凄んでるんだよっ!!」


「おいおい今時壁ドンかよ、お前、身長も肩幅も足りてねえからコアラみたいになってるぞ、

ホラ、階段2段くらい昇っていいから。」


「うるせえー!!ホームグラウンドだから!ボケ倒し放題か!!」


「聖◯伝説3にこういう場所あったよな、なんかワクワクするな」


「てめえもか!賢者!」


「へっへっへっ、バレたか、短縮用の横穴もあるぜ」


「あれか!光の精霊の時の!使いたい!」


「丁度この先だ、吊り橋は落ちた設定にしてあるから、

空中を駆け抜けようぜ、頼んだ魔術師!」


「…もう、好きにしろよ、ぐすっ」


「ああ、こんなとこでしゃがむと汚れるぞ」


「疲れたのか?ホレ、飴ちゃんやるから」


「…」



ー魔術師が思考を放棄したので普段通り遊び人視点からお送りしますー




飴を口の中で転がしながらも魔術師は動こうとしないので

俺がおんぶして連れて行く。

賢者が胡乱な目で魔術師を見ている。


「ここだ、魔術師、浮遊させてくれ」


「…あうあー…『カミガゥダフルウチ(浮遊歩行)』…うーぁ」


俺達の体がふわりと浮く。


空中を歩きながら対岸の横穴へたどり着いた。

ボスのいる広間の手前まで来られて、すごく楽だった。

やっぱり吊り橋元に戻そうかな。魔術師いないと渡れないとか不便過ぎる。

まあ、俺だけだったらダンジョンマスター権限で勝手に通路が出てくるのだけど。


「…魔術師まで幼児退行してしまうとは…」


賢者が何か言っているが気にしないで進もう。


「さーて、今日のダンジョンボスはなにがでるかな〜♪たららら↑ったったらら↑らん♪」


「でっかいサイコロおちてくるの?」


「鋭いな、流石賢者…!まあ、ネタギミックのスイッチ切ってあるから今回はないよ、

安心して扉を開けておくれ。」


「え、じゃあ、ガラスの壁に潰されるのもないの?ブサイク写真楽しみにしてたのに。」


「え、楽しみにしてたの?じゃあ神官とかいる時またこようぜ!」


「約束だぞ、じゃ、開けまーす。」


重厚な扉をゆっくり開けると、それっぽいSEが流れる。


真っ暗な室内に入ると扉が閉じる。壁の松明に青い炎が勝手に点いて行く演出が繰り広げられ

天井から鎖の擦れる音が響き拷問器具の様なシャンデリアにも炎が点いて、

周囲がかなり明るくなる。


部屋の中の紫色の靄が少しずつ晴れて行き…


「…なんだアレ…」


「やったな賢者!今回のボスはかなりレア、人面トレントさん!大当りー!!ヒュー!」






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