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三つ巴の戦い⑧~死闘:中編~

 少し短いです。

 ジェドは背後から音も無くエハンに向かって斬りかかる。戦いにおいて声を出す目的は自らの恐怖心を抑えるため、そして相手を威嚇するためである。


 普通の戦場であれば声を上げるという選択もあるのだが、この場においては悪手でしか無い。なぜなら自分がこれから攻撃しますよとエハンに伝えることになるからだ。せっかく魔狼が注意を引きつけてくれているのに、わざわざその有利さを失う必要はどこにも無い。


 しかも人間が威嚇の雄叫びを上げたところで魔族であるエハンに効果があるとは思えないし、エハンと戦う事に別に恐怖を感じていないジェドにしてみれば声をあげるという選択肢は悪手でしか無かったのだ。


 ジェドの音のない斬撃をエハンは伸ばした爪に魔力で強化し受け止める。その顔には驚きの表情が浮かんでいる。


 エハンがジェドの斬撃を防ぐことが出来たのは実は単なる偶然である。背後の魔狼の首を刎ね飛ばした際に、ジェドの斬撃を視界に入ったのだ。そこで何とか防ぐことが出来たと言うわけだった。


 もし、背後の魔狼を殺していなかったら、そのままジェドの斬撃はエハンの背中をザックリと斬り裂いた事だろう。


 一瞬の自失のあと、エハンは怒りの形相を浮かべると、指の一本をジェドに向ける。その瞬間に魔力で強化された爪が高速で伸びる。かろうじて躱したが、頬を掠めジェドの頬から血がしたたり落ちる。


「ちっ…」


 ジェドの口から舌打ちが発せられる。チラリと視線を動かしシアを見る。その視線を見たエハンはすぐさま横に跳び、魔狼の1人の喉を手刀で貫く。


 喉を貫かれた男は足下から崩れ落ち、ひゅーひゅーと空気を漏らしながら倒れ込んでいるがすぐにその空気が漏れる音も聞こえなくなる。


「ひるむな行くぞ!!」


 ジェドは魔狼達に声をかけるとエハンに突っ込む。魔狼達はジェドの命令に従う人形のようになっている。もはや、ジェド達にこの魔族を斃してもらわなければ自分達の未来はないと思い込んでいるのだ。


 そこにヴェインとアグルスも突っ込んでくる。2人の参戦が遅れたのはシアが注意を促した事によりエハンの戦い方を見るためであった。


 ヴェインとアグルスはエハンに向かって斬撃を繰り出す。まずはアグルスが大剣を横に払う。アグルスは大剣に魔力を流し込んでおり大幅に強化されている事は明らかだった。エハンはその斬撃を後ろに跳んで躱し、そこに間髪入れずにヴェインが飛び込んだ。


 ヴェインもアグルスも一切、エハンの指の動きから意識を逸らすようなことはしない。少しでも意識を逸らせば命取りになる事は明らかだったからだ。もちろん、離れた所にいるシアもシェイラも同様だ。伸びる爪の射程がどれ程かわからない以上、ここで指先から意識を逸らす等と言う事は自殺行為でしかないのだ。


 だが、魔狼はそうではない。エハンという強大な敵に立ち向かうことは精神を想像以上にすり減らす事になるのだ。エハンはその意識を逸らした者から容赦なく伸ばした爪で貫いていく。


 戦闘開始時には魔狼の数は40人前後であったが、すでに10名程になっている。




「シェイラさん」


 シアがシェイラを呼ぶ。その際も視線をエハンから外すような事はしない。


「シアさん、何?」


 シェイラも声をかけられたシアを見ること無くエハンから視線を逸らすような事はしない。


「もう少しだから、準備して」

「え?」


 シアの言葉にシェイラは訝しがる。準備と言われても何を準備すれば良いというのだろうか。


「もう少ししたら、あの魔族の動きは止まるから、魔術を放つ準備をしてほしいの」

「え?」

「私達でトドメを刺すのよ」


 シアの言葉にシェイラは頷くと詠唱を始め、その時を待つ事にする。シェイラの見たところ、シアとジェドの2人は実力もすばらしいが、決して無策で挑むような事をしない事はわかっていた。


 恐らくジェドとシアがいれば、魔狼に対して力だけで退けることが出来ていたはずである。だが、2人はそれをしなかった。シアが『魔族の動きが止まる』と言った以上、自分達がしらない何かの罠を仕掛けた事がわかったのだ。


 ならばこの動きに乗るのがここは正解だとシェイラは察したのだ。


 そして、それが正解だと言う事はすぐに証明されたのだ。



 

 本来、1回にまとめるべき長さですが、ご了承ください。

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この作品の本家になります。 無双モノです。 墓守は意外とやることが多い
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